2021年5月

職場における新型コロナウイルス集団感染事例にみる感染予防対策

 

◆まん延防止等重点措置の適用地域が拡大

4月5日から宮城県、大阪府、兵庫県の一部地域、加えて12日からは東京都・京都府・沖縄県の一部地域にも、まん延防止等重点措置が適用されています。

特に、1月31日時点では日に5例の報告であった変異株への感染が、3月31日には23例に増える等、従来型より感染力が強いとされる変異株への感染増加が懸念されています。

 

◆職場における集団感染はどこで発生している?

厚生労働省がまとめた「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る職場における集団感染事例」では、次の4つの事例が紹介されています。

・事業場(執務室)                               ・事業場(休憩スペースや社員食堂等)

・事業場外(外勤時や移動時)                 ・事業場外(勤務時間外等)

 

◆執務スペース以外の感染対策

多くの労働者が同時に休憩を取ったり更衣室の消毒が不十分であったり、食堂の飛まつ対策が不十分であったりしたために集団感染が発生しています。

対策としては、休憩時間等を分散したりスペースの消毒を定期的に実施したり、入退室後の手洗い・手指消毒を徹底したりするなどがあります。また、食堂における感染防止対策としては、座席数を減らす、座る位置を制限する、会話をしない、昼休み等の休憩時間に幅を持たせる、などがあります。

 

◆外勤時や移動時の感染対策

研修など宿泊を伴う業務において、集団活動や生活する場で密集していたことが原因で集団感染が発生したり、複数の労働者が車両で移動し、同乗した複数の労働者に感染が見つかったりしています。

対策としては、3密回避やマスクの着用、手洗い・手指消毒といった基本的な対策に加えて、日常生活用品の複数人での共用は避けるなどがあります。また、車両での移動についても、人との間隔を空け、マスクを着用し、換気を行うなどがあります。

 

◆勤務時間外等の感染対策

政府は4人以上の会食を行わないよう呼びかけていますが、就業時間後の飲み会などでの集団感染が発生しています。改めて一人ひとりが感染予防の行動をとるよう全員に周知することが求められます。

 

「最低賃金引上げの影響に関する調査」の集計結果(商工会議所)より

 

日本商工会議所ならびに東京商工会議所から「最低賃金引上げの影響に関する調査」の結果が公表されました。

この調査は、最低賃金について、2016年から2019年まで4年連続で3%台の大幅な引上げが行われてきたことを踏まえ、コロナ禍における中小企業の負担感や経営への影響等を把握し、今後の要望活動に活かしていくために実施されたものです。

具体的には、2021年2月1日~22日までに全国の中小企業6,007社を対象に調査が行われ、3,001社から回答が得られました(回答率:50.0%)。

調査結果のポイントは以下のとおりです。

 

○昨年の最低賃金の全国加重平均額は、コロナ禍による厳しい経済情勢が考慮され、1円の引上げにとどまったが、2016年から2019年まで4年連続で3%台(25円~27円)の大幅な引上げが行われてきた。

○こうした経緯を踏まえ、現在の最低賃金額の負担感について聞いたところ、「負担になっている」(「大いに負担になっている」、「多少負担になっている」の合計)と回答した企業の割合は過半数に達した(55.0%)。

○業種別でみると、特に、コロナ禍で大きな影響を受けている「宿泊・飲食業」では、「負担になっている」と回答した企業の割合は8割に達した(82.0%)。

○また、現在の最低賃金額の経営への影響について聞いたところ、「影響があった」(「大いに影響があった」、「多少は影響があった」の合計)と回答した企業の割合は4割に達した(43.9%)。

○最低賃金額を全国で一元化すべきとの論調に対する考えについて、「反対」(「反対である」、「どちらかと言うと反対である」の合計)と回答した企業の割合は約8割に達した(78.0%)。目安ランク別でみると、Dランク(青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)の企業において、「反対」と回答した企業の割合が83.9%と最も高かった。

○仮に、今年、最低賃金が30円の引上げとなった場合の経営への影響について聞いたところ、「影響がある」と回答した企業の割合は6割に達した(63.4%)。

○「影響がある」と回答した企業に対して対応策を聞いたところ、「設備投資の抑制等」(42.1%)が最も多く、次いで、「一時金を削減する」(28.4%)、「非正規社員の採用を抑制する」(24.9%)との回答が多かった。

○したがって、最低賃金の大幅な引上げは、設備投資による生産性向上の阻害要因になることに加え、賃金増に必ずしも直結しないことや採用の抑制につながることがうかがえる。

 

「令和3年度地方労働行政運営方針」にみる労務管理のポイント

 

◆気になるポイントは?

