2019年2月

「毎月勤労統計」不適切調査で過少給付延べ1,973万人、567億円

 

◆昨年12月に発覚、2004年から

厚生労働省の「毎月勤労統計」の調査手法が誤っていたことが失業給付などの過小給付につながったとして、大きな問題になっています。

毎月勤労統計は、従業員の給与の変化などを把握する目的で実施されています。調査対象は、全国の従業員5人以上の事業所。5~499人の事業所は無作為に抽出し、500人以上の事業所はすべてで、合わせて約3万3,000事業所となります。

厚生労働省は、調査を都道府県を通じて実施していますが、15年前の2004年から、東京都内の従業員500人以上の事業所については3分の1程度しか調査していませんでした。その理由や調査した事業所の選び方は明らかにされていません。

問題が発覚したきっかけは、昨年12月、厚生労働省の担当職員が総務省の統計委員会の打合せで「東京以外の地域でも従業員500人以上の事業所について抽出調査を実施したい」と発言したことだとされています。これにより重大なルール違反だとの声が上がり、問題が表面化しました。

 

◆雇用保険や労災保険で過小給付

規模の大きな事業所は給付水準が高い傾向にあります。このため、多くの事業所を調査していなかったことで、統計の平均給与額が本来よりも低く算出されました。この統計結果が雇用保険や労災保険を給付する際の算定根拠になっていることから、給付水準が押し下げられてしまいました。担当職員らは不適切な調査と認識しながら、組織全体で情報を共有していませんでした。

過少給付の対象者は延べ1,973人で、総額は537.5億円に上ります。政府は、過少給付のあったすべての対象者に不足分の追加給付を行います。

厚生労働省によると、過少給付で最も多かったのは、失業などの雇用保険で、延べ約1,900万人に計約280億円。休業補償などの労災保険でも延べ約72万人に計約241.5億円となりました。ほかに、船員保険で約1万人に計約16億円の過少支給がありました。追加給付の1人当たりの平均額は、雇用保険で約1,400円で、労災保険の年金給付では約9万円に上ります。

国庫負担分の積み増しのため、政府は平成31年度予算案の閣議決定をやり直します。

根本厚生労働大臣は記者会見し、「極めて遺憾であり、国民の皆様にご迷惑をおかけしたことを心よりおわび申し上げる」と謝罪。国の統計制度を所管する石田真敏総務相は会見で「再発防止に向け、具体策を検討するよう事務方に指示した」と述べました。

 

インターンシップに参加する学生が増加しています!

 

内閣府から、平成30年度卒業・修了予定の大学生および大学院生を対象にした調査「学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査(平成30年度)」の結果が出されました。今回は、その中のインターンシップについて、取り上げます。

 

◆「インターンシップ」とは?

学生が夏休みなどを利用し、企業や官公庁、非営利団体などに行って一定期間就業体験し、実際にどのような仕事をしているのだろう、会社の雰囲気はどんな感じか、といった経験を積むことのできる制度です。

インターンシップについては、参加したことがある者の割合が年々増加している実態が明らかとなっています。下記、調査結果をご紹介します。

 

◆インターンシップ参加経験の有無

2019年度は7割以上がインターンシップに参加したことがあると回答(複数回参加50.7%、1回参加22.5%)しており、2015年度(複数回参加25.5%、1回参加25.6%)以降、増加していることがわかりました。

 

◆インターンシップ参加時期

インターンシップ参加の時期は、大学3年生・大学院1年生の「1月~3月」の参加割合が最も高く、次いで大学3年生・大学院1年生の「7月~9月」、大学3年生・大学院1年生の「10月~12月」の割合が高くなっていることがわかりました。大学1年生、2年生、4年生、大学院2年生の参加率にくらべ、圧倒的に高い状況でした。

インターンシップは1日から数カ月間に及ぶものまで様々で、内容も多様化しているようで、就業体験を伴わないものもあります。

 

◆1日間のインターンシップの参加状況

インターンシップに1回のみ参加したことがある場合で参加日数が「1日」であった割合は約5割に上っています(2015年度以降この回答割合は増加)。インターンシップに複数回参加したことがある場合で1日間のインターンシップに参加したことがある割合は9割以上でした(上記と同様に2015年度以降増加)。

インターンシップへのすべての参加回数のうち、1日間のインターンシップへの参加回数が占める割合を集計すると、約7割が1日間のインターンシップであったこともわかりました。

 

◆1日間のインターンシップの就業体験等との関係性

参加した1日間のインターンシップのなかで、就業体験等を伴っていなかったものの割合を集計すると、約4割が就業体験を伴わないものであったことがわかりました(2017年度と同程度)。

 

「過半数代表」に注意!~労働政策研究・研修機構の調査より

 

