2022年8月

今後の在宅勤務はどうする?

 

◆29.1%の企業で約1割の従業員が在宅勤務を実施

東京商工リサーチが行った調査によると、2022年6月時点で「在宅勤務を実施している」と回答した企業は29.1%だそうです。2021年10月に行った同じ質問に対する回答結果からは約8%低下しています。今回の内訳を見ると、大企業の約57%に対して中小企業では約24%と差が大きくなっています。実施企業では、約1割の従業員が実施している企業が、大企業・中小企業とも最多となっています。

 

◆在宅勤務を取りやめた企業が約27%

中小企業で特徴的なのは「新型コロナ以降、一度も実施していない」で、約48%となっています(大企業では約16%)。

また、「実施したが取りやめた」とする企業は、企業規模にかかわらず約27%でした。この調査結果では、その細かい理由までは掲載されていませんが、在宅勤務に対する評価方法が難しいことなどが理由のようです。

 

◆DXを止めない

コロナ禍により、業務のやり方を変えなくてはならなくなったことで、強制的にDX化が進んだ一面もあるでしょう。新型コロナは、ある意味で、政府による働き方改革の取組みより、働く人の意識を変える効果があったかもしれません。

新型コロナによる企業活動への影響はすでに収束したという企業も一定程度あり、企業の人手不足感が現れてきています。

コロナ禍の期間で行った業務改善や得られた知恵は継続していくほうが、労働環境の改善につながり、結果として人材確保などに有利に働くと考えられます。一方、在宅勤務を行って問題点が出てきたにもかかわらずそれを放置するのも良くありません。元に戻すにしても続けるにしても、その効果と課題についてしっかりと検証を行いましょう。「なんとなく」というのは避けたいものです。

 

【東京商工リサーチ「第22回 新型コロナウイルスに関するアンケート調査」】

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220622_01.html

 

企業における社員教育の現状とリスキリング

 

◆教育訓練費用を支出した企業は5割

政府が「人への投資」を進める姿勢を見せるなかで、社員教育にもスポットが当たっているところですが、企業における現況はどのようになっているのでしょうか。

厚生労働省が公表した令和3年度「能力開発基本調査」による企業の教育訓練への費用の支出状況をみると、教育訓練費用(OFF-JT費用や自己啓発支援費用)を支出した企業は50.5%となっています。これは昨年と同水準で、近年低下しています。OFF-JTに支出した費用の労働者1人当たり平均額は1.2万円で、こちらも近年は減少傾向にあるようです。

 

◆能力開発や人材育成に関して問題があるとする事業所が7割以上

同事業所調査によれば、能力開発や人材育成に関して、何らかの問題があるとする事業所は76.4%に上っています。問題点の内訳としては、「指導する人材が不足している」(60.5%)が最も多く、「人材育成を行う時間がない」(48.2%)、「人材を育成しても辞めてしまう」(44.0%)と続いています。

同調査では、多くの事業所で問題があると感じつつも、対応策がみつからず、企業としても社員教育にあまり積極的ではない様子も読み取ることができます。

 

◆「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」の策定

厚生労働省は、6月に「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」を策定・公表しています。社会環境の変化、労働者の職業人生の長期化も踏まえ、労働者の学び・学び直しの重要性が高まっているとして、労使が取り組むべき事項、公的な支援策等を体系的に示しています。

最近では社員のリスキリング(人材の再教育や再開発)についても注目が集まっています。このような社員教育は、社員のモチベーションアップや生産性の向上にも寄与するといわれます。今後企業としても検討課題の一つになっていくでしょう。

 

【厚生労働省「令和3年度「能力開発基本調査」」】

https://www.mhlw.go.jp/content/11801500/000953325.pdf

【厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」】

https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/000957888.pdf

 

男女の賃金差異の情報公表が義務化されました
~改正女性活躍促進法施行

 

◆改正の概要

令和4年6月7日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画~人・技術・スタートアップへの投資の実現~」において、一般事業主のうち常時雇用する労働者の数が 300 人を超えるものに対し、「男女の賃金の差異」の公表が義務化されました。これを受け、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画等に関する省令の一部を改正する省令」および「事業主行動計画策定指針の一部を改正する件」が7月8日に公布・告示され、同日施行・適用されました。

 

◆制度見直しの具体的内容

① 情報公表項目に「男女の賃金の差異」を追加すること

② 企業規模に応じて必須項目または選択項目とすること

*常時雇用する労働者の数が 300 人を超える一般事業主については、当該項目の公表は必須

③ 3つの区分(全労働者、正規雇用労働者、非正規雇用労働者)により公表すること

④ 情報公開については、事業主ごとに行うものとされ、例えばホールディングス(持株会社)であっても、法の定める一般事業主に該当する限り、単体としての情報公表を行う(連結ベースではない) 等

 

◆男女の賃金差異の公表方法等

・公表イメージ:下記【厚生労働省 「男女の賃金の差異の算出及び公表の方法について」】8ページのイメージ

 

・公表方法:厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」や自社ホームページ

・公表時期:令和4年7月8日以後、最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度の開始後おおむね3か月以内

「男女の賃金の差異」の算出にはそれなりの手間がかかるので、厚労省の算出方法や解説資料を確認のうえ、早めに準備しておくとよいでしょう。

 

【厚生労働省 「男女の賃金の差異の算出及び公表の方法について」】

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000962287.pdf

【厚生労働省 「男女の賃金の差異の算出方法等について」】

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000962288.pdf

 

新型コロナに係る傷病手当金の支給に関するQ&Aが改訂されています

「新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給に関するQ&A」が改訂され、新たに7つのQが追加されました。例えば、次のようなものです。
〇被保険者が、業務災害以外の事由で罹患した新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)の療養のため、労務に服することができない場合、傷病手当金は支給されるのか。
⇒傷病手当金の支給対象となりうる。
〇被保険者の検査は実施していないが、同居家族が濃厚接触者となり有症状になった場合等において、医師の判断により当該被保険者が新型コロナウイルス感染症に感染していると診断されたため、当該被保険者が労務に服することができない場合、傷病手当金は支給されるのか。
⇒傷病手当金の支給対象となりうる。

ほかにも、
〇傷病手当金の支給申請にあたり、保健所等が発行する「宿泊・自宅療養証明書」の添付は必要か
〇傷病手当金の支給申請関係書類として「宿泊・自宅療養証明書」が提出された場合に、これを医師の意見書として取り扱ってよいか
〇被保険者が、新型コロナウイルスの治癒後にも、事業主から感染拡大防止を目的として自宅待機を命じられたため労務に服することができない場合、当該期間について、傷病手当金は支給されるのか
〇事業主から自宅待機を命じられていた期間中に新型コロナウイルス感染症に感染した場合、傷病手当金の待期期間の始期はいつか
〇海外で新型コロナウイルス感染症に感染し、医師の意見書を添付できない場合は、何をもって労務不能な期間を判断すればよいか
といった事項について回答が示されています。

それぞれの内容が細かくて難しい点もあるので、従業員から相談があった際には弊所までご相談ください。

【厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給に関するQ&A」 の改訂について】
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T220705S0010.pdf