今後の労働基準監督署等による監督・指導方針の傾向がわかる「令和3年度地方労働行政運営方針」が策定されました。気になるポイントを見ていきましょう。

 

◆雇用の維持・継続に向けた支援

新型コロナへの緊急的な対応期を経て、ポストコロナへ政策の重心が移っていくようです。

産業雇用安定助成金やトライアル雇用助成金などを活用した、在籍型出向の活用や再就職支援を支援する、とあります。出向契約や出向に関する意向の確認などが重要となるでしょう。

 

◆女性活躍・男性の育児休業取得等の推進

女性活躍推進法の行動計画策定義務対象企業が、この4月より101人以上に拡大されています。また、新設が予定される、いわゆる男性版産休制度(子の出生後8週間に4週間の休みを取得可能とすること等が柱)も、制度の施行は2022年秋頃が予定されているようですが、どのような内容になるのか確認しておく必要があるでしょう。

 

◆テレワーク、労災

今や、やっている・知っていて当然となったテレワークに関しても、取組みを強化するようです。人材確保等支援助成金による支援があります。テレワークに関しては技術的な面からも、労働時間の管理、健康管理などの労務管理の面からも、これから人事労務担当者の必須の知識となるでしょう。

また、新型コロナ感染症による労災にも注意しておきましょう。医療関係の職種だけではなく、ビルメンテナンス業の清掃員や建設業の施工管理者・営業職従事者・建設作業員、港湾荷役作業員、販売店員でもコロナによる労災が認められた事例があります。

 

監督・指導は長時間労働の是正に関する監督指導が中心にはありますが、今年度の運営方針では、職場のハラスメントや勤務間インターバル、同一労働同一賃金などについても触れられていますので、昨今の傾向を反映した調査・指導にも注意が必要です。

 

大学生の就職内定率が10年ぶりに悪化

 

◆2月時点の就職内定率は?

厚生労働省と文部科学省は、2月1日現在の「令和2年度大学等卒業予定者の就職内定状況」を公表し、大学生の就職内定率は89.5%(前年同期比2.8ポイント減)でした。昨年の同時期の就職内定率は過去最高の92.3%でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大影響で5年ぶりに9割を切りました。また、2011年以来10年ぶりに前年同期比を下回りました。

なお、同調査の昨年10月1日時点の就職内定率は69.8%(同7.0ポイント減)、昨年12月1日時点では82.2%(同4.9ポイント減)でしたので、減少幅は縮まったことになります。

 

◆学部別、地域別では?

大学生の就職内定率は、学部別では、文系が88.9%(同3.3ポイント減)、理系が92.1%(同0.9ポイント減)でした。

地域別では、9割を超えたのは北海道・東北地区の90.9%(同1.7ポイント減)と、関東地区の90.8%(同3.2ポイント減)でした。また、前年同期比より増加したのは、中国・四国地区で87.7%(同0.6ポイント増)でした。

 

◆高校生の内定率は?

なお、文部科学省の調査結果によると、1月末時点の令和2年度高校卒業予定者の就職内定率は過去最高の93.4%(前年同比1.4ポイント増)でした。しかし、就職希望者数が前年よりも11.3%減少していることから、現在の経済状況を鑑みて進学に切り替えた生徒が増えたことが考えられます。そのため、同省は「決して就職状況がよくなっているわけではない」と分析しています。

 

◆今後もコロナの影響を懸念

昨年度は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、企業説明会の中止やオンライン面接への移行等で採用活動に混乱が生じました。また、業種によっては採用の抑制や中止をする企業が相次ぎました。

すでに来春卒業予定の新卒就職活動は始まっていますが、コロナ禍での変化に対応した採用活動を行うことがより良い人材の獲得につながると考えられます。

【厚生労働省「令和2年度大学等卒業予定者の就職内定状況(2月1日現在)」】

https://www.mhlw.go.jp/content/11804000/000752873.pdf

【文部科学省「令和3年3月新規高等学校卒業予定者の就職内定状況 (令和3年1月末現在)に関する調査」について】

https://www.mext.go.jp/content/20210319-mext_jidou01-000013365_2.pdf