2019年8月

副業制度をどうしますか?

 

◆骨太方針にも明記された副業・兼業の促進

政府がまとめた「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太方針)にも、副業・兼業の促進に関して、労働時間の把握・通算に関する現行制度の適切な見直しについて明記されています。副業・兼業が珍しいものでなくなる時代が、すぐそこまで来ているようです。

いくつかの調査結果から、企業側・従業員側の現状・意向が垣間見られます。

 

◆従業員側の現状・意向

2019年度の新入社員は、会社に副業制度があった場合、64.0%が利用したいまたはどちらかといえば利用したいと考えているようです(産業能率大学総合研究所「2019年度新入社員の会社生活調査」)。

また、有職者の58.1%が、副業をしている・したいとの調査結果もあります(インテージリサーチ「副業に関する意識調査」)。なお、この調査はアンケートモニターやネットオークション等のどちらかというと軽い副業も含まれているようです。具体的に副業や副収入を得ることを意識した活動を実際にしている人が約19%、今後してみたいと思っている人が約40%ですので、まだそれほど実際に副業をしている人は少ないようです。

 

◆企業側の現状・意向

一方、副業制度の導入状況は、約8割の企業が未導入だとしています。制度のある企業でも利用率が50%以下となっている企業が9割を占めるようです(産業能率大学「2019年中小企業の経営施策」)。現状では、人材不足で本業で手一杯というところでしょうか。

また、別の調査(パーソル総合研究所「副業実態・意識調査結果(企業編)」)では、副業を認めている企業(条件付きを含む)も、全面禁止としている企業もそれぞれ50%となっています。副業を許可している企業でも、ここ3年以内に許可を開始した企業が52%となっており、副業許可の動きが増加傾向にあることがわかります。

さらに、副業を全面許可した企業では、条件付きでの許可よりも会社へのロイヤリティ、本業のパフォーマンスが高まることがわかり、メリットは大きいとしています。

そうしたメリットは、会社による副業時間の把握、副業のやり方等についてのアドバイス、社内ツールを使用した全社への共有を行うことで効果が高まるという結果が出ており、従業員任せではなく、企業が積極的に対策を行い、副業をバックアップすることが重要なようです。

 

学生アルバイトがすぐに辞めない職場とは~マイナビ調査から

 

◆意外に長い?学生アルバイトの勤務期間

人手不足の昨今、せっかく採用したアルバイトがすぐに辞めてしまう、というのは企業にとって痛手です。とくに、学生アルバイトは長続きしない、というイメージを持つ企業担当者も多いのではないでしょうか。そこで、実際はどうなのか、株式会社マイナビが大学生に意識調査を実施しました。「これまでのアルバイトの中で、一番長く続いた勤務期間は?」という問いに対し、「25カ月以上」と答えた人が最も多く、次いで10~12カ月、24カ月という回答が続きました。全体の平均としては、20か月でした。さらに、4年生に結果を絞ると、平均30か月になり、大学生活のほとんどの期間で同じアルバイトを続ける人が多いということがわかります。

 

◆重視されるポイントは?

では、学生がアルバイトを探す際に見るポイント、そして長く働き続けたいと思うポイントはどのようなものでしょう。学生が「アルバイトを決める際に重視している点」を尋ねた結果、以下に重点を置いていることがわかりました。

・シフト・時間の融通がきくこと(54%)

・自宅から近いこと(50.9%)

・人間関係がよい職場であること(49.9%)

・時給が高いこと(49%)

もっとも重視する学生が多いのは、シフト・時間の融通のききやすさです。また、職場の雰囲気も重視されています。具体的には、人間関係がよい、楽しく仕事ができる、相談しやすい上司がいるなどです。彼らの希望に柔軟に対応し、働きやすいと感じてもらうことがポイントです。

 

◆職場環境を整えることで生み出される好循環

継続勤務期間の調査結果から、学生アルバイトは、満足した環境であれば継続して働くということがわかりました。そして、彼ら自身は、自分が長期的にアルバイトするために必要な条件をしっかり認識しており、それが満たされる職場を選択しています。採用活動や新人指導には、時間もコストがかかります。アルバイトの募集に反応がない、採用しても定着しないという場合は、彼らが求める職場の条件に合致しないと判断されている可能性があります。学生アルバイトが求めている条件を知り、対応することで、彼らが長く勤められる環境が作れます。また、それをアピールすることで、おのずと人の集まりやすい職場になっていくでしょう。職場環境を整え、人材確保のための好循環を作りましょう。

【マイナビ「大学生のアルバイト実態調査」】https://www.mynavi.jp/news/2019/04/post_19843.html

 

