2015年8月号

内閣府作成の「マイナンバー導入チェックリスト」
◆通知カードの送付は10月から

いよいよ「通知カード」(10月5日時点の住民票を基に作成)の送付が迫ってきましたが、マイナンバー制度への対応は進んでいますでしょうか?今後、企業の規模にかかわらず着々と準備を進めていく必要があります。今回は、内閣府から公表されている、従業員の少ない事業者向けの「マイナンバー導入チェックリスト」の内容をご紹介いたします。

 

◆マイナンバー導入チェックリスト

チェックリストの内容は、以下の7項目となっています。
【1】担当者の明確化と番号の取得

□マイナンバーを扱う人を、あらかじめ決めておきましょう(給料や社会保険料を扱っている人など)。

□マイナンバーを従業員から取得する際には、利用目的(「源泉徴収票作成」「健康保険・厚生年金保険届出」「雇用保険届出」)を伝えましょう。

□マイナンバーを従業員から取得する際には、番号が間違っていないかの確認と身元の確認が必要です。顔写真の付いている「個人番号カード」か、10月から届くマイナンバーが書いてある「通知カード」と「運転免許証」などで確認を行いましょう。

【2】マイナンバーの管理・保管

□マイナンバーが記載された書類は、カギがかかる棚や引き出しに大切に保管するようにしましょう。無理にパソコンを購入する必要はありません。

□パソコンがインターネットに接続されている場合は、ウィルス対策ソフトを最新版に更新するなどセキュリティ対策を行いましょう。

□従業員の退職や契約の終了などでマイナンバーが必要なくなったら、細かく裁断するなどマイナンバーの書いてある書類を廃棄しましょう。パソコンに入っているマイナンバーも削除しましょう。

【3】従業員の皆さんへの確認事項

□ 制度に関する周知文書を掲示版に貼るなどして、従業員の皆さんに通知が届く時期や何に使うかなど、基本的なことを知ってもらいましょう。

過重労働問題に斬り込む「カトク」は企業のここを見ている!

 

◆「カトク」とは?

今年4月に厚生労働省が東京・大阪の2労働局に設置した、「過重労働撲滅特別対策班」の通称です。7月2日に靴販売チェーン「ABCマート」運営会社と同社の労務担当取締役、店長2人が、都内2店舗で違法残業をさせたとして書類送検され、注目されています。配属された労働基準監督官は東京7名、大阪6名で、東京の7名は経験10年以上のベテラン揃い、パソコンに保存された労働時間に関するデータの改ざん・削除といったケースでも対応できるよう、証拠収集技術「デジタル・フォレンジック」に詳しいメンバーもいるそうです。

 

◆発足から3カ月で書類送検のスピード対応の理由

同省が2014年11月にブラック企業の疑いがある4,561事業所を調査したところ、2,304事業所で違法残業が発覚しました。「カトク」は、この結果を受け監督指導・捜査体制強化のため新設されました。従来との違いは、各別に労働基準監督署が管轄内の違法残業に対応するのではなく、管轄エリアを越えて連携して対応する点にあると言われています。5月15日、同省は、違法残業が複数事業所で行われている場合に、書類送検前の是正勧告とともに企業名を公表すると発表しました。これも情報共有化により実現したスピード対応の表れと言えるでしょう。

 

◆ねらわれるのはどんな企業?

ABCマートの事件では、池袋店では三六協定未届けで従業員2人にそれぞれ月97時間・112時間の残業を行わせた疑いが、原宿店では三六協定で定めた「月79時間」を超えて従業員2人にそれぞれ月98時間・112時間の残業をさせた疑いが持たれています。また、東京労働局監督課課長は、テレビのインタビューに「指導を繰り返してもなかなか是正に至らない」「特に月100時間を超える長時間労働を問題視した」と、答えています。上記の企業名公表は(1)月残業時間が100時間超、(2)1事業所で10人以上あるいは4分の1以上の労働者が違法残業、(3)1年程度の間に3以上の事業所で違法残業、などに該当する企業が対象とされています。自社においても、三六協定の締結・届出が適正になされているか、限度時間は守られているか等、改めて確認しておきましょう。

