2014年7月号

人手不足産業でも採用できた事業所とできなかった事業所の違い
◆医療・福祉、建設業における人手不足が深刻

厚生労働省が発表した「人手不足産業における高卒求人の充足状況」によると、平成25年度の高卒者向け求人は、製造業、医療・福祉、建設業、卸売・小売業などで多かったですが、これらの産業の充足率をみると、医療・福祉で31.3%、建設業で34.2%と低く、人手不足の深刻化による充足率の向上が課題となっています。

◆採用できた事業所・できなかった事業所の差は?

充足率が低かった医療・福祉と建設業において、高卒求人票を用いて採用できた事業所とできなかった事業所の違いをみると、医療・福祉では、早期(平成25年7月末まで)に求人を出した事業所の割合が、採用できた事業所で77.2%、採用できなかった事業所で 58.7%となり、差が見られました。
また、求人票に「採用・離職状況」の記載があった事業所の割合は、採用できた事業所で73.6%、採用できなかった事業所で60.4%となっています。
建設業でも、早期に求人を提出した事業所の割合については、採用できた事業所(69.2%)が採用できなかった事業所(45.1%)を大きく上回りました。
これらのことから、「早期の求人提出」、「求人票における積極的な情報提供」が充足に大きな影響を与えている要因と考えられます。

◆なぜ人が集まらないのか?

高校の進路指導担当教諭に対して、充足率の向上が課題となっている3産業(建設業、医療・福祉、宿泊業・飲食サービス業)に生徒が応募しない理由を聞いたところ、宿泊業・飲食サービス業では、「休日が少ない・労働時間が長い・勤務時間が不規則等、労働時間の問題」、建設業と医療・福祉では、「仕事がきつそう・面白くなさそう等、仕事内容(職種)の問題」という回答割合が高かったようです。
◆充足率向上のために必要な改善点
必要な改善点について、高校の進路指導担当教諭からの意見をまとめると、「医療・福祉」では、給与・休日・労働時間等労働条件を改善し、社会的評価・イメージを向上させる取組み、日勤・夜勤といった就業規則が不規則でも生活のリズムが崩れない配慮、OJTの充実と資格取得までの制度や支援の充実などが挙げられました。
「建設業」では、将来性やスキルアップのビジョンを示すことや、3Kのイメージを払拭する取組み、労働条件の改善、「宿泊業・飲食サービス業」では、長時間拘束される労働条件改善のための交代制シフトの導入や正社員としての仕事内容とキャリアアップの将来像を示すことなどが挙げられました。

 

 不当な差別は勧告の対象に!障害者雇用に関する動向
 ◆「障害者への差別禁止」と「職場環境の配慮」を義務化

昨年成立した改正障害者雇用促進法により、再来年の2016年4月から、企業が障害者を雇用する際の差別禁止や、職場環境の配慮が義務化されます。
これらに違反した企業は指導や勧告の対象になるようです。同省は労使の意見も踏まえ、2015年3月末までに指針を策定する予定です。

◆差別の禁止に関する指針のポイント

厚生労働省が発表した報告書によると、対象となる障害者の範囲は障害者雇用促進法に規定する障害者、対象となる事業主の範囲はすべての事業主です。募集・採用、賃金、配置、昇進などの各項目に沿って禁止される差別を整理する必要があるとし、各項目について、障害者であることを理由にその対象から障害者を排除することや、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることが差別に該当するとしています。また、障害者を有利に取り扱うことや、合理的配慮を提供し、労働能力などを適正に評価した結果として異なる取扱いを行うことなどは、差別に当たらないとしています。

 ◆合理的配慮の提供に関する指針のポイント

障害者、事業主の範囲は「差別の禁止に関する指針」と同じです。募集・採用時には、障害者から事業主に対し、支障となっている事情などを事前に申し出、採用後には、事業主から障害者に対し、職場で支障となっている事情の有無についての確認などが必要になってくるようです。また、事業主は合理的配慮に関する措置を障害者と話し合い、合理的配慮に関する措置を確定した際には、内容と理由を障害者に説明するなどの対応が必要になってくるようです。合理的配慮の具体的な例としては、募集および採用時におけるものとして、視覚障害の方に対する募集内容の音声等での提供や、聴覚・言語障害の方に対する筆談等による面接などが挙げられています。採用後におけるものとして、肢体不自由な方に対しては、机の高さを調節すること等、作業を可能にする工夫を行うことや、精神障害の方に対しては、出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮することが挙げられています。

