2017年6月

気がゆるみがちなこの時期は特に要注意!職場の「転倒災害」防止対策
◆「転倒災害」への対策は職場の重要課題

「すべる」「つまずく」「踏み外す」…職場の転倒災害が、いま大きな問題となっています。「ころぶ」というと、たいしたことはないものと軽視されがちですが、そんなことはありません。休業4日以上の転倒災害は、例年、全労働災害の約20%を占めています。特に高齢者は、加齢により身体強度や運動機能が低下するため転倒しやすくなりますが、重症化することも多く、休業日数が長くなる傾向も見られますので、労働力人口の一層の高齢化が見込まれる中、事業場における転倒災害防止対策の徹底が求められています。

◆転倒災害防止のための対策

転倒災害は、どのような職場でも発生する可能性がありますが、その危険性は、問題意識を持って原因を見つけ、対策をとることで減らすことができます。災害が多発している場所や環境、行動に着目して原因を洗い出し、順次、対策を講じていきましょう。
【すべらないための対策例】
・水や油、粉類などをこぼした場合はすぐに掃除する。
・すべりにくさを考えて作業靴を選ぶ。
【つまずかないための対策例】
・通路、階段、出入口に物を放置しない。
・段差のある箇所には注意を促す標識をつける。
・足元が見えにくい箇所は十分な明るさを確保する。
【「踏み外さない」ための対策例】
・足元が見えないほど荷物を持ち過ぎない(大きな荷物は台車で運ぶ)。

◆不注意からの災害発生を防ぐために

特に今の時期は、気もゆるみがちで、ちょっとした不注意での転倒事故も発生しやすくなります。事業場内の安全について改めて意識付けを行うとともに、必要な対策について安全委員会等で検討するなど、リスクの回避に努めましょう。

高齢従業員ドライバーがいる会社は要注意!知っておきたい「改正道路交通法」
◆3月から施行

今年3月より改正道路交通法が施行され、高齢運転者の交通安全対策が強化されました。加齢による認知機能の低下に着目した「臨時認知機能検査制度」や「臨時高齢者講習制度」の新設、その他制度の見直し等が行われています。これまで以上に免許の取消しや停止につながる可能性が大きくなる改正と言え、業務で運転をする高齢従業員や通勤で車を利用している高齢従業員がいる場合には、会社としても押さえておきたい内容であると思われます。

◆高齢運転者(70歳以上)の運転免許更新手続の改正

免許更新期間が満了する日における年齢が75歳未満の方は、高齢者講習の合理化が図られ、これまでの3時間の講習が2時間となりました。一方、75歳以上の方に行われる認知機能検査の結果に基づいて、「認知機能が低下しているおそれがある方」「認知症のおそれがある方」は、より高度化または合理化が図られた講習が実施されることになりました(改正前:運転適性検査30分+講義30分+実車指導60分=計2時間→改正後:運転適性検査30分+双方向型講義30分+実車指導60分+個別指導60分=計3時間)。

◆各種制度の新設

75歳以上の運転免許を持っている方が「認知機能が低下した場合に行われやすい一定の違反行為」をした場合、臨時に認知機能検査を受けることとなりました(免許更新時における認知機能検査と同じ内容)。信号無視や横断歩道等における横断歩行者等妨害、徐行場所違反など18の違反行為が対象となります。臨時認知機能検査は原則、配達証明による受講の通知を受けた日の翌日から1カ月以内に受検しなければなりません。検査の結果、「認知機能が低下しているおそれがある」と判定されると、臨時高齢者講習(実車指導60分+個別指導60分)を受けることとなります。臨時認知症機能検査や臨時高齢者講習を受けないと、運転免許の取消しまたは停止となってしまいます。

◆臨時適正検査制度の見直し

免許更新時および臨時の認知機能検査等で、「認知症のおそれがある」と判定された方は、臨時の適性検査を受けるか、認知症に関し専門的な知識を有する医師等の診断書の提出が必要となります。その結果、認知症であると診断されれば免許取消し・免許停止となります。

