2019年1月

外国人実習生に関する監督指導と技能実習制度の見直し

 

◆外国人実習生に関する監督指導

入国管理法の改正に伴い、外国人技能実習制度等の見直しが行われます。日本の労働人口は、少子化や人口減少により、2030年までに最大で約900万人弱、2060年までには3,000万人弱も減少するといわれており、今回の入管法の見直しは、政府が労働力不足への対応としての在留資格見直しに大きく踏み出すことを意味しています。「技能実習」について、外国人実習生を受け入れる企業に対して行われた全国の労働局や労働基準監督署による監督指導の状況を、厚生労働省が公表しています。

 

◆監督対象事業場・違反事業場は年々増加

平成29年は、実習実施者(企業)に対して5,966件の監督指導が実施され、4,226件(70.8%)で労働基準関係法令違反が認められました。主な違反としては、

・労働時間(26.2%)                     ・安全基準(19.7%)

・割増賃金の支払(15.8%)           ・就業規則(9.2%)

・労働条件の明示(9.1%)

などとなっています。重大・悪質な労働基準関係法令違反により34件が送検されています。技能実習生の増加に伴って、監督・指導にも力が入れられ、その数も増加が予想されます。

 

◆違反の申告・通報もより活発に?

技能実習生から労働基準監督署などに対して労働基準関係法令違反の状況が申告されることもあります。技能実習生同士のつながりにより、賃金や割増賃金の不払いがある等の情報は広まりやすいと思われます。また、こうした申告は、労働基準監督署に対するものだけではなく、出入国管理機関(各地の入国管理局)に対しても行われ、それが労働局・監督署へ通報されて監督等につながるケースもあります。技能実習制度の違反等に対するペナルティとして、実習生の受入れの停止等が行われますので、企業活動に大きく影響します。

 

◆改正に伴う情報収集を

新しい制度が始まれば、それに伴って企業への監督等も厳しくなることが予想されます。また、労基法・安衛法関連だけでなく、技能実習制度自体に定められている報告や手続きについても、新制度の下で見直しが行われると思われます。外国人雇用・技能実習生の受入れなどを検討する企業は情報に注意しておきましょう。

【厚生労働省「外国人技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(平成29年)」】

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11202000-Roudoukijunkyoku-Kantokuka/besshi.pdf

「チームの雰囲気」が働く人の満足度やモチベーションにどう影響しているか?

 

ビジネスマンは、今の職場に満足しているのでしょうか。また、「チームの雰囲気」が働く人の満足度やモチベーションにどう影響しているのでしょうか。(株)日本能率協会総合研究所が行ったアンケート調査(第9回「ビジネスパーソン1000人調査」【理想のチーム編】、調査期間:2018年9月28日~2018年10月9日)からみていきます。

 

◆あなたは現在所属しているチームの雰囲気に満足していますか?

現在の職場のチームの雰囲気に「満足」(とても満足:10.9%、やや満足:43.6%)としている人は半数を超えました。ただ、20代、60代の約6割が満足している一方、50代、非正規職員では、過半数が満足していないという結果です。

満足している理由としては、「困ったときに助け合うから」(39.6%)、「自分なりに創意工夫で仕事を進めることができるから」(27.2%)、「互いに情報を共有したり学びあったりしているから」(22.2%)、「期待されている役割が明確であるから」(18.2%)が挙がっています。一方、満足していない理由としては、「フェアな評価がなされていない」(24.0%)、「困ったときにも互いに助け合うことがない」(21.8%)、「互いに本音を話せない」(21.3%)が挙がっています。

現在のチームに満足している人と満足していない人で比較すると、「職場のチームリーダーは、チームの雰囲気を良くすることができているか」について、満足していると回答する人は「できている」と6割が回答したのに対し、満足していない人は「できていない」との回答が5割を超えました。このように、チームの雰囲気に満足している人は、良好な人間関係を魅力と感じる傾向が強くあるようです。

 

◆上司から言われて嫌だと思う一言は?

「あなたが、上司から言われて嫌だと思う一言は何ですか」という質問について、1位に挙がったのは、「使えないな」(33.8%)。その他、2位に「そんなこともできないのか?」(32.6%)、3位に「余計なことをするな」(23.4%)となりました。次いで、「上が言っているんだから、やれ」(21.5%)、「やる気があるのか?」(16.5%)、「自分で考えろ」(11.5%)、「聞いてないぞ」(10.8%)となっています。

 

◆上司から言われてやる気がでる一言は?

