2020年7月

逆境も困難も乗り越える!

いま注目の「レジリエンス」

 

◆逆境や困難を乗り越える力

「レジリエンス」をご存じですか? これは逆境や困難を乗り越える力を表す概念で、メンタルヘルスの分野では「逆境でも折れない、しなやかな心の強さ」といった意味合いで使われます。

その定義は人・団体によりさまざまですが、アメリカ心理学会では、「逆境、心的外傷、悲劇、脅威、あるいは家族や人間関係問題、深刻な健康問題などから派生したストレスに直面したときに、それにうまく適応するプロセス」であるとしています。

 

◆ビジネス分野での関心の高まり

経済環境がめまぐるしく変化し、企業間の競争も激化している中、逆境や困難にあっても高いパフォーマンスを発揮することのできる人材が強く求められるようになってきています。また、メンタルヘルス不調による休職等の問題に対応するため、不調を事前に防ぐ一次予防として個人のメンタルタフネスを高める重要性が指摘されているところです。

こうした状況を背景に、近年、レジリエンスへの関心・注目度が高まっており、レジリエンスを習得するための研修を実施する企業も増えてきました。

 

◆新型コロナ対応としてのレジリエンスにも注目

レジリエンスが高い人物はさまざまな場面で活躍することが期待できます。具体的には、レジリエンスを高めることで、柔軟な思考や試練に負けないたくましさが身につき、仕事でのトラブルやミス、責任の大きな局面にも適切な対応が可能になるとされています。特に現在は、新型コロナ・在宅勤務のストレス対応としてのレジリエンスに注目が集まっています。

アメリカ心理学会は、レジリエンスについて、「人が持っている・持っていないなどの適性ではなく、困難な経験からの回復を意味する行動や思考、行為が含まれ、誰でもが学習し発達させることができる」ものであるとしています。誰でも後天的に習得することができるものですから、社員の能力開発の一環として取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

中小企業の働き方改革関連法の認知度・準備状況は?~日本・東京商工会議所調査

 

◆中小企業への適用が次々に始まる働き方改革関連法の施策

働き方改革関連法の施策の中で、今年の4月からは、「時間外労働の上限規制」の中小企業への適用が始まりました。今年は新型コロナウイルスの影響により、様々な法改正情報を目や耳にする機会が減ってしまった印象ですが、働き方改革の大きなテーマの1つである「同一労働同一賃金」も来年の4月から適用が始まりますので、今から準備が必要になります。

 

◆「時間外労働の上限規制」は施行前でも認知が不十分

日本・東京商工会議所が実施した「人手不足の状況、働き方改革関連法への対応に関する調査」(調査期間:2020年2月3日~3月6日、回答企業数:全国の中小企業2,838社(回答率:68.8%))によると、「時間外労働の上限規制」の名称・内容について、認知が十分でない企業の割合は16.2%となっています。また、施行時期を「知らない」とした割合は、従業員規模50人以下の企業で19.9%と、約2割にも上っており、施行直前の時期においても、まだ認知度自体が十分ではないという実態がわかる結果となっています。

 

◆来年4月から中小企業にも適用される「同一労働同一賃金」

来年4月から中小企業にも適用される「同一労働同一賃金」ですが、本調査によると、まだ25.7%の企業が、認知が十分ではないと回答しています。従業員規模50人以下の企業では、32.9%が施行時期を「知らない」と回答しており、内容だけでなく施行時期の周知も求められるところです。

また、「対象になりそうな非正規社員がいる」との回答は23.4%でしたが、そのうち「対応の目途がついている企業」の割合は46.7%にとどまっています。中小企業への施行まで1年を切る中、 まだ半数の企業は対応ができていないことがわかります。

 

◆なるべく早めの検討・取組みを

本調査によれば、「同一労働同一賃金」について講じた対応策や対応予定の方策としては、「非正規社員の給与等の処遇改善」(47.5%)、「賃金・人事制度の構築・見直し」(36.4%)、「正規/非正規の業務内容・配置の見直し」(35.8%)、「非正規社員の正社員化」(27.1%)が挙がっています。どのような対応をとるにせよ、ある程度の準備期間が必要になりますので、未対応の企業は、早めの検討・取組みが必要になります。

【日本・東京商工会議所「人手不足の状況、働き方改革関連法への対応に関する調査」】

https://www.jcci.or.jp/download/2020_hitodebusoku.pdf)

 

年金制度改正法が成立しました!