 

 

トラック運送業の「長時間労働改善」に官民が本腰

 

◆本腰を入れ始めた官民

本年5月、厚生労働省に「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」が設置されました。

この協議会の規約によると、「トラック運送事業者、荷主、行政等の関係者が一体となり、トラック運送業における取引環境の改善及び長時間労働の抑制を実現するための具体的な環境整備等を図る」ことが目的だそうです。

 

◆労基法の改正を見据えて

現在国会で審議されている「労働基準法等の一部を改正する法律案」では、中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金を見直すことが盛り込まれています。

現在、月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)が中小企業については適用が猶予されていますが、この猶予措置を廃止する内容です。廃止時期(予定)は平成3141日ですが、トラック運送業者にとっては特に影響が大きいと言えます。

法改正への対応のため、国・行政は今後平成30年度にかけて、企業の実態調査や労働時間縮減のための助成事業、長時間労働改善ガイドラインの策定と助成事業などを行うことを協議会で検討していくようです。

 

◆労働時間の状況

労働時間の最近の状況をみると、パート労働者の比率の上昇により、年間総実労働時間は減少傾向で推移しています。また、週の労働時間でみると、60時間以上の人の割合は全体では近年低下傾向で推移し、1割弱となっていますが、30代男性では17.0%と、以前より低下したものの高水準で推移している状況です。

これをトラック運送業界についてみると、特に中小企業では、時間外労働が60時間超となる労働者の割合が非常に多い状況にあります。また、長時間労働に伴う労災(脳・心臓疾患、精神障害)の件数も多くなっています。ドライバーが運転中に意識を失ったりすれば、他者を巻き込んだ死亡事故等に直結し、会社の存続に関わる事態となります。

 

◆今から始める賃金見直し

トラック運送業界には、改善基準告示や行政による監督指導への対応などもありますが、労働時間の変化に伴う賃金体系の見直しにはそれなりの時間がかかります。

関連助成金等を活用しながら、「所定外労働時間の削減」や「年次有給休暇の取得促進」等の必要な措置を講じていく必要があります。

 

 

 

長時間労働が原因!? 精神障害の労災請求件数が過去最多

 

◆「心の病」での労災請求が過去最高

厚生労働省が2014年度の労災補償状況を公表し、うつ病などの「心の病」で労災請求をした人が1,456人(うち認定者497人、自殺・自殺未遂者99人)で、前年度よりも47件増え、支給決定件数(497件)とともに統計開始以来最高となったことがわかりました。また、脳・心臓疾患で労災認定された人も277人で、前年度からは減少しましたが、ここ数年300人前後の高止まりが続いています。

 

◆精神障害に関する事案の状況

請求件数を業種別でみると、「製造業」245件、「医療・福祉」236件、「卸売業・小売業」213件の順に多く、支給決定件数は、「製造業」81件、「卸売業・小売業」71件、「運輸業・郵便業」63件の順に多くなっています。また、年齢別の請求件数(カッコ内は支給決定件数)では、「40〜49歳」454件(140件)、「30〜39歳」419件(138件)が多くなっています。

 

◆月80時間以上の残業を行っていた人は約4割

労災認定者497人のうち、厚生労働省が過労死のリスクが高まると位置付ける「過労死ライン」の残業時間(月80時間以上の残業)を超えた人は201人(前年比57人増)でした。このうち、160時間以上の残業は67人(前年比36人増)で、長時間労働による過労の実態が浮かび上がりました。

 

◆長時間労働やストレスを減らす工夫が必要

心の病になっても労災が認定される人は限られており、その実態はより深刻な可能性があると考えられます。職場全体で「長時間労働削減」に取り組み、「ストレスを軽減できるような環境づくり」が大切と言えるでしょう。