 ◆今後の行政による取組み

同省は、指針の策定に加え、行政による様々な取組みが重要であるとし、事業主や労働者に対する障害の特性などに関するパンフレットの配布、セミナーの実施などの啓発活動や、合理的配慮の適切な提供に向け、具体的な事例の収集・情報提供やジョブコーチ(障害者が職場に適応するための援助者)の質的な充実などの対策を講じていくようです。

 

平成26年版「パートタイマー白書」にみる人材の過不足感
 ◆人材の過不足感に関する調査

「パートタイマー白書」は、株式会社アイデムにより平成9年度から刊行されている調査報告書です。この中に、人材の過不足感に関する調査結果があります。この調査は、正社員と非正規雇用の従業員(パート・アルバイト、契約社員、派遣社員)を雇用している企業に対して実施しています。

 ◆若年層の正社員が不足

自社の従業員に対する過不足感を雇用形態別・年代別に問うと、いずれの形態においても、若い年代で不足感が高いようです。特に、正社員においてその傾向は顕著で、20代正社員が「不足」とした企業は56.3%となっていますし、30代正社員では47.3%と半数近くに上ります。他の年代の正社員に対する不足感が40代:22.0%、50代:8.3%、60代以上:4.2%となっているのと比較すると、若年層の不足感よくわかります。また、業種別では、「建設業」「運輸業」の約6~7割の企業で、20代・30代の正社員が「不足」していると回答しており、若手人材の獲得は大変なようです。

 ◆パート・アルバイトの年代別過不足感

パート・アルバイトでも、若い年代のほうが、不足感が強い(20代:25.2%、30代:20.5%)ですが、正社員の不足感のほうがより強いようです。業種別に見ると、「飲食店、宿泊業」「生活関連サービス・娯楽業」では、20代パート・アルバイトが「不足」していると回答した企業が約5割に上り、他の業種よりも割合が高くなっています。

◆契約社員・嘱託社員/派遣社員の年代別過不足感

契約社員・嘱託社員については、どの年代に対しても「ちょうどよい」という回答が8割を超えています。派遣社員についても約9割の企業が「ちょうどよい」との回答でした。非正規労働者を正社員化する企業が多くなってきていますが、人材不足への対応として、特に若年層の囲い込み競争は今後さらに激化しそうです。

 

7月から協会けんぽの申請書・届出書が新しくなります
 ◆加入者・事業主等の利便性に配慮

健康保険給付の支給を申請する際、各種申請書・届出書を提出して行いますが、7月1日より、協会けんぽのこれらの様式がOCR様式への刷新に伴いフォーマットが大きく変更されます。申請書には加入者が記入する欄だけでなく事業主や医師等が記入する欄も設けられていますが、それらが従来よりも明確に区別されたり、誤記入を防ぐため特に注意すべき点を目立たせた「記入の手引き」が用意されたりするなど、加入者・事業主等の利便性が考慮されています。

◆新しくなる様式は29種類

申請書・届出書には健康保険給付に関するものの他、保険証再交付等に関するもの、任意継続に関するもの、健診に関するものがありますが、これらのうち29種類の様式が新しくなります。対象となる様式について、主なものは協会けんぽのホームページで確認することができます。

◆負傷による給付申請の際は「負傷原因届」を提出

従来、負傷(けが)を理由として健康保険給付を申請する場合は、「傷病手当金支給申請書」や「高額療養費支給申請書」の「負傷原因記入欄」に記入することとされていましたが、新様式にはその欄が設けられていません。新様式に移行した後は、添付書類として「負傷原因届」に記入して提出することとなりますので、注意が必要です。なお、「傷病手当金支給申請書」は全4ページに変更となります(1~2ページ目が申請者情報・申請内容、3ページ目が事業主の証明、4ページ目が療養担当者の意見書)。

 ◆新様式の入手方法等

7月1日以降、協会けんぽの窓口に置いてある様式やホームページからダウンロードできる様式は、新しいものに切り替えられます。また、ユーザー登録をすれば全国のセブンイレブンの「ネットプリント」(有料)サービスでも入手することができます。なお、7月1日以降すぐに旧様式が使えなくなるわけではありませんが、協会けんぽではスムーズな手続きができるよう新様式への切替えについて協力を呼びかけています。