2016年7月号

企業にとってのメリットは?「法人番号」の利活用
 ◆13桁の番号

株式会社や社団法人、協同組合等、設立の登記を行った法人や国の機関・地方公共団体などに、13桁の法人番号が指定される「法人番号制度」が平成28年1月よりスタートしています。個人番号とは異なり、誰でも利用することが可能な法人番号について、先般、国税庁より番号の調べ方や売掛金管理での活用方法等を紹介するリーフレットが公表されました。

 ◆法人番号公表サイトとは?

「国税庁法人番号公表サイト」(http://www.houjin-bangou.nta.go.jp)では、「法人番号」「商号または名称」「所在地」などから、法人等の基本3情報(商号または名称・所在地・法人番号)を検索することができます。

 ◆法人番号の活用方法

(1)取引先情報等の入力補助による効率化
ダウンロードデータ等を活用することで、法人番号だけ入力すれば「法人番号公表サイト」で公表している「法人名」「本店所在地」の情報を自動的に補完入力する機能を追加することができます。これにより、誤入力等による問題が解消できるほか、入力作業の効率化にもなります。
(2)売掛金管理等、会計業務の効率化・自動化
法人番号付きで売掛金(売上台帳)の管理を行うと、法人番号をキーに取引先ごとの集計が容易になります。また、支店・出張所との取引であっても、本店と同一の法人番号であることから、取引先ごとの集計を確実に行うことができます。

 ◆国際的に利用可能な企業コードとしての法人番号

(1)電子商取引での活用例
各企業が、発番機関コードに法人番号を付加したものを共通の企業コードとして活用することで、各企業システム間のコード変換作業が不要となり、全体のコスト削減を実現することができます。
(2)電子タグの活用例
電子タグについては、出荷品や在庫などに、「カード型」「ラベル型」「ボタン型」「スティック型」など、様々な形状の電子タグを取り付けて無線で読み取ることで、在庫や場所を把握する技術が普及してきています。この電子タグに統一された企業コードを記録することで、物流の効率化や、電子タグの普及にもつながることが期待されています。

トラブルの多い「求人票への虚偽記載」で懲役刑を検討
 ◆法改正へ向けて秋以降に本格議論

厚生労働省の有識者検討会が、ハローワークや民間の職業紹介事業者に、労働条件を偽って求人を出した企業とその幹部に対する罰則を設けるべきとする報告書をまとめました。この罰則には懲役刑も含むものとされており、また、これまで規制のなかった求人情報提供事業者(求人雑誌等)についても、労働条件の明示義務等のルールを定めることが必要だとされています。現在、企業が自社のホームページ等で虚偽の労働条件を掲載し、直接採用した場合には罰則(6月以下の懲役または30万円以下の罰金)の適用がありますが、ハローワーク等に虚偽の求人を出しても罰則はありません(ただし、是正指導が行われることはあります)。今秋以降の労働政策審議会で議論され、職業安定法の改正が行われるようですので、注目しておきましょう。

 

◆トラブルは増加傾向にある

厚生労働省のまとめによると、ハローワークの求人票に関する苦情・相談は、平成27年度は1万937件と、前年度よりは10%ほど減少しましたが、調査が始まった平成24年度の調査開始からみると増加傾向にあり、内容としては「賃金」「就業時間」「職種・仕事内容」をめぐるトラブルが多くなっています。また、「求人票の内容が実際の労働条件と異なる」ことを要因とした相談等は3,926件(36%)あり、次いで「求人者の説明不足」が2,540件(23%)で、これらで約6割を占めています。中には、こうしたトラブルが訴訟に発展するケースもあるようです。

 ◆求人申込書の記載にあたっての注意点

求人票やハローワークのインターネットサイトに掲載される情報のもととなる「求人申込書」の記載については、別の注意点もあります。全般的な書き方については冊子でまとめられていますが、これとは別にこのほど「固定残業代の表示」に関するパンフレットが公表されました。求人申込書の賃金欄について 、固定残業代制を採用する場合は「固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法」、「固定残業代を除外した基本給の額」、「固定残業時間を超える時間外労働」、「休日労働および深夜労働分についての割増賃金を追加で支払うこと」などを明示することが必要であり、基本給には固定残業代などの各種手当は含めない等の留意点が記載されています。意図せずにブラック企業とのレッテルを貼られることのないよう求人情報の記載には注意が必要です。

