2015年6月号

最低限押さえておくべき「マイナンバー対策」のポイント
 ◆小規模事業者向けの資料が公開

通知カードの送付が10月(中旬~下旬になると言われています)に迫ってきましたが、先日、特定個人情報保護委員会から、小規模事業者向けのマイナンバー関連資料「小規模事業者必見! マイナンバーガイドラインのかんどころ~入社から退職まで~(平成27年4月版)」が公開されました。
以下では、小規模事業者が最低限押さえておくべき、場面(入社、源泉徴収票の作成、退社等)ごとのポイントと留意点をご紹介いたします。

◆マイナンバー制度対応のポイント&留意点

(1)入社
・社員からマイナンバーが記載された書類(扶養控除等申告書等)を取得する。取得の際は、「源泉徴収票作成事務」「健康保険・厚生年金保険届出事務」「雇用保険届出事務」で利用することを知らせる。
・社員からマイナンバーを取得したら、個人番号カード等で本人確認を行う。
・マイナンバーが記載されている書類は、カギのかかるところに大切に保管する。
・マイナンバーが保存されているパソコンをインターネットに接続する場合は、最新のウィルス対策ソフトを入れておく。
(2)源泉徴収票などの作成
・マイナンバーを扱う社員を決めておく。
・マイナンバーの記載や書類の提出をしたら、業務日誌等に記録するようにする。
・源泉徴収票の控えなど、マイナンバーの記載されている書類を外部の人に見られたり、机の上に出しっぱなしにしたりしないようにする。
(3)退職
・退職所得の受給に関する申告書等、退職する人からもらう書類にマイナンバーが含まれている。
・退職の際にマイナンバーを取得した場合の本人確認は、マイナンバーが間違っていないか過去の書類を確認することで対応可能。
・保存期間が過ぎたもの等、必要がなくなったマイナンバーは廃棄する。マイナンバーを書いた書類は、そのままゴミ箱に捨ててはいけない。
(4)支払調書の作成
・税理士や大家・地主等からマイナンバーを取得する。取得の際は、「支払調書作成事務」等で利用することを知らせ、本人確認も忘れずに行う。
・気をつけることは、社員のマイナンバーと同じ(カギのかかるところに大切に保管、最新のウィルス対策ソフトの導入、マイナンバーを使う社員の特定、業務日誌などへの記録、机の上に出しっぱなしにしない、必要がなくなったマイナンバーは廃棄)。

 

ご存知ですか? 雇用保険給付金の申請期限が過ぎても申請可能に!
 ◆申請期限が過ぎても…

育児休業給付金や介護休業給付金をはじめとする雇用保険の給付金について、支給申請をしたものの、「申請期限が過ぎていて給付を受けられなかった」ということはありませんか?しかし、これからはそういった心配やミスはなくなりそうです。

 ◆時効完成までの期間であれば申請できます!

これまでは、雇用保険の受給者保護と迅速な給付を行うために、申請期限を厳守しなければなりませんでしたが、今年の4月より、申請期限を過ぎた場合でも時効が完成するまでの期間(2年間)については申請が可能になりました。ただ、申請期限内に支給申請をしないと、通常より給付金の支給が遅くれる場合や、雇用保険の他の給付金が返還になる場合もありますので、原則、申請期限内に支給申請を行うことが大切です。

 ◆申請期限が過ぎていて給付が受けられなかった場合は?

以前に給付金の支給申請を行ったにもかかわらず、申請期限が過ぎたことで支給されなかった場合はどうでしょうか。
この場合についても再度申請をし、その申請日が給付の時効の完成前で給付金の支給要件を満たしていれば、給付金は支給されます。
該当する方はいないか、確認してください。

 ◆対象となる給付は?

雇用保険の各給付のうち、下記のものが対象となります。
<対象となる給付>
高年齢雇用継続基本給付金、高年齢再就職給付金、育児休業給付金、介護休業給付金、一般教育訓練に係る教育訓練給付金、専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金、教育訓練支援給付金、就業手当、再就職手当、就業促進定着手当、常用就職支度手当、移転費、広域求職活動費

「ストレスチェック制度」実施マニュアルのポイント
◆「ストレスチェック制度」とは?