 

年金制度改正法(年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が5月29日、第201回通常国会において成立しました。この改正は、人手不足の進行や健康寿命の延伸、高齢者や女性の就業促進といった今後の社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図ることを目的としています。

主な改正内容を紹介いたします。

 

◆被用者保険の適用拡大(2022年10月~)

短時間労働者(週の労働時間が通常の労働者の3/4以上)を厚生年金保険、健康保険の被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件が段階的に引き下げられます(現在は500人超→2022年10月100人超→2024年10月50人超)。

 

◆在職中の年金受給の在り方の見直し(2022年4月施行)

① 在職中の老齢厚生年金受給者65歳以上の方については、在職中であっても年金額の改定を毎年定時に行うようになります。現状、老齢厚生年金の受給権を取得した後に就労した場合は、資格喪失時(退職時・70歳到達時)に、受給権取得後の被保険者であった期間を加えて、老齢厚生年金の額を改定していますが、退職を待たずに早期に年金額に反映します。

② 60歳から64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準を、現行の28万円から47万円に引き上げます。

 

◆受給開始時期の選択肢の拡大(2022年4月施行)

現在、60歳から70歳の間となっている年金の受給開始時期の選択肢を、60歳から75歳の間に拡大します。

 

◆確定拠出年金の加入可能要件の見直し等(2022年4月施行)

① 確定拠出年金(DC)の加入可能年齢の引上げ

・企業型DC:現行65歳未満→厚生年金被保険者(70歳未満)に改正

・個人型DC(iDeCo):現行、国民年金被保険者の資格を有し、かつ60歳未満→国民年金被保険者に改正

② 確定拠出年金(DC)の受給開始時期の選択肢の拡大

現行は60歳から70歳の間で各個人において受給開始時期を選択できますが、公的年金の受給開始時期の選択肢の拡大に合わせて、上限年齢を75歳に引き上げます。

 

◆その他の改正

国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切替え(2022年4月)、未婚のひとり親等を寡婦と同様に国民年金保険料の申請全額免除基準等に追加(2021年4月)、短期滞在の外国人に対する脱退一時金の支給上限年数を3年から5年に引上げ(2021年4月)などが予定されています。

 

感染拡大による働き方と意識の変化~日本生産性本部の調査結果

 

新型コロナウイルス感染症は、組織で働く人の意識にどんな変化をもたらしているのか。日本生産性本部が、政府による緊急事態宣言の発出から約1か月後の5月11日~13日に20歳以上の日本の雇用者(就業者から自営業者、家族従業者等を除く)1,100名を対象にインターネットを通じて行った第1回の調査結果を公表しました。

◆労働時間・業務時間の変化、業種別・労働時間の変化

労働時間・業務量・余暇時間とも「特に増減は無い」が4割以上。労働時間は43.2%、業務量は37.6%が「減少した」と回答した一方、余暇時間は42.8%が「増加した」と回答しました。また、労働時間の増減は業種による差が大きく、特に宿泊業では100%、飲食サービス業では89.2%で「減少した」と答えました。

◆勤め先の業績、今後の自分自身の雇用・収入への不安、勤め先への信頼感

勤め先の業績(65.3%)、今後の自分自身の雇用(47.7%)、今後の収入(61.8%)と、いずれも「不安」を感じている人が多いという結果です。今後の雇用への不安感は業種による差が大きく、宿泊業(85.7%)、飲食サービス業(75.7%)、医療・福祉(65.0%)、生活関連サービス業(63.0%)で「不安」の割合が多くなっています。

一方、勤め先による健康への配慮は、雇用形態や性別等の属性に関わらず68.7%が肯定的で、信頼の程度は、性別・雇用形態等の属性に関係なく「信頼している」「まずまず信頼している」が約7割、「あまり信頼していない」「信頼していない」が約3割でした。

◆新型コロナウイルス感染症による働き方の変化

働き方については、「特に変化はない」が40.7%で最多、「多少変わった」が35.0%、「大きく変わった」が24.3%でした。職種別に見ると、「専門的・技術的な仕事」「管理的な仕事」で3割以上が「大きく変わった」一方、「生産工程の仕事」「輸送・機械運転の仕事」「建設・採掘の仕事」「運搬・清掃・包装等の仕事」では6~7割が「特に変化はない」としています。

また、柔軟な働き方の施策については、「特にない」が46.3%で最多。「自宅での勤務」29.0%、「時差出勤」16.3%、「短時間勤務」15.4%で、柔軟な働き方が一般化したとまでは言えない状況です。ただ、直近1週間の出勤日(営業日ベース)については、「1~2日」が37.3%で最多、「0日」32.1%、「3~4日」21.1%、「5日以上」9.5%で、2日以下の出勤が約7割を占めました。

テレワーク実施における課題については、「職場に行かないと閲覧できない資料・データのネット上での共有化」48.8%が最多で、以下「Wi-Fiなど、通信環境の整備」45.1%、「部屋、机、椅子、照明など物理的環境の整備」43.9%などが続きました。「特に課題は感じていない」は8.4%にとどまり、多くの人が現状に不都合を感じていることが分かります。

一方で、新型コロナウイルス収束後もテレワークを継続したいかについては、「そう思う」24.3%、「どちらかと言えばそう思う」38.4%と、6割強が肯定的でした。

ある程度予想された結果も多いといえますが、これらの具体的な数字も踏まえ、企業としては、今後予測される新型コロナウイルスの第2波・第3波への備えはもちろん、多様な働き方を取り入れながら生産性を高められるよう、社内インフラの整備や社員教育、制度改革が求められることになりそうです。

【日本生産性本部「新型コロナウイルスの感染拡大が働く人の意識に及ぼす調査」結果PDF】

https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/5f4748ac202c5f1d5086b0a8c85dec2b.pdf