2017年5月

福利厚生充実のために活用を検討したい「中小企業勤労者福祉サービスセンター」
 ◆「福利厚生の充実」が与える好影響

昨今の人材難への対応策の1つとして、社員のモチベーションや満足度を向上させて会社への定着を図ったり、採用の際のアピールポイントとしたりすることを狙いとして、福利厚生の充実を行う企業が増えています。ユニークな福利厚生メニューを取り入れて社員が働きやすい環境を整備し、人材確保に成功している企業も数多くあります。人材不足に悩む中小企業こそ、これからは福利厚生の充実を検討する必要があるといえるかもしれません。とはいえ、中小企業が福利厚生を充実させるのには、コスト面での限界もあります。こうした場合に活用を検討したいのが、「中小企業勤労者福祉サービスセンター」です。

◆どのような団体なのか?

この「中小企業勤労者福祉サービスセンター」は、中小企業勤労者が生涯にわたり豊かで充実した生活を送ることができるよう、中小企業が単独では実施することが難しい総合的な福祉事業を実施している団体です。
(1)在職中の生活の安定事業(共済給付事業、生活資金融資斡旋等)、(2)健康の維持増進事業(人間ドック等の受診斡旋・費用援助、健康管理に係る講演会・相談会の開催等)、(3)老後生活の安定事業(中退制度の普及、生涯生活設計講座の開催等)、(4)自己啓発・余暇活動事業(自己啓発の援助、情報の提供、余暇情報の提供、余暇施設の利用斡旋等)、(5)財産形成事業(財形制度の普及等)などが行われており、加入することで提供されるサービスは多岐にわたります。

◆安い経費負担で福利厚生の充実が可能

事業主にとっては、加入により、自社単独で実施するよりも安い経費負担で従業員の福利厚生を充実させることができるというメリットがあります。さらに、会社単位で加入した場合、会社が負担した入会金や会費は、経費として計上可能です。福利厚生の充実のため、活用を検討してみてはいかがでしょうか。

中小企業もトライしたい!「健康経営優良法人認定制度」
◆注目が集まる「健康経営」

いま、「健康経営」が注目を集めています。健康経営とは、従業員の健康管理を「コスト」ではなく「投資」として捉え、積極的に従業員の健康管理・増進に取り組んでいくというもので、従業員の活力向上や生産性アップ、企業のブランドイメージの向上などの効果が期待されています(「健康経営」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です)。国も積極的に健康経営を推進しており、経済産業省が東京証券取引所と共同で実施する「健康経営銘柄」や協会けんぽ(東京支部)の健康企業宣言、厚生労働省の安全衛生優良企業公表制度などがあります。今回は、「健康経営優良法人認定制度」についてご紹介いたします。

◆「健康経営優良法人認定制度」とは?

この「健康経営優良法人認定制度」とは、経済産業省が主導となり、優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度です。健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受けることができる環境を整備することを目的としています。大企業だけでなく、中小企業も認定の対象となっており、今年2月21日に、2017年度の認定法人として大規模法人部門235法人・中小規模法人部門95法人が認定されました。認定を受けた法人には、金融市場(低金利融資や従業員向け住宅ローンの優遇)や労働市場における優先的マッチング、入札加点等におけるインセンティブが付与されるよう、地域に応じた支援環境を整備していくとしています。

◆認定の基準はどうなっているのか?

中小企業に対する認定基準は、健康経営銘柄の評価の視点をベースに、全国各地の類似制度を参考に設定されており、以下の項目などについて、14の評価項目が定められています。
(1)経営理念(経営者の自覚)…健康宣言の社内外への発信及び経営者自身の検診受診
(2)組織体制…健康づくり担当者の設置
(3)制度・施策実行…従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討(定期検診受診率、ストレスチェックの実施など)、健康経営の実践に向けた土台づくりとワークエンゲイジメント(適切な働き方実現に向けた取組みなど)、従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策(メンタルヘルス対策など)
(4)評価・改善(保険者との連携)
(5)法令遵守・リスクマネジメント

