2021年1月

雇用調整助成金の今後について

 

◆来年2月いっぱいで現行の特例措置は終了予定

新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金の特例措置として、令和3年2月末まで日額上限額の引上げ等がされていますが、3月以降段階的に縮減し、5~6月にリーマンショック時並みの特例とするとの方針が、今月8日にまとめられた総合経済対策で表明されています。

そして、令和3年1月末および3月末時点の感染状況や雇用情勢が大きく悪化している場合、感染が拡大している地域・特に業況が厳しい企業について特例を設ける等、柔軟に対応するとされています。

 

◆3月以降の雇用調整助成金の特例措置はどうなる?

参考としてリーマンショック時の主な特例措置の内容を紹介すると、次のとおりです(実施時期にはばらつきがあります)。

(1) 助成率:中小企業 4/5、大企業 2/3(コロナ特例措置では雇用を維持している場合、中小企業10/10、大企業3/4)

(2) 生産指標要件:最近3カ月の生産量等が直前3カ月または前年同期と比べて原則5%以上減少(コロナ特例措置では1カ月5%以上減少)

(3) 対象被保険者:被保険者期間6カ月未満の者も助成(コロナ特例措置では緊急雇用安定助成金により被保険者でない労働者も助成)

(4) 支給限度日数:3年300日(コロナ特例措置では令和2年4月1日から令和3年2月末までの期間+1年100日、3年150日)

 

◆3月以降は在籍型出向による雇用維持支援にシフト

総合経済対策では、「産業雇用安定助成金(仮称)」を創設し、出向元と出向先の双方を支援するとともに、出向元企業への雇用調整助成金による支援、労働移動支援助成金による受入れ企業への支援も引き続き実施するとされています。

現在従業員を休業させ雇用調整助成金を活用している企業においては、上記のような変更への対応を検討しておく必要があるでしょう。

 

◆人手不足企業向けには新たな雇入れ助成も

コロナ禍による離職者等で、就労経験のない職業に就くことを希望する求職者を一定期間試行雇用する事業主に対する賃金助成制度(トライアル雇用助成金)を創設するとともに、紹介予定派遣を通じた正社員化(キャリアアップ助成金)を促進するとされています。

人手不足に悩んでいる企業においては、こうした制度の活用による人材確保も検討してみるのもよいかもしれません。

 

 

仕事・子育てへのコロナ禍の影響(連合調べ)

 

◆コロナ禍の働き方への影響

全回答者(1,000名)に、新型コロナウイルス感染拡大によって働き方にどのような変化があったか聞いたところ、「働き方に変化はない」が53.3%で最も高くなった一方、「テレワーク勤務を行うようになった」は24.6%、「時差出勤を行うようになった」は15.1%、「労働時間が減った」は14.8%、「労働時間が増えた」は5.9%、「副業・兼業をはじめた」は3.2%となりました。働き方に変化があったという人の中では、感染症対策として、テレワークや時差出勤を行うようになったという人が多いようです。年代別に見ると、「テレワーク勤務を行うようになった」と「時差出勤を行うようになった」は上の年代ほど高くなる傾向が見られ、最も高くなった50代では「テレワーク勤務を行うようになった」は37.8%、「時差出勤を行うようになった」は22.2%となりました。

 

◆コロナ禍による保育園・幼稚園休園時、日中の子どもの面倒は誰が見たか

コロナ禍により保育園や幼稚園が臨時休業となっていたときの子どもの世話の状況について聞きました。保育園・幼稚園に通っている子どもがいる人(828名)に、新型コロナウイルス感染拡大によって、保育園・幼稚園が休園になっていたとき、自身の家庭では、日中、誰が子どもの面倒を見ていたか聞いたところ、「自分」(60.9%)が最も高く、「配偶者・パートナー」(54.7%)、「自分や配偶者・パートナーの親」(18.4%)が続きました。男女別に見ると、男性では「配偶者・パートナー」(84.5%)、女性では「自分」(79.1%)が最も高くなりました。

では、日中に子どもの面倒を見ていたとき、どのように対応していた人が多いのでしょうか。日中の子どもの面倒を自身で見ていた人(504名)に、新型コロナウイルス感染拡大による保育園・幼稚園の休園時、日中の子どもの面倒を自身で見ていたとき、どのように対応したか聞いたところ、「在宅勤務を行った」(29.2%)が最も高く、次いで、「年次有給休暇を取得した」(25.0%)、「年次有給休暇以外の有給休暇を取得した」(18.7%)となりました。在宅勤務制度の活用や有給休暇の取得で対応していたという人が多いようです。男女別に見ると、男性では「在宅勤務を行った」が45.0%と、半数近くとなり、女性では「欠勤して対応した」が18.3%と男性(6.3%)の3倍になりました。

 

◆コロナ禍以降、子育てにかかわる時間は変わったか

コロナ禍は子育てにかかわる時間にどのような変化をもたらしたのでしょうか。全回答者(1,000名)に、新型コロナウイルス感染拡大以降、子育てにかかわる時間はどのように変わったか聞いたところ、「非常に増えた」は9.7%、「やや増えた」は38.1%で、合計した『増えた(計)』は47.8%、「以前と変わらない」は49.2%となりました。外出自粛や保育園・幼稚園の臨時休業などにより、子どもと一緒にいる時間が増え、育児に携わる時間が長くなったという人が多いのではないでしょうか。男女別に見ると、子育てにかかわる時間が増えた人の割合は、女性では51.8%と、男性(43.8%)と比べて8.0ポイント高くなりました。

 

リモートワークの実態は?