実態調査にみる「職場のパワーハラスメント」の現状と予防・解決策
◆調査の概要

平成24年3月に厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」から「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」が公表されて5年が経過しました。同省は、この間におけるパワーハラスメント(以下、「パワハラ」)の発生状況や企業の取組状況などを把握し、今後の施策に反映させることを目的として実態調査を実施しました。全国の企業と従業員を対象に、平成28年7月から10月にかけて実施した調査結果に基づき、職場のパワハラの現状と予防策、解決策等についてまとめてみました。

◆パワハラの発生状況

従業員向けの相談窓口において従業員からの相談で最も多いテーマは「パワハラ」で、32.4%という結果が出ています。過去3年間に1件以上「パワハラに該当する相談を受けた」と回答した企業は36.3%。一方で、過去3年間に「パワハラを受けたことがある」と回答した従業員は32.5%と、調査を始めた平成24年度から7.2%増えています。

◆予防・解決に向けた取組状況

パワハラの予防・解決に向けた取組みを実施している企業は52.2%で、企業規模が小さくなると実施比率は相対的に低くなる傾向にありますが、平成24年度と比較するとすべての従業員規模の企業で比率が高くなっています。パワハラに限らず、従業員向けの相談窓口を設置している企業は73.4%あり、企業規模が小さくなると設置比率は相対的に低くなるものの、平成24年度と比較するとすべての従業員規模の企業で比率が高くなっています。

◆予防・解決に向けた取組みの効果

企業がパワハラの予防・解決に向けた取組みを積極的に実施すると、従業員にとってはパワハラに関する相談がしやすくなるとともに、企業にとってもパワハラの実態が把握しやすくなります。また、パワハラの予防・解決に向けた取組みを行っている企業で働く従業員は、パワハラを受けたと感じる比率やパワハラにより心身への影響があったとする比率が相対的に低くなる傾向にあり、この取組みにより、職場環境が変わる、コミュニケーションが活性化するほか、「休職者・離職者の減少」や「メンタル不調者の減少」などの付随効果も見られるようです。パワハラの予防・解決のための効果が高い取組みとして、「相談窓口の設置」や「従業員向けの研修の実施」を挙げている企業の比率が高く、企業がパワハラの予防・解決に向けた取組みを複数実施することが、従業員にとって職場環境の改善などの効果を感じやすいとの結果が出ています。

残業規制の抜け穴!? 自主的な「休日出勤」にご用心
◆依然注目される「時間外労働の上限規制」

政府が推進している働き方改革の一環として、「時間外労働の上限規制」が大きな注目を集めています。現行法においては、「特別条項付き三六協定」を労使間で締結することにより、繁忙期に上限の無い残業をさせることも事実上は可能です。これが今後の法改正で、「たとえ労使協定を締結していても、労働時間は年間で720時間を上回ることができない」こととなる見通しです。

◆絶対に避けたい「長時間労働による摘発」

違反企業には当然、罰則が課されますし、公共事業に入札できなくなるといった影響もあります(厚生労働省は、違法な長時間労働が認められた企業名を各自治体などに向け積極的に公表しています)。また、ひとたび労基署の調査などを受け、“ブラック企業”としてネット等を通じ拡散するような事態になれば採用活動などにも大きく響く時代ですので、企業としては何としても避けたいところです。

◆残業規制の抜け穴である「休日出勤」

一方で、時間外労働の上限720時間には「抜け穴」が存在する、とも指摘されています。その1つとして、「休日に働く時間」はこの時間が含まれていないことがあります。詳細はまだ決まっていませんが、休日労働の抑制は企業の努力義務となりそうです。今後は、就業時間内に業務を終えることができなかった従業員が、自主的に休日出勤する、ということも増えるかもしれません。

◆自主的な休日出勤をさせない取組みを

会社が命じていない休日出勤により、様々な問題が起こり得ます。休日の時間外労働には3割5分の割増賃金が発生しますし、この従業員が法律上定められた休日(1週間に1日、もしくは4週間を通じ4日以上)を取らないようなことがあれば、これも法律違反です。労災が発生するリスクもあります。トラブル発生時に、いくら企業側が「従業員が勝手に休日出勤した」と主張したところで、会社が休日出勤を黙認していたと労働基準監督署にみなされれば、処罰は免れません。このような従業員が増えないよう、今後企業は労務管理に一層気を付けねばなりませんが、それでもなお、上司の指揮命令を無視して休日出勤を繰り返すような従業員には、人事考課などで厳しく対応しましょう。