改正労働安全衛生法により、平均的にパートや臨時の労働者も含め50名以上の労働者を使用する事業者は、今年121日から来年1128日までの間にストレスチェック(以下、「SC」という)を実施し、以降毎年1回以上実施することが義務付けられます。SCは、メンタルヘルス不調の予防に役立てるため、労働者の職場におけるストレスの程度をチェックするもので、57日に「実施マニュアル」と「Q&A」が公表されました。

 ◆実施に先立ち決めておくべきこととは?

まず、事業者が実施を表明し、衛生委員会等で関連規程や実施方法、受検案内や結果等の通知方法、関連情報の取扱いルール等を決めておく必要があります。

また、労働者にも事前に実施について周知しておくとともに受検を促す等が必要となります。

実施マニュアルでは、これらについて、通知文書や調査票の例も挙げて解説しています。

 ◆実施後に対応すべきこととは?

結果を労働者に通知し、「高ストレス者」と判断された者には医師による面接指導を受けるよう勧めるとともに、一定規模の集団ごとに結果を分析してもらい、問題があれば職場環境の改善や高ストレス者に対する措置等を講じる必要があります。

このとき、本人の同意なく結果に関する情報を収集したり、結果提供に同意しない労働者に不利益取扱いをしたり、医師による面接指導を申し出た労働者に不利益取扱いをしたりすることはできませんので、注意が必要です。実施マニュアルでは、こうした点も具体的に解説されています。このほか、「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を作成し、管轄の労働基準監督署に提出する必要があります。

 ◆事前の準備を早めに始めよう

SCは労働安全衛生法で定める、事業者に実施が義務付けられるものですから、健康診断と同様、就業時間中の受検等を認める必要があるほか、費用も事業者が負担します。疑問や不安に思うことがあれば、専門家に相談する等してスムーズに実施できるよう早めに準備を進めましょう。

 

  

「退職金・年金に関する実態調査結果」にみる近年の動向
 ◆調査の概要

日本経団連と東京経営者協会との共同調査による「退職金・年金に関する実態調査」の結果が公表されました。この調査は、退職金・年金の実態および退職金水準の動向を把握し、退職金制度の見直し等の参考とするために 1973年より隔年で実施されています。今回の調査対象時期は、2014年9月末時点です(前回は 2012年9月末)。

 ◆「標準者」の退職金

ここでいう「標準者」とは、学校卒業後すぐに入社し、その後標準的に昇進・昇格した者を指します。この標準者の退職金額については、大卒者・高卒者とも勤続年数・年齢の上昇に伴って増加し、「管理・事務・技術労働者」の60歳・総合職で、大学卒が2,357.7万円、高校卒が2,154.9万円となっています。10年前、20年前と比べると退職金の増え方は、全体的に緩やかになっています。

 ◆「ポイント方式」採用企業が大半

賃金改定額と退職金算定基礎額の関係では、「賃金改定額とは関係なく別建て」としている企業が増える傾向にあり、今回の調査では76.2%となっています。賃金改定額とは別建てとしている企業のうち、「ポイント方式(点数×単価)」を採用している企業の割合が最も多く、86.0%となっています。また、ポイント方式を採用している企業が、ポイントの配分をどのような割合にしているかをみると、「資格・職務要素」として約60%、「年功要素」として20%台の配分が多くなっています。さらに、勤続年数や年齢の上昇に伴い、「年功要素」が低下して「資格・職務要素」が高まる傾向にあります。

 ◆マッチング拠出の導入状況

「退職年金制度」がある企業についてみると、「確定拠出年金(企業型)」(54.0%)が最多で、「確定給付企業年金(規約型)」(51.3%)、「確定給付企業年金(基金型)」(31.7%)と続いています。また、「確定拠出年金(企業型)」のマッチング拠出については増加傾向にあり、「導入済み」が30.2%(2012 年は6.6%)、「導入する方向で検討中」が14.1%(同21.3%)となっています。一方で、「導入の考えはない」とする企業も47.7%(同61.5%)あります。現在、「確定拠出年金法等の一部を改正する法律案」が国会で提出されており、中小企業を対象とした「簡易型DC制度」の創設等が検討されています。今後の退職金制度の見直しについては、こうした情報も考慮しておきましょう。