年金・健康保険手続におけるマイナンバー利用に関する最近の動き
◆今年1月よりマイナンバー利用開始

日本年金機構と協会けんぽ、健康保険組合では、平成29年1月からマイナンバーを利用しており、各種申請書にもマイナンバー記入欄が設けられています。その他、年金事務所で年金相談・各種照会を行う際には、基礎年金番号がわからなくてもマイナンバーを提示すれば対応してもらえる等、変更点があります。

◆申請書へのマイナンバー記入の要否

年金関係の届書は、1月以降、順次マイナンバーの記入が求められています。具体的には、1月から「年金受給権者現況届」に、4月から「年金請求書等」「扶養親族等申告書」に記入することとなっています。ただし、日本年金機構に提出する「被保険者資格取得届」には基礎年金番号を記入し、マイナンバーは記入しないこととされているのでご注意ください。健康保険では、「任意継続被保険者被扶養者(異動)届」への被扶養者のマイナンバー記入以外は、任意とされています。

◆「情報連携」は10月から本格運用開始?

7月からは、マイナンバー制度を使って国や自治体がデータをやり取りする情報連携の本格運用開始が予定されていましたが、政府は3月17日に3カ月の延期を発表しました。情報連携が開始されれば、行政サイドでの関係各機関への照会等により申請者に関する情報を確認することで申請者自身は各種証明書等を提出しなくてもよくなるため、残念なニュースです。

◆健保組合はマイナンバー利用システムに反発

さらに、健康保険では、マイナンバーを利用して給付申請者の所得や扶養家族、他の給付の支給状況について協会けんぽや健保組合が確認できるシステムの構築を進めています。このシステムの利用料をめぐって「高額過ぎる」との反発が保険者からあり、現在、厚生労働省は利用料の大幅引下げ、また、情報参照を含む全面延期を検討しています。協会けんぽではこのシステムの利用により、7月から申請者がマイナンバーを申し出れば給付申請時の非課税証明書等の添付を省略可能とする予定でしたが、影響を受けることとなりそうです。

5月30日施行!「改正個人情報保護法」への対応状況について
◆3割強の事業者では対応が間に合わない?

5月30日から全面施行される改正個人情報保護法によって、法がすべての事業者に適用されることになり、企業も対応に追われているところです。一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が日本商工会議所との共催で行った「中小企業向け改正個人情報保護法実務対応セミナー」(東京:2017年1月17日、1月27日の2回開催、大阪:2016年12月9日の1回開催)において、参加者に対して実施した改正個人情報保護法への対応状況についてのアンケートの結果によると(全セミナー参加者642名中、回答者544名)、改正個人情報保護法への対応について、現段階で「対応済みである」との事業者は全体の7.9%との1割に満たず、「2017年の春頃までには対応する予定である(できると考えている)」と回答した割合は59.6%、「いつまでに対応が完了できるかわからない」との割合は28.7%となったそうです。昨年末から今年頭にかけての回答状況ですが、対応の進んでいない企業が少なくない状況が読み取れます。

◆改正法への対応として従業員教育を重視

また、改正個人情報保護法遵守のために何を行ったらよいかとの質問については、従業員教育(従業員の意識向上)(86.4%)、セキュリティ対策構築(情報資産に対するリスク洗出し、リスク対策、サイバー攻撃対応等)(73.5%)、個人情報保護方針や規程類の作成・見直し(71.5%)の順となっています。同調査では、個人情報保護法の改正について「知っている」との回答は9割以上となりましたが、「改正の内容まで知っている」との回答は4割だったそうです。内容までは知らない人という人がまだまだ多い中、まずは従業員教育の徹底は第一課題となりそうです。

◆施行まで2カ月を切る!

5月30日に迫った改正法の全面施行まであと2カ月を切っています。まだ対応が済んでいない事業者も多いかと思いますが、マイナンバー制度の開始から始まり、近時、企業のセキュリティ対策が強く求められているところです。重大な漏えい事故が起これば企業の経営にも大きく影響しますので、早急な対策が望まれます。