 

◆リモートワーク、どのくらいやってるの?

東京商工リサーチが実施したアンケート調査(11月実施、有効回答1万1,076社)の結果をみると、在宅勤務・リモートワークを「現在も実施している」企業は30.7%にとどまり、導入後に「取りやめた」企業は25.4%にのぼっているとのことです。

また、リモートワークを実施している企業について、従業員の何割が実施しているかを尋ねたところ、割合の大きい順に、「1割」29.80%、「2割」13.92%、「3割」12.85%、「10割」11.14%、「5割」10.95%という結果でした。業務がリモートに向かないというケースもあるのでしょうが、実態としてはこのような実施率のようです。

 

◆現役世代にとっての新型コロナ

現役世代での新型コロナによる死亡率も、日本では高くないのが実態のようです。新型コロナの死亡者の平均年齢は79.3歳で、ほぼ男性の平均寿命(80.98歳)と同じであり、健康寿命(男性72.14歳、女性74.79歳)との比較でみると男女とも死亡者の平均年齢のほうが上回っているという状況だそうです。

http://agora-web.jp/archives/2049200.html

経団連がコロナ対策のガイドラインを改訂し、出張について「見合わせ」から「注意」に変更するなど、不合理な対策は改めようという動きもある一方、まだまだ自粛一辺倒のような空気もあります。会社が立ち行かなくなっては元も子もありませんから、ワクチンの開発など期待せずに、感染の現状について自社で判断しながら、できることからやっていくしかないのでしょう。

 

◆雇調金などもあるけれど……

前述のアンケート調査では、「1年以内に廃業を検討する可能性がある」と回答した中小企業が42.2%に上っています。11月上旬時点の調査結果なので、第3波を迎えているとされる現時点では、増加している可能性もあります。

特例措置の期間が延長された雇用調整助成金などの利用も、一時的には考えられますが、いつまでも頼れるものではありません。

自粛継続によって経済がシュリンクし、自殺率が高まるなど、社会的な問題も深刻となりつつあります。医療崩壊を防ぐには、新型コロナを指定2類感染症としている取扱いの見直しも検討が必要かもしれません。経済回復との両立に向け、感染防止に向けた取り組みの再点検が求められます。

【株式会社東京商工リサーチ 第10回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査】

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20201125_01.html

 

 

コロナ禍の年末年始を
無災害で過ごすために確認しておきたいこと

 

◆コロナ禍の年末年始

今年も年の瀬が近づいてきました。大掃除や機械設備の保守点検・再稼働等の準備を始めた事業所も多いのではないでしょうか。

仕事に追われる年末は、慌ただしさから労働災害が増加します。今年はコロナ禍にあって感染症対策を講じながら年末年始を迎えることとなり、例年以上の慌ただしさが想定されます。作業前後、また作業中の事故などが起こることのないよう、改めて安全対策について見直しておきたいものです。

 

◆年末年始を無災害で過ごすための事業場の実施事項

令和2年12月1日から令和3年1月15日を実施期間として、今年も、中央労働災害防止協会(中災防)の主唱により、「年末年始無災害運動」が行われています。

同運動では、事業場の実施事項として、たとえば次の項目を挙げています。

□KY(危険予知)活動を活用した非定常作業における労働災害防止対策の徹底

□機械設備に係る一斉検査および作業前点検の実施

□安全保護具・労働衛生保護具、安全標識・表示等の点検と整備・更新

□転倒、墜落・転落、はさまれ・巻き込まれ災害防止や腰痛予防対策の徹底

□火気の点検、確認など火気管理の徹底

□交通労働災害防止対策の推進

□年末時期の大掃除等を契機とした5Sの徹底

□年始時期の作業再開時の安全確認の徹底

□新型コロナウイルス感染症、インフルエンザ等の感染症対策の徹底

これらも参考に、早めに対策を講じておきましょう。

 

◆無災害の心構え

中災防は、「一つひとつの作業を丁寧に確認し、次の作業に備えること、そして体調管理を万全にし、無理をしないことが大切」としています。作業前の点検の実施と手順・ルールの確認をしっかり行って、事故なく無事に1年を締めくくり、新しい年を迎えましょう。