令和2年1月から労働社会保険の届出がワンストップで可能に

 

◆届出の契機が同じものは1回で

労働社会保険手続のルールが変わります。健康保険、厚生年金保険、雇用保険等の適用事務に係る事業主の事務負担の軽減および利便性の向上のため、健康保険法等に基づく手続きのうち届出契機が同一のものを一つづりとした届出様式(「統一様式」)を設け、統一様式を用いる場合はワンストップでの届出が可能となります。

現在、令和2年1月1日の施行に向けて省令の整備が進められています。

 

◆改正の内容

次の①~④に掲げる届書については、届出契機がそれぞれ同一であることから、同一の契機で届出を要する届書の届出先を経由して届出できるものとされます。

①    健康保険法および厚生年金保険法に基づく「新規適用届」、雇用保険法に基づく「適用事業所設置届」並びに労働保険の保険料の徴収等に関する法律に基づく「労働保険関係成立届」

②    健康保険法および厚生年金保険法に基づく「適用事業所廃止届」並びに雇用保険法に基づく「適用事業所全喪届」

③    健康保険法および厚生年金保険法に基づく「資格取得届」並びに雇用保険法に基づく「資格取得届」

④    健康保険法および厚生年金保険法に基づく「資格喪失届」並びに雇用保険法に基づく「資格喪失届」

 

◆「労働保険関係成立届」に関する改正省令案を諮問

上記の届出のうち「労働保険関係成立届」に関する改正省令案が去る6月、労働政策審議会に諮問されました。

その内容は、徴収法第4条の2に規定する労働保険関係成立届について、対象事業(※)の事業主が、健康保険法および厚生年金保険法上の「新規適用届」または雇用保険法上の「適用事業所設置届」に併せて提出する場合においては、年金事務所、労働基準監督署または公共職業安定所を経由して提出することができるものとする、というものです。

※本省令改正により、年金事務所、労働基準監督署または公共職業安定所を経由して届け出ることができる事業は、一元適用の継続事業(個別)とされます。

この場合において、事業主が提出する概算保険料申告書についても同様に、年金事務所、労働基準監督署長または公共職業安定所長を経由して提出することができるものとされます。

なお、今回省令案が公表されたのは保険関係成立届のみでしたが、これ以外の適用事業所の設置・廃止の届出、被保険者資格の資格・喪失の届出についても来年1月の施行に向けて順次公表されると思われます。効率化の波に乗り遅れないようにしたいですね。

 

外国人労働者と労働災害

 

◆増加する外国人労働者

日本で働く外国人の数は約146万人(2018年10月末時点、厚労省)で、日本人の総労働人口が約6,898万人(2019年5月時点、厚労省)であることから、日本で働く48人に1人が外国人という計算になります。その外国人の割合は年々増加し、それに伴って外国人の労働災害も7年連続で増え続け、2018年には2,847人と過去最高を記録しました。

◆外国人労働者と労災保険

労災保険は、国籍を問わず、日本で働く労働者に適用されます。就労資格を持った外国人はもちろん、アルバイトをしている留学生も、就労中に事故にあった場合に適用されます。また、不法就労であっても適用されます。労災保険未加入で労働者が給付金を申請した場合、重大な過失であれば40%、故意であれば100%雇用主に請求されます。

◆外国人労働者が受けられる給付の内容

基本的には、日本人が受けられる給付内容と同じですが、給付中に本国に帰国してしまった場合に注意が必要です。

日本国内に限られる主な支援制度としては、アフターケア、義肢等舗装用具の支給(車椅子など支給可能な場合もあり)、外科後処置、労災就学等援護費(日本国内の学校に通っている場合)があげられます。

日本以外から保険給付額を請求する場合の支給額は、支給決定日における外国為替換算率(売りルート)で換算した邦貨額となります。また、海外で治療を受けた場合、治療の内容が妥当なものと認められれば、治療に要した費用が支給されます。

詳しくは、「労災保険給付のためのガイドブック」~日本で働く外国人向けを参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/161108-21.pdf

◆労働災害が発生してしまったら

労働災害等により労働者が死亡または休業した場合には、遅滞なく、「労働者私傷病報告」を労働基準監督署長に提出する必要があります。報告しない場合や虚偽の報告をした場合には、刑事責任が問われることがあります。

◆外国人労働者向け安全衛生教育

厚労省は、日本の労働慣行や日本語に習熟していない外国人向けに、中小規模の企業が外国人を雇い入れる時や作業の内容を変更する時等に役立つ安全衛生教育マニュアルを、業種別、外国語別で作成しています。ぜひ活用しましょう。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118557.htm