2019年5月

平成31年度の地方労働行政運営方針の重点施策

 

「平成31年度地方労働行政運営方針」が厚生労働省で策定され、4月1日に公表されました。各都道府県労働局においては、この運営方針を踏まえつつ、各局の管内事情に即した重点課題・対応方針などを盛り込んだ行政運営方針を策定し、計画的な行政運営を図ることとしていますので、本方針を確認することで、今後の労働行政のあり方が見えてきます。以下、その中でも重点施策として挙がっている項目を取り上げます。

◆重点施策1:働き方改革による労働環境の整備、生産性向上の推進等

働き方改革に取り組む中小企業・小規模事業者等に対する支援等、長時間労働の是正を始めとする労働者が健康で安全に働くことができる職場環境の整備等、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保、総合的なハラスメント対策の推進、柔軟な働き方がしやすい環境整備等、治療と仕事の両立支援、生産性の向上等に向けた各種取組等を実施するとしています。具体的には、助成金の創設や、長時間労働の是正、改正労基法等の施行への対応、長時間労働の是正および過重労働による健康障害防止の徹底、労働条件の確保・改善対策(賃金不払い残業の防止、ブラック企業等への取組み、外国人労働者や技能実習制等の労働条件確保対策の推進、労災かくしの排除に係る対策)、年次有給休暇の取得促進や勤務間インターバル制度の導入促進などです。

◆重点施策2:人材確保支援や多様な人材の活躍促進、人材投資の強化

職業紹介業務の充実強化による効果的なマッチングを推進し、人材不足分野などにおける人材確保と雇用管理改善等を推進し、また、女性、障害者、高年齢者、若者、生活困窮者等の活躍促進、職業生活と家庭生活の両立支援、外国人材の受入れの環境整備等に向けた各種取組みを実施するとしています。具体的には、母子家庭の母等の雇用対策の推進等、男性の育休取得促進、多様な障害特性に対応した就労支援の強化等、高齢者のマッチングによるキャリアチェンジの促進等、特定技能外国人を始めとする外国人労働者の適切な雇用管理の確保等などです。

◆労働保険適用徴収担当部署の重点施策

労働保険の未手続事業一層対策を推進し、さらに、労働保険料等の適正徴収等を実施するとしています。

◆毎月勤労統計調査に係る雇用保険、労災保険等の追加給付

毎月勤労統計調査に係る雇用保険、労災保険、船員保険および雇用調整助成金等の事業者向け助成金の追加給付について着実に実施するとしています(一部支払いが始まっています)。

その他、東日本大震災からの復興支援(雇用機会創出支援等)が重点項目として挙がっています。

【「平成31年度地方労働行政運営方針」の策定について~厚生労働省】

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04277.html

就活生の「ブラック企業」「ホワイト企業」への意識~DISCO調査

 

◆調査の概要

人手不足による売り手市場が続くなか、各企業はあの手この手を使った「人材確保」対策に苦心しています。そうした背景のもと、株式会社DISCOが、今年入社を迎えた卒業生(2019年卒、以下「19年卒」)と、就職活動を始めたばかりの学生(2020年卒、以下「20年卒」)それぞれに、「ブラック企業」と「ホワイト企業」についての意識調査を行いました(調査期間:2019年2月8日~14日)。

19年卒の回答者数:750人(文系男子221人、文系女子220人、理系男子200人、理系女子109人)、サンプリング:キャリタス就活2019学生モニター

20年卒の回答者数:750人(文系男子285人、文系女子192人、理系男子193人、理系女子80人)、サンプリング:キャリタス就活2019学生モニター

◆「ブラック企業」と「ホワイト企業」への意識

調査結果として、まず「ブラック企業を気にした(している)」という学生は、19年卒85.6%、20年卒91.1%と9割近いのに対し、「ホワイト企業を気にした(している)」という学生はそれぞれ半数程度となっています。

「ブラック企業」だと思う条件としては、「残業代が支払われない」が最多の8割(19年卒77.9%、20年卒78.0%)、次いで「給与が低すぎる」が約7割(19年卒70.9%、20年卒70.1%)で、「労働条件が過酷である」、「残業が多い」、「セクハラ、パワハラがある」、「有給休暇を取りづらい風土がある」等、それぞれ6割以上に上ります。

また、ホワイト企業を気にする就活生は半数程度でしたが、「ホワイト企業かどうか」を調べた学生は、19年卒は56.0%、20年卒は61.3%で、「ホワイト企業だと思う条件」として、「有給休暇を取りやすい風土がある」が最多で、「福利厚生が充実している」、「離職率が低い」、「残業が少ない」、「残業代が満額支払われる」と続きます。

◆「ブラック企業」の調べ方と入社後の対応

就職活動で「ブラック企業かどうか」を調べた(調べている)学生は、19年卒82.1%、20年卒79.7%に上ります。調べ方で最も多かったのがそれぞれ、「クチコミサイト」約9割で、次いで「就職情報サイトで企業情報(募集要項等)を確認」が約5割でした。

また、入社後に「ブラック企業」だとわかった場合、「すぐに辞める」はそれぞれ1割程度ですが、「1年は様子をみる」はそれぞれ4人に1人、「半年以内に見切りをつける」という回答はそれぞれ過半数に達しています。

一方で、ブラック企業でも働き続けられる条件として、「給与・報酬が高いなら」がそれぞれ約7割、「職場の人間関係が良いなら」がそれぞれ約6割を占めています。

以上のことから、最近の就活生の企業選びのポイントは、「ブラック企業」を強く意識し、「働きやすさ」を求める傾向にあることがわかります。

【「就活生に聞いた「ブラック企業/ホワイト企業」への考え」~株式会社ディスコ】

https://www.disc.co.jp/press_release/6831/

 

