2017年7月

その不調、「夏うつ」かも!? 夏場を乗り切るために注意すべきこと
◆夏に発生するうつ病、「夏うつ」

「冬うつ」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。これは、日照不足により、体内で生成されるセロトニンの量が減ることで起こると言われる季節性のうつ病で、秋から冬にかけてうつ症状が出現するものです。確かに、どんよりと暗い日が多く日照時間も短い冬には、気分も暗くなりがち…なんとなく納得できますよね。しかし近年、季節性のうつ病には、夏場に発生する「夏うつ」も存在すると言われるようになってきました。

◆「夏バテ」と誤解されることも

夏うつは、5月から9月に発症することが多く、涼しくなるにつれて症状は改善されていきます。主な症状は、食欲低下や不眠などの不調です。夏バテと症状が似ているため本人も周囲も気づきにくいのですが、夏バテとは異なり、気分の落込みや不安感などの精神的不調を伴うことが特徴です。明確なストレスや理由がないにもかかわらず、気分が優れない状態が長引くのであれば、夏うつが疑われます。

◆事業所でできる「夏うつ対策」

夏うつの原因には、日光の浴び過ぎ、室温の設定、栄養の偏り、就寝前のパソコン等の作業などがあります。これらを踏まえ、事業所でできる対策をいくつか挙げてみます。
・日中の外出をなるべく避ける:日光によって疲労感が増す可能性があります。陽射しの強い時間帯の外出は、できるだけ避けたほうがよいでしょう。
・冷房も適宜利用する:女性の冷えやすさや節電などを理由に、冷房を利用しない事業所もありますが、夏うつは気温や湿度などの外的要因が体に与える影響から発症するものですので、無理に暑さを我慢することは禁物です。
・早めに専門病院の受診につなげる:本人は「夏バテが長引いている」くらいの認識かもしれません。少しでも調子がおかしいと思ったら、早めに専門病院を受診するよう勧めることが大切です。適切な処置を受けることは安心感につながり、早期回復にも結びつきます。

障害者の就職をめぐる最近の状況は?
◆障害者の職業紹介の状況

厚生労働省の発表によると、平成28年の障害者の職業紹介状況は、ハローワークを通じた障害者の就職件数が前年の90,191件から伸び、93,229件(前年比3.4%増)となったそうです。また、就職率も48.6%上昇しています。

◆就職件数は?

身体障害者の就職件数は26,940件で前年比3.8%の減少ですが、知的障害者は就職件数20,342件で同1.9%増、精神障害者の就職件数は41,367件で同7.7%増、その他の障害者については4,580件で同19.5%増となっています。

◆業界別、職業別の就職状況は?

業界別にみてみると、「医療・福祉」業界での就職件数が最も多く、全体の38%を占めています。そして、「製造業」(13.2%)、「卸売業・小売業」(12.4%)と続きます。前年比で見てみると、「公務・その他」が14%、「宿泊業、飲食サービス業」が7.9%増加しています。職業別では、「運搬・清掃・包装等の職業」の割合が34.9%と最も高く、「事務的職業」(20.1%)、「生産工程の職業」(13.3%)、「サービスの職業」(12.1%)と続いています。

◆地域別の就職状況は?

都道府県別に見てみると、就職件数が最も多かったのは大阪府の7,017件、以下、東京都6,494件、愛知県5,232件となっています。一方、就職率を見てみると、富山県の71.9%が最も高く、徳島県71.0%、島根県67.2%と続きますが、いずれも就職件数が少ない地域になります。逆に、就職件数の多い大阪府の就職率は45.9%で、東京都は32.4%、愛知県は46.6%と半数にも満たない結果になっています。

◆障害者の解雇数

障害者の解雇状況を見てみると、前年の1,448件から1,335件と減少しています。解雇の理由で多いのは「事業廃止」と「事象縮小」となっています。

◆今後の動向は?

来年の4月より、障害者の法定雇用率が引き上げられますので、今後の障害者雇用の動向が気になるところです。

「AI革命」で雇用はどう変わるのか
◆AIブーム席巻中

昨年頃から実用化され始めたAI(人工知能)技術が、ここにきて一大ブームとなっており、AIについての報道や出版物が日に日に増しています。ここでは、「AI」と「雇用」の関係について考えてみます。

◆労働者の半数が機械に仕事を奪われる?

