2016年3月号

重要改正事項目白押し! 雇用保険法等の改正で実務はどう変わる?
◆1月下旬に国会上程

「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が1月29日に国会に上程されました。これにより、雇用保険法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法等の改正が予定されています。雇用保険の適用対象者が拡大されるなど、企業にとって影響のある改正になります。具体的な改正事項として下記の項目が盛り込まれています。

 ◆失業等給付に係る保険料率の見直し

失業等給付に係る雇用保険料率の引下げ(改正前1.0%→改正後0.8%)が行われます。(施行:平成28年4月1日)

 ◆育児休業・介護休業等に係る制度の見直し

多様な家族形態・雇用形態に対応するため、(1)育児休業の対象となる子の範囲の拡大(特別養子縁組の監護期間にある子等)、(2)育児休業の申出ができる有期契約労働者の要件(1歳までの継続雇用要件等)の緩和等が行われます。(施行:平成28年4月1日)
介護離職の防止に向け、(1)介護休業の分割取得(3回まで、計93日)、(2)所定外労働の免除制度の創設、(3)介護休暇の半日単位取得、(4)介護休業給付の給付率の引上げ(賃金の40%→67%)等が実施されます。(施行:平成29年1月1日、介護休業給付の給付率の引上げは平成28年8月1日)

 ◆高年齢者の希望に応じた多様な就業機会の確保および就労環境の整備

65歳以降に新たに雇用される者も雇用保険の適用対象となります(保険料の徴収に関しては平成31年度分まで免除)。(施行:平成29年1月1日)
シルバー人材センターにおける業務について、都道府県知事が市町村ごとに指定する業種等においては、派遣・職業紹介に限り週40時間までの就業が可能になります。(施行:平成28年4月1日)

 ◆妊娠した労働者等の就業環境の整備

妊娠、出産、育児休業・介護休業等の取得等を理由とする上司・同僚等による就業環境を害する行為を防止するため、事業主に雇用管理上必要な措置が義務付けられます。(施行:平成29年1月1日)
その他、雇用保険の就職促進給付の拡充(再就職手当の給付率の引上げ等)が予定されていますので、企業としては今後、規定変更などの実務対応が必要となってきます。

社長の平均年齢が高い業種・都道府県は?
◆社長の年齢と交代状況を調査

帝国データバンクから「2016年全国社長分析」が発表されました。
これは、同社が保有する2015年12月末時点の企業概要ファイル(約146万社収録)から、株式会社および有限会社114万9,108社のデータを抽出して調査を行ったものです。

 ◆社長の平均年齢は?

全国の社長の平均年齢は「59.2 歳」で、過去最高を更新しました。1990 年以降一貫して上昇を続けており、着実に高齢化が進んでいます。業種別に見ると、最も高かったのは「不動産業」(61.1 歳)で、以下、「製造業」(60.7歳)、「卸売業」(60.2 歳)が続いています。年代の分布を見ると、「不動産業」では70 代・80 代の社長が他業種に比べ多いことが平均年齢の高さに繋がっています。また、「製造業」では30 代・40 代の社長が少ない傾向が見られます。都道府県別に見ると、最も平均年齢が高かったのは岩手県(61.3 歳)で、最も低かったのは滋賀県(57.8 歳)となっています。

 ◆社長の交代率は?

社長交代率(=1 年の間に社長の交代があった企業の比率)は「3.88%」となり、3 年連続で前年を上回っており、リーマン・ショック以来低下傾向にあった交代率は回復の兆しが見え始めています。また、2015 年に社長交代を行った企業の前代表の年齢は、平均で67.0歳となっています。

 ◆廃業か?事業承継か?

同社が行った別の調査では、休廃業・解散した企業の代表者の年齢は60 代が最多、続いて70 代となっており、社長の年齢が60 代後半に差し掛かったタイミングでの事業承継か、その前後で休廃業・解散を選択する企業が多いことが明らかになっています。中小企業では、以下にスムーズに事業承継を行うかが重要なポイントとなっています。

 

厚労省が「厚生年金加入状況」について緊急調査を実施へ
 ◆発端は「平成26 年国民年金被保険者実態調査結果」

厚生労働省が昨年12月25日に公表した国民年金被保険者実態調査の「参考:厚生年金保険の適用にかかる粗い推計」にて、国民年金第1号被保険者の就業状況を基に、厚生年金の適用の可能性がある者が、法人で約180万人、個人経営の事業所で約20万人、合計約200万人程度いることが、初めて具体的に示されました。20~30代の若年層の割合が高かったことから、将来、低年金・無年金に陥る可能性があるとして問題視されることとなりました。

 ◆厚生年金加入指導はより厳しく?