セクハラ指針の一部改正で「LGBT」に関する内容が明記されます!
 ◆企業に求められるLGBT対応

近年、人権保護の観点からはもちろん、リスク対応や優秀な人材の確保といった観点から、企業においてもLGBTへの理解と対応が求められてきています。ここでいう「LGBT」とは、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)といった性的少数者のことであり、2015年に電通総研が行った調査では、人口の7.6%がLGBTであると発表されています。そのよう中、厚生労働省は、いわゆる「セクハラ指針」(事業主が職場における性的言動に起因する問題に関して雇用管理上構ずべき措置について)の改正を行い、企業にLGBTなどの性的少数者へのセクハラにも対応する義務があることを明文化する方針を固めました。

 ◆職場におけるセクシュアルハラスメントの対象者の明確化

労働政策審議会(雇用均等分科会)の中で示された「事業主が職場における性的言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針の一部を改正する告示案」では、「従来より、職場におけるセクシュアルハラスメントについては、被害者の性的指向や性自認は問わないものであるが、それが周知徹底されていないとの声が近年多くなっている。これを踏まえて、被害を受ける者の性的指向や性自認にかかわらず、これらの者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、セクハラ指針の対象となる旨を明確化する改正を行うこととする。」とされました。現在でも性的少数者は指針の対象となっていますが、明文化はされていませんでした。セクハラ指針の2(1)に、「被害を受けた者の性的指向や性自認にかかわらず対象となる」と新たに明記することで、さらなる周知徹底を図るねらいがあるようです。

 ◆施行日について

上記指針は平成29年1月1日より改正される予定ですので、社内のセクシュアルハラスメント防止規程の見直しや社員への周知等、LGBT対応が必要になってきます。

厚労省の調査結果にみる「障害者の就労」の実態
 ◆障害者の就職者数が過去最高を更新

厚生労働省が「平成27年度 障害者の職業紹介状況等」を公表し、ハローワークを通じて就職した障害者が9万191人(前年度比6.6%増)と7年連続で増加し、過去最高を更新したことがわかりました。また、就職率(就職件数/新規求職申込件数)も48.2%(同1.0%増)と上昇しました。

 ◆精神障害者の就職件数が大幅増加

就職者の内訳をみると、精神障害者が3万8,396人(同11.2%増)、身体障害者が2万8,003人(同0.6%減)、知的障害者が1万9,958人(同6.6%増)、発達障害者などは3,834人(同21.1%増)となっており、精神障害者の就職件数が大幅に増加しています。この理由として、昨年4月より法定雇用率(2.0%)を達成していない場合に納付金を徴収する企業の対象が従業員200人超から100人超に対象が拡大したこと、平成30年度には障害者雇用促進法の改正に伴い精神障害者を法定雇用率の算定対象に含めることが挙げられます。

 ◆医療・福祉や製造業への就職が多い

調査結果を産業別にみると、「医療・福祉」への就職者が最も多く3万3,805人(37.5%)、2番目は「製造業」の1万1,933人(13.2%)、3番目は「卸売・小売業」の1万1,577人(12.8%)となっています。さらに「サービス業」、「運輸、郵便業」と続いています。また、職業別では、「運輸・清掃・包装等の職業」が3万1,393人(34.8%)で最も多く、以下、「事務的職業」(1万8,469人、20.5%)、「生産工程の職業」(1万1,599人、12.9%)、「サービスの職業」(1万819人、12.0%)となっています。

 ◆企業の理解や雇用環境の改善が必要

厚生労働省では、「好調な雇用状況を背景に障害者の求職意欲は増しているため、企業の理解をさらに進めるとともに、障害者が働きやすいよう雇用環境の改善を図りたい」としています。また、法定雇用率未達成企業の民間企業に対して達成を実現させるよう指導を行い、関係機関と連携して障害者雇用のための支援を行うとしています。