AIと雇用について論じる際、必ず引用されるのが、マイケル・オズボーン准教授(オックスフォード大学)らが2013年に発表した、「今後10~15年の間に、米国の労働人口のうち47%が、AIやロボットに代替され得る」という研究結果です。関連する別の研究によれば、日本では、労働人口の49%が、AIやロボットによる代替可能性が高いそうです(リクルート機関誌『Works.137』特集「同僚は人工知能」、2016年)。労働者のおよそ半数が仕事を失ってしまう…そんな驚くべき未来が、そう遠くない将来に現実のものとなるというのです。そのとき、企業では何が起きるのでしょうか。

◆仕事が無くなっても配置転換で対応してきた日本企業

労働法の歴史に詳しい大内伸哉教授(神戸大学)は、次のように指摘しています(『AI時代の働き方と法』弘文堂、2017年)。
・1980年代のME(マイクロ・エレクトロニクス)革命や1990年代のIT革命の際にも、業務が一新され、従前の雇用が大量に失われた。その一方、MEやITに従事する新たな雇用も創出されたので、日本型終身雇用に守られた労働者は再配置(社内配転等)がなされ、大量の失業者が発生する結果にはならなかった。
・ただし、AI・ロボット技術による革命では、(1)技術の発達が早すぎる、(2)肝心の雇用がそれほど創出されない、という2つの理由により、再配置には困難が伴うだろう。

◆AI時代に備えた雇用を

労働法が現行の内容である限り、日本の企業はたとえAIによって自社の職務の多くが失われても、自社従業員の雇用を守るべく、少なくとも努力をしなければ、裁判所は労働者の整理解雇の妥当性を認めません(解雇回避努力義務)。もちろん、「何がなんでもAIの脅威から従業員の雇用を守らなければならない」ということではありませんが、少なくとも今後はAIによって自社の雇用も大きく変わることでしょう。前述の『Works.137』は、企業の人事に向けて、「安心して共存するためのルールを、働く人とともにつくれ」「新しいことを常に学ぶ態度を身に付けさせよ」「AIによって人事自体の生産性を向上せよ」など、14の提案をしています。AIブームを機に、自社の中長期的な雇用について考えてみてはいかがでしょうか。

今年度から新設された「人事評価改善等助成金」
◆働き方改革の施策の1つ

今年度(平成29年4月1日)から新設された雇用関係助成金の1つに「人事評価改善等助成金」があります。本助成金は、生産性向上に資する人事評価制度と賃金制度を整備することを通じて、生産性の向上、賃金アップおよび離職率の低下を図る事業主に対して助成されるものであり、人材不足を解消することを目的として創設されました。今話題の“働き方改革”の施策の1つだと言えます。

◆支給額、支給要件は?

支給額が最大130万円(制度整備助成:50万円+目標達成助成:80万円)と大きいこともあり、申請件数も増えているようです。支給要件は以下の通りとなっています。
【制度整備助成】
(1)人事評価制度等整備計画を作成し、労働局長の認定を受けること
(2)認定された人事評価制度等整備計画に基づき、整備し実施すること
【目標達成助成】
(1)「制度整備助成」の措置を実施すること
(2)「生産性要件」を満たしていること
(3)離職率を目標値以上に低下させること
(4)毎月決まって支払われる賃金を2%以上増加させること
なお、(2)の「生産性要件」を満たすには、支給申請等を行う直近の会計年度における生産性がその3年前に比べて6%以上伸びていることが必要であり、計算にあたっては、厚生労働省のホームページでダウンロード可能な「生産性要件算定シート」を活用することでできます。

◆手続きの流れ

本助成金の大まかな手続きの流れは、以下の通りです。
(A)「人事評価制度等整備計画」の作成・提出…提出期間内に本社の所在地を管轄する都道府県労働局へ提出
(B)認定を受けた「人事評価制度等整備計画」に基づく人事評価制度等の整備…労働協約または就業規則に明文化することが必要
(C)人事評価制度等の実施…すべての正規労働者に実施することが必要
(D)制度整備助成の支給申請(50万円支給)
(E)目標達成助成の支給申請(80万円支給)