雇用関係助成金の不正受給対策が強化されました

 

4月1日から改正雇用保険法施行規則が施行されました。今年も例年どおりいくつかの助成金の統廃合が行われていますが、それに加えて不正受給対策の強化が盛り込まれました。内容は以下のとおりです(通達「雇用安定事業の実施等について(平成31年3月29日職発0329第2号・雇均発0329第6号・開発0329第開発0329第58号)」から抜粋)。

 

◆不支給期間の延長および対象の拡大

(1) 現在、過去3年以内に偽りその他不正の行為により、雇用調整助成金等の支給を受け、または受けようとした事業主または事業主団体もしくはその連合団体に対して雇用関係助成金を支給しないこととしているものを、過去5年以内とする。

(2) 過去5年以内に偽りその他不正の行為により、雇用調整助成金等の支給を受け、または受けようとした事業主または事業主団体もしくはその連合団体の役員等(偽りその他不正の行為に関与した者に限る)が、事業主または事業主団体もしくはその連合団体の役員等である場合は、当該事業主または事業主団体もしくはその連合団体に対しては、雇用関係助成金を支給しない。

(3) 過去5年以内に雇用調整助成金等の支給に関する手続きを代理して行う者(代理人等)または訓練を行った機関(訓練機関)が偽りの届出、報告、証明等を行い事業主または事業主団体もしくはその連合団体が雇用調整助成金等の支給を受け、または受けようとしたことがあり、当該代理人等または訓練機関が雇用関係助成金に関与している場合は、当該雇用関係助成金は、事業主または事業主団体もしくはその連合団体に対しては、支給しない。

 

◆返還命令等

(1) 偽りその他不正の行為により雇用調整助成金等の支給を受けた事業主または事業主団体もしくはその連合団体がある場合には、都道府県労働局長は、その者に対して、支給した雇用調整助成金等の全部または一部を返還することを命ずることができ、また、当該偽りその他不正の行為により支給を受けた雇用関係助成金については、当該返還を命ずる額の2割に相当する額以下の金額を納付することを命ずることができる。

(2) (1)の場合において、代理人等または訓練機関が偽りの届出、報告、証明等をしたため雇用関係助成金が支給されたものであるときは、都道府県労働局長は、その代理人等または訓練機関に対し、その支給を受けた者と連帯して、雇用関係助成金の返還または納付を命ぜられた金額の納付をすることを命ずることができる。

 

◆事業主名等の公表

都道府県労働局長は、事業主または事業主団体もしくはその連合団体が偽りその他不正の行為により、雇用調整助成金等の支給を受け、または受けようとした場合等は、氏名並びに事業所の名称および所在地等を公表することができる。

今後は、より遵法意識に則った対応が必要となりそうです。

 

 

 出退勤時に打刻しない勤怠管理の最新動向
◆PCの起動・終了ログなどから労働時間を予測する勤怠管理のクラウドサービス

ソフトウェア開発の株式会社ソニックガーデンは4月1日、自社が提供する月額制の“打刻レス”勤怠管理ツール「ラクロー」が、労働基準法の「賃金台帳への労働時間記載」(同法108条および施行規則54条)と、改正労働安全衛生法の「労働時間の状況把握」(同法66条の8の3)に適合している旨、厚生労働省に確認がとれたとするプレスリリースを公表しました。

ラクローは、PCの起動・終了ログ、カレンダーの予定時刻、メールの送信時刻などから労働時間を予測する、勤怠管理のクラウドサービスです。従来の勤怠管理と違い、従業員による「打刻」や「時刻入力」のプロセスがないのが大きな特徴となっています。同社は、4月からいよいよ施行された働き方改革関連法にともない、ユーザーから「法が求める労働時間管理にラクローが対応しているのか」という質問が相次いでいることへの対応としています。

◆勤怠管理(打刻)と「適正把握ガイドライン」の関係

労働時間管理における重要な指針として、平成29年1月策定の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(以下「適正把握ガイドライン」)があります。これにおいて、国は使用者に対し、「労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録すること」を求めており、その方法は労働者の「自己申告」ではなく、「客観的な記録」(タイムカード、ICカードによる入退室ログ、PCの使用時間の記録等)に基づくことを原則とするものとしています。やむを得ず「自己申告」による場合は、自己申告による時間と、入退場記録やPC使用時間記録を基にした時間に乖離が生じているときに、実態調査と補正をすること等をしなければなりません。

前述のプレスリリースによれば、従来型の勤怠管理サービスは適正把握ガイドラインにおける「自己申告」に相当するのに対し、ラクローは「客観的な記録」として扱われるので、労働時間管理に多大な労力を必要とせず、未払い残業代請求や残業時間上限超過など法令違反リスクもないとのことです。

◆自社にあった勤怠管理は?

労働者を対象とした勤怠管理と打刻に関する民間調査(HR NOTE「勤怠管理に関するインターネット調査」2016年実施)によれば、「あなたの勤め先の勤怠管理方法」で多いのは「タイムカードにて打刻」26.4%、「紙の出勤簿に記入」19.9%、「PCのWebブラウザよりログインして打刻」15.6%と、アナログな手法もまだまだ根強いようです。また、「勤怠管理に関する不満」としては、「正確な勤怠管理ができていないように感じる」15.0%が最多の回答でした。労働者にとって、「正確な勤怠管理」(=適正な労働時間管理把握)がされないことは、サービス残業や過重労働の温床となるおそれがあり、関心の高いところです。

ラクローのような新手法にしろ、従来の手法にしろ、法律が求める要件と従業員が求める要件の双方に対応した勤怠管理をしたいものです。

【参考】

株式会社ソニックガーデン ニュース

https://www.sonicgarden.jp/news/326