一方、やる気がでる一言として挙がったのは、1位「ありがとう」(35.1%)、2位「よくやった」(23.9%)、3位「頑張ってるね」(19.8%)です。他には、「いいアイデアだ」(17.5%)、「おつかれさま」(17.4%)、「あなたにしかできない」(17.1%)、「期待しているよ」(16.0%)が続きました。上司による感謝とねぎらいの声かけが従業員のモチベーションアップにつながるようです。

【一般社団法人日本能率協会「第9回「ビジネスパーソン1000人調査」【理想のチーム編】」】

https://jma-news.com/wp-content/uploads/2018/11/845fa87cf4eec1440988e2087a54a9e1.pdf

 

平成30年「高年齢者の雇用状況」集計結果より

 

◆平成30年「高年齢者の雇用状況」

厚生労働省が平成30年「高齢者の雇用状況」(6月1日現在)を公表しました。「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)では65歳までの安定した雇用を確保するため、企業に「定年制の廃止」「定年の引上げ」「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じるよう義務づけており、毎年6月1日現在の高年齢者の雇用状況の報告を求めています。今回の集計結果は、この雇用状況を報告した従業員31人以上の企業15万6,989社の状況をまとめたものです。

 

◆定年の引上げによる措置を講じる企業が微増

調査によると、65歳まで雇用確保措置のある企業は全体で99.8%となっています。内訳としては、「定年制の廃止」が2.6%(変動なし)、「定年の引上げ」が18.1%(1.0ポイント増加)、「継続雇用制度の導入」が79.3%(1.0ポイント減少)となっており、定年制度よりも継続雇用制度により雇用確保措置を講じる企業の比率が圧倒的に高い状況が読み取れますが、わずかながら定年の引上げを講じる企業が増加している様子も読み取れます。また、65歳を定年とする企業は全体で16.1%(0.8ポイント増加)、中小企業で16.8%、大企業で9.4%となっています。

 

◆66歳以上働ける制度のある企業は約28%

66歳以上働ける制度のある企業は全体で27.6%(中小企業28.2%、大企業21.8%)に上っています。希望者全員が働ける制度に限ると10.6%になります(中小企業11.4%、大企業3.5%)。また、70歳以上働ける制度のある企業は全体で25.8%(中小企業26.5%、大企業20.1%)、定年制の廃止企業は2.6%(中小企業2.9%、大企業0.5%)となっており、人手不足が深刻な中小企業では特に、高齢者の雇用に関する意欲が高いことがうかがえます。

 

◆政府は70歳まで雇用継続へ法改正を検討

政府は11月26日に行われた未来投資会議で、雇用の継続を企業に求める年齢を現在の65歳から70歳へ引き上げるために高年齢者雇用安定法の改正を目指すとしています。雇用継続は定年延長や再雇用制度の導入だけでなく、別の企業で働き続けるといった他の選択肢を盛り込むことも検討するとしています。高年齢者の雇用に関する措置については、さらなる検討が必要でしょう。

【厚生労働省「平成30年「高年齢者の雇用状況」集計結果」】

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000182200_00002.html

 

厚生労働省が生活習慣病の予防策を強化

 

◆寿命は延びても不健康な期間は変わらず

厚生労働省が、生活習慣病の予防策を強化します。高齢者人口が増えるなか、健康に過ごせる寿命を延ばし、意欲ある高齢者が長く働けるようにするのが目的です。背景には、人手不足があります。

寿命は年々延びており、日常生活を制限なく送ることができる期間を指す健康寿命も延びていますが、健康でない状態で暮らす期間は、男女ともにほとんど変わっていません。このままだと高齢化で病気を抱える人が増えるため、これに対応する必要があります。

 

◆予防対策は「ジム利用料の医療費控除拡大」と「自治体の予防事業支援」

厚生労働省は、インセンティブを強化することにより予防対策を強化する方針です。その1つめは、生活習慣病の患者が医師の指導に沿ってジムなどで運動をすると医療費として費用を控除できる制度がありますが、その対象となるジムを増やすことです。2つめは、生活習慣病の予防事業に力を入れる自治体に渡る交付金を増やすことです。

 

◆ジムの利用料が医療費控除になる要件

ジムで運動した場合に医療費控除の対象になるためには、次の3つの要件があります。

① 特定健康診査(いわゆるメタボ健診)において、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病である、または同等の状態であると診断された場合や、医師の「運動療法処方箋」に基づいて行う運動療法として行う運動であること。

② 厚生労働省が指定した「指定運動療法施設」で運動療法に取り組むこと。

③ おおよそ週1回以上の頻度で8週間以上にわたって、施設での運動を行っていること。

②の「指定運動療法施設」であるジムや施設は全国で200カ所程度にとどまっています。対象施設の要件として、健康運動指導士の配置や生活指導のための設備の設置、医療機関と提携していることが求められるためです。今回の見直しでは、こうした基準を緩めるなど制度の使い勝手を検討し、対象となるジムを増やす方針です。患者に有効な運動プログラムを処方する医師に対する診療報酬を引き上げることも検討します。

 

◆自治体の予防事業への交付金にメリハリをつけて競争を促進

平成30年度から実施されている「保険者努力支援制度」は、国民健康保険の財政基盤立て直しを主とする医療保険制度改革法に盛り込まれ、医療費の抑制で成果を上げた自治体に予算を重点配分する制度です。今回の見直しでは、その交付金にいっそうメリハリを利かせる予定です。自治体が手がける特定健康診査の実施率や糖尿病の重症化予防の取組みを点数化し、点数によって大きな差がつくようにして、自治体に予防対策の競争を促進するのが目的です。