2019年3月

不正統計調査対応のスケジュールが明らかに

 

◆現在受給中の人には3月から追加給付

不正統計問題で厚生労働省は2月4日、追加給付に向けた工程表を明らかにしました。

それによると、雇用、労災、船員の各保険で現在給付を受けている人は3月から、過去の受給者は6月から、順次追加給付を受けることとなっています。

制度によって支払開始時期はまちまちで、船員保険で6月、労災保険の休業補償で9月頃、労災年金で10月頃、雇用保険で11月頃とされています。

 

◆追加給付を受けるための手続方法は?

現在受給中の人は手続き不要ですが、過去の受給者には厚生労働省から通知が届きます。

しかしながら、現住所や氏名の変更を把握していない人には通知が届かないおそれがあり、述べ約2,000万人の対象者のうち1,000万人以上の対象者の住所が不明との報道もあるため、厚生労働省が来月開設する予定のホームページで対象かどうかを確認する人は、相当数に上りそうです。

会社にも、退職者から問合せ等が寄せられるかもしれません。

 

◆雇用調整助成金の過少給付問題はどうなる?

この問題では、被保険者への給付だけでなく、雇用調整助成金の過少支給も30万件、約30億円あることがわかっています。

2004年8月から2011年7月の間、または2014年8月以降に休業等して本助成金を受けた企業が追加給付の対象となりますが、被保険者への追加給付の支払いよりも後になるため、まだ手続方法や支払開始時期は明らかにされていません。

ただし、申請書類等が処分済みだったり廃業済みだったりして対象企業が把握できず、正しく通知が届かないおそれのあることが明らかになっていますので、注意が必要です。

 

◆覚えのある会社は書類を探してみましょう

追加給付は、既に廃業した企業も対象となります。手続きのための書類には、支給申請書類一式、支給決定通知書が今後役立つ可能性があるとされているものの、限定されていないので、当時のことがわかる書類を探してみるとよいでしょう。

自社に残っていない場合でも、手続きを代行した社会保険労務士が控えを保存している可能性がありますので、助成金を受給した覚えのある会社は確認してみましょう。

 

人事・労務に関するトップ・マネジメントの意識~経団連調査

 

◆調査の概要

日本経済団体連合会(経団連)は、会員企業および東京経営者協会の主要会員企業の労務担当役員等を対象に、春季労使交渉・協議や人事・労務に関するトップ・マネジメントの意識・意見などを調査しています。今回は2018年の調査結果のうち、注目すべき結果を取り上げてまとめます。

 

◆賃金関係

月例賃金について、労働組合等の要求とは関係なく、自社の施策として実施を決定した内容として、「定期昇給の実施、賃金体系の維持」(64.9%)と「初任給の引上げ」(46.5%)が目立ちます。また、賞与・一時金においても、前年度より増額した企業は54.6%あり、前年度の水準を維持した企業も32.0%と、増額・維持する企業が約87%にのぼっています。

 

◆労働生産性と人材育成の取組み

新たなビジネスやイノベーションの創出に向けた具体的な取組みとして、現在注力しているものに、「挑戦する社内風土醸成」(54.5%)、「組織や業務体制の見直し」(47.8%)、「中途採用など外部人材の積極的な採用と活躍推進」(42.4%)、「社員の知識・スキル向上のための教育・研修」(40.5%)があげられています。そして今後(5年程度)注力したい項目としては、「成長分野・重点分野への戦略的な人事異動」(47.4%)が最も多い結果になりました。

 

◆高齢社員の活躍推進

高齢社員を雇用する目的として最も多かったのが、「知識や経験等を活かした専門能力の発揮」(45.4%)で、「労働力・人材の確保」(28.9%)、「後進の指導・育成、技術・技能の伝承」(23.4%)と続きます。高齢社員のモチベーション維持・向上のために既に実施している施策としては、「人事評価制度」(56.4%)と「勤務時間・日数などの柔軟な勤務制度」(55.5%)が最も多く、検討している施策としては、「基本給水準の引上げ」(39.4%)と「定年年齢の引上げ」(37.4%)が上位を占めています。

 

◆副業・兼業の取扱い

副業・兼業の実態として、「現在認めている」企業が21.9%あるのに対し、「認めていない」企業は78.1%と圧倒的に多い結果となっています。後者のうち、今後も認めるつもりはない企業は43.5%にのぼります。副業・兼業を認めている理由として、「社員のモチベーション向上」(37.7%)、「自社では提供できない仕事経験による能力向上やアイデアの創出」(34.9%)があげられています。一方で、認めていない理由としては、「社員の総労働時間が把握できない」(64.6%)、「社員の健康確保が図れない」(54.5%)、「疲労の蓄積によって社員の業務効率が低下する」(44.9%)が多くあげられています。

 

「健康経営」――他社はどのような取組みを行っているのか?