◆労使協定と過半数代表

労働組合の組織率は年々低下傾向にあるようですが、働き方改革法の成立・施行に伴い、労使協定の重要性が増す中、「過半数代表」については注意が必要です。36協定等の労使協定を締結する場合は、その都度、過半数組合か、過半数組合がない場合は過半数代表者との書面による協定が必要ですが、この度、「過半数労働組合および過半数代表者に関する調査」((独)労働政策研究・研修機構)の結果が公表されました。

◆「労働組合は1つ」が9割以上

この調査に回答した7,299事業所のうち、労働組合のある事業所(全体の12.6%)の93.8%は、組合が1つでした。2つ以上と回答したのは6.1%です。また、過半数組合があるのは65.5%となっています。

◆「過半数代表」の選出状況

調査によると、過去3年間に、「過半数代表者を選出したことがある」事業所は43.1%、「過半数代表者を選出したことがない」事業所は36.0%、「不明(選出したことがあるか分からない)」が10.1%であったとのことで、中には問題があるケースもありそうです。

「過半数代表(事業場における過半数労働組合または過半数代表者)」が「いる」のは全体の51.4%、「いない」が36.0%。事業所規模別にみると、「過半数代表」がいる割合は、「9人以下」35.7%、「10~29人」69.5%、「30~99人」85.5%、「100~299人」92.7%、「300~999人」94.3%などと、やはり規模が小さいと割合が低くなっています。

◆選出方法にも問題が…

過半数代表者を選出したことがある事業所における選出方法についての回答は、「投票や挙手」が30.9%となる一方、「信任」22.0%、「話し合い」17.9%、「親睦会の代表者等、特定の者が自動的になる」6.2%、「使用者(事業主や会社)が指名」21.4%などとなっており、問題のある事業所があるようです。過半数代表者は、労使協定の締結等を行う者を選出することなど、その目的を明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者である必要があります。

また、過半数代表者の職位について、「課長クラス」、「部長クラス」、「工場長、支店長クラス」、「非正社員」といった回答があり、こちらも問題があるようです。過半数代表者は、監督または管理の地位にある者でない必要があるからです。

適正な過半数代表者を選出していないことが労働基準監督署の調査などで判明すると、締結した労使協定等自体が無効なものとされてしまい、是正勧告や訴訟に大きな影響があります。今後、労働基準監督署によるチェックがさらに厳しくなることは確実と思われますので、再確認しておく必要があるでしょう。

 

【(独)労働政策研究・研修機構「過半数労働組合および過半数代表者に関する調査」】

https://www.jil.go.jp/institute/research/2018/186.html

 

注目裁判例から考える皆勤手当

 

◆ハマキョウレックス事件の差戻審判決

昨年6月は、正規雇用と非正規雇用との待遇格差に関する大きな最高裁判決(長澤運輸事件とハマキョウレックス事件)があり、たいへん注目を集めました。このうちハマキョウレックス事件は、被上告人が皆勤手当の支給要件を満たしているか等について審理を尽くさせる目的で差戻しとなっていましたが、この差戻後の大阪高裁判決が12月21日にあり、契約社員に対する皆勤手当の不支給は不合理な差にあたるとして、皆勤手当相当額32万円(32カ月分)の支払いが命じられました。

 

◆皆勤手当とは

一般的に「皆勤手当」は、一定期間内においてまったく欠勤しなかった従業員に支給される手当をいいます。特に業務の多くがシフト制である会社や、欠員の交代要員の確保が難しい会社などにおいて、従業員の欠勤や遅刻の抑制、積極的な出勤の奨励を目的として導入される傾向にあります。時間外労働等の割増賃金を計算する際は、基準となる賃金に含まれます。

「精勤手当」「出勤手当」等という場合もあります。「精勤」は「熱心に勤務する」というような意味の言葉ですので、「1日も欠勤しない」というほど厳密なニュアンスはないものの、その趣旨は皆勤手当と同様です。

 

◆皆勤手当の導入割合

労働政策研究・研修機構「企業の諸手当等の人事処遇制度に関する調査」によると、精皆勤手当・出勤手当を制度化している企業の割合は、期間を定めずに雇われている常用労働者で22.3%、パートタイム労働者で8.6%となっています。正規雇用に比べ、非正規雇用への支給が少ないのが現状です。

 

◆「不合理な格差」はNG

上記差戻判決は、正社員と契約社員の間で職務内容(配送業務)が同じであり、出勤する従業員を確保する必要性も同じであるとして、皆勤手当について格差を認めませんでした。昨年末には、いわゆる「同一労働同一賃金ガイドライン」も公表されました。皆勤手当だけでなく、さまざまな待遇において不合理な格差は認められない時代となっていることに、留意が必要です。