現在、加入指導は、国土交通省と厚生労働省が取り組む建設業の社会保険加入促進や算定基礎届の提出時期に行われる年金事務所の定時決定時調査、国税庁から提供を受けたデータに基づくものなどにより行われています。指導により適用事業所となった事業所数も、平成24年度約8,000件、25年度1万9,099件、26年度3万9,704件と増加しています。27年も4月から11月末までの間に6万3,000事業所が加入指導、適用を受けています。
今後は、3月頃に国税庁から法人番号を添えた法人情報の提供を受け、約79万事業所に調査票を送付し、従業員数や労働時間等を確認して実態把握に当たるとしています(2月5日衆議院予算委員会塩崎厚生労働大臣答弁)。

 ◆パートの適用漏れは特に注意

各種報道に限らず、未加入事業所に厳しい姿勢で臨むべきとの声があります。今年1月26日の安倍首相の国会答弁では「厚生年金等に加入していないことをもって事業所名を公表する考えはない」としていますが、今年10月からの一部のパート労働者等への社会保険適用拡大もあり、適正に加入させているかがより厳密に調査される可能性があります。年金事務所の定時決定時調査では、適用要件を満たすパート等の加入漏れが多く指摘されていることから、自社の加入状況を確認し、不安があれば社会保険労務士に相談することをお勧めします。

 

「ストレスチェック制度」で気を付けたい労基署への報告
 ◆50人以上の事業場に義務付け

労働安全衛生法に基づく「ストレスチェック制度」が昨年12月1日に施行され、従業員50人以上の事業所には、労働者の心理的な負担の程度を把握するための、医師または保健師による検査(ストレスチェック)を行うことが義務付けられています。なお、ストレスチェックの実施状況について労働基準監督署への報告が必要とされています。

 ◆最新の更新内容

厚生労働省ホームページには「ストレスチェック制度Q&A」が掲載され、実施に際して迷いやすい点などがまとめられています。この内容は度々更新されており、最新版(2月8日更新)では新たに7つのQ&Aが追加されましたが、特に注目すべきは「労働基準監督署への報告」に関する項目が多く追加されたことです。いくつか抜粋してご紹介します
Q19-8 労働基準監督署への報告方法について、全社員を対象に、年に複数回ストレスチェックを実施している場合、どのように報告すればよいのでしょうか。実施の都度報告するのでしょうか。
A 労働基準監督署への報告は、1年に1回、法令に定められている事項の実施状況を報告していただくためのものですので、全社員を対象に複数回実施している場合は、そのうち1回分について報告していただくようお願いします。実施の都度、複数回報告していただく必要はありません。
Q19-9 労働基準監督署への報告方法について、部署ごとに実施時期を分けて、年に複数回ストレスチェックを実施している場合、どのように報告すればよいのでしょうか。実施の都度報告するのでしょうか。
A 1年を通じて部署ごとに実施時期を分けて実施している場合は、1年分をまとめて、会社全体の実施結果について報告していただく必要があります。実施の都度、複数回報告していただく必要はありません。ご報告いただく際、「検査実施年月」の欄には、報告日に最も近い検査実施年月を記載いただくようお願いします。
Q19-10 労働基準監督署への報告様式の記載方法について、在籍労働者数は、どの数を記載すればよいのでしょうか。派遣労働者やアルバイト・パートも含めた全ての在籍従業員数でしょうか。
A 労働基準監督署への報告は、法令に定められている事項の実施状況を確認するためのものです。したがって、労働基準監督署に報告いただく様式の「在籍労働者数」の欄に記載するのは、ストレスチェックの実施時点(実施年月の末日現在)でのストレスチェック実施義務の対象となっている者の数(常時使用する労働者数)となります。