 

東京商工会議所から「健康経営に関する実態調査 調査結果」が公表されています。健康経営については大分認知されてきているかと思いますが、他社はどういった取組みしているのか、その効果のほどはどうなのか、気になるところかと思います。今回はこの調査結果から、その実態を見てみます。

 

◆おさらい~健康経営とは?

従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法。企業理念に基づいて、従業員等への健康投資を行うことで、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に行政向上等につながると期待されています。

 

◆「健康経営」で実践している(実践の予定がある)具体的な取組み

1位:健診・検診(健康診断受診率100%、人間ドックの費用負担等)

2位:労働時間等の適正化(ノー残業デイの設置や有休取得の推奨等)

3位:禁煙・分煙(事業所内の完全禁煙や禁煙の推奨等)

4位:スポーツイベントの実施(ウォーキング大会等の社内イベントの実施、ラジオ体操の実施等)

5位:メンタルヘルス(産業医や保健師との面談実施、メンタルヘルスチェックの実施等)

6位:ストレスチェック(ストレスチェックの実施、そのフォローアップ等)

7位:職場環境改善(希望者へ椅子としてバランスボールを支給、事業所内に健康器具や血圧計の設置等)

8位:健康企業宣言(健康企業宣言への参加)

 

◆健康経営に取り組むにあたり、その効果として魅力に感じているもの

1位:従業員満足度の向上(従業員の定着率の向上など)

2位:従業員の健康意識の高まり

3位:生産性の向上(作業効率の向上)

4位:業績の向上

5位:社内のコミュニケーションの活性化

6位:労働時間の適正化、有休取得率増加

7位:企業ブランドイメージの向上(採用活動への影響など)

8位:メディア等への露出の増加

 

※調査の概要等については、下記をご覧ください。

https://www.tokyo-cci.or.jp/file.jsp?id=1013694

 

 

マネージメントと「文書」の大切さ

 

◆マネージメント力が問われる傾向

厚生労働省は、平成31年度からの新事業として、企業のマネージメント力を支える人材育成強化プロジェクト事業(仮称)を行うとしています。

具体的には、マネージメント力向上のためのモデルカリキュラムの開発を進め、企業の教育訓練の実施を総合的に支援するセミナー等を行うということです。昨今、セクハラ、パワハラ、情報セキュリティなどに端を発する不祥事が顕在化しており、労働・職場環境の悪化や、生産活動の停止等により、企業の生産性に悪影響を与える場合も生じている現状を踏まえて実施するものです。

 

◆文書の重要性

マネージメント力向上は、国としても取り組む企業の課題となっていますが、日頃の労務管理方法としては、やはり文書でのやりとりが重要でしょう。

テクノロジーが発達したとはいえ、人間同士の問題に対しては目に見える文書とともに注意・指導等を行うのが、一番「響く」と思われますし、文書を残しておけば、万が一裁判になった場合などにも会社側の主張を立証する証拠ともなります。

 

◆状況に合わせた見直しが必要

懲戒処分を通知する文書でも、けん責、減給、懲戒処分通知書、諭旨退職、管理不行届きだった管理者への処分など、それぞれ内容も書きぶりも違ってきます。

また、最近の裁判では、例えば問題社員の行動に対して注意・指導書を発しているだけではダメで、面談等による実際的な指導も必要と判断されるようになってきているようです(問題社員と接するのは嫌だという担当者の心情も理解できますが)。さらに、SNSの使用等に関する注意・警告のための文書など、新しい文書も必要となってきていますので、自社の文書や労務管理の実態が、世の中の状況に対応しているか見直してみる必要があるかもしれません。

 

◆わかりやすい文書を書くには

また、日常業務に使う文書(年末調整用の書類提出のお願いなど)も、わかりやすさを意識することで、従業員の会社・管理部門に対する印象は随分と変わってきます。役所や国が出した情報の丸写しは、間違いがないかもしれません。しかし、従業員が理解しにくいようでは、結局きちんと読まれずに、ミスや手戻りにつながってしまいます。伝わる文章を書くコツは、「小学生にもわかるように」書くことだそうです。意識して変えてみるとマネージメントの改善にもつながるでしょう。