2022年12月

雇用調整助成金の特例措置が終了します

 

◆12月以降は通常制度による支給となります

雇用調整助成金の支給上限額引上げや助成率引上げ、提出書類の簡素化等の特例措置が、有効求人倍率の回復等を理由に終了し、令和4年12月以降、通常制度による支給となります。そのため、1日あたり支給上限額は一律8,355円となります。

 

◆特に業績が厳しい事業主に対する経過措置が設けられます

ただし、特に業績が厳しい事業主については、令和5年1月31日まで1日あたり支給上限額を9,000円とする経過措置が設けられます。助成率も、令和3年1月8日以降解雇等を行っていない場合は10分の9(大企業は3分の2)となります。

 

◆令和5年2月以降はどうなる?

原則どおりの扱いとなりますが、クーリング期間制度が適用されずに再度の申請ができたり、申請書類が簡素化されたりする等の措置が、令和4年12月から令和5年3月の間、講じられます。

しかしながら、これまで新型コロナ特例を利用せず、令和4年12月以降新規に雇用調整助成金を利用する事業主は、経過措置ではなく通常制度による申請を行うため、生産指標の要件等、通常制度の要件に該当する必要があります。

 

◆令和4年12月から新たにコロナを理由として雇用調整助成金を申請する場合の要件緩和

その場合でも、令和4年12月1日から令和5年3月31日までの間、支給要件が一部緩和されます。具体的には、計画届の提出が不要とされたり、休業や教育訓練の延べ日数から時間外労働の日数を差し引く残業相殺が行われなかったりするほか、一部の労働者を対象とした短時間休業も助成対象となります。

【厚生労働省「令和4年12月以降の雇用調整助成金の特例措置(コロナ特例)の経過措置について(予定)」PDF】

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001008098.pdf

【厚生労働省「令和4年12月から新たにコロナを理由として雇用調整助成金等を申請する事業主のみなさまへ」PDF】

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001007940.pdf

 

有休取得率の上昇 かつてと今

 

厚生労働省の令和4年就労条件総合調査が公表され、令和3年の年次有給休暇の平均取得率は58.3%と、昭和59年以降では過去最高となったそうです。

労働者一人平均では17.6日の年次有給休暇が付与され、10.3日が取得されました。また、年次有給休暇の計画的付与制度がある企業割合は43.1%で、付与日数は「5~6日」という企業が71.4%と、最も多くなっています。

 

◆取得率上昇の背景は

今回、有休の取得率が最高となったのは、背景にコロナ禍があるのかもしれません。また、2019年4月の労基法改正により、年5日以上の有休取得が義務化されたことも大きいでしょう。

 

◆前回取得率が高まったのは平成3~4年ごろ

平成3~4年ごろの世界情勢としては、イラクのクウェート侵攻・湾岸戦争、ソ連の解体などがあり、国内ではフリーターの増加などが問題となっていたり、雇用過剰感が高まり失業者数が増加したりした時期です。こう見ると、景気の後退期に取得率が上昇するという見方もできるかもしれません。

また、昭和63年に労基法が改正(法定労働時間が1週40時間、1日8時間に)され、労働時間短縮の流れが続いている時期であったことも大きな要因でしょう。

 

◆前々回に高かったのは昭和59年ごろ

これまで取得率が最高だったのは、昭和59年ごろです。景気は比較的安定していたようです。この時期は週休二日制が拡大していく時期であったことが、取得率の高さの背景にあるかもしれません。

 

これらを見ると、昭和と平成以降とでは、世界が違っているような感じがしますが、背景に労働時間等に関する法律改正があることは共通しています。

年次有給休暇や労働時間に関する規定だけではなく、その他の規定についても、自社の就業規則や社内体制に昭和や平成の時代のものが残っていないか、一度チェックしてみましょう。見直しについては、弊所にお気軽にご相談ください。

【厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況」】

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/22/index.html

 

中小事業主も月60時間超えの時間外労働割増率が5割以上に

 

◆猶予措置の廃止

令和5年4月1日から、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率を「5割以上の率」とする規定が、中小事業主にも適用されることになりました。

もともと、使用者が時間外または休日労働させた場合には、2割5分以上5割以下の率で計算した割増賃金を支払わなければなりませんでしたが、2010年4月1日施行の改正により、月60時間を超えた場合は、5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないとされていました。

ただし、この改正は中小事業主(労働者の数が300人(小売業については50人、卸売業またはサービス業については100人)以下)である事業主には適用が猶予されていたのですが、令和5年4月1日からは適用されることになりました。

 

◆代替休暇の規定も適用

中小事業主にも月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率を5割以上の率とする規定が適用されることに伴い、「代替休暇」の規定も適用されることになります。

代替休暇とは、1カ月に60時間を超えて時間外労働を行わせた労働者について、労使協定により、法定割増賃金率の引上げ分の割増賃金の支払いに代えて、有給の休暇を与えることができるものです。

労使で協定すべき事項としては、月60時間を超えて労働させた時間数に対して、何時間の代替休暇を与えるかという計算方法や、代替休暇の単位(1日または半日)などがあります。

そのほか、制度の導入に際しては、個々の労働者が実際に代替休暇を取得するか否かは、労働者の意思によること、労使協定の締結により代替休暇を実施する場合には、代替休暇に関する事項を「休暇」として就業規則に記載する必要があることにも留意しましょう。

 

募集しても人が採れない? 中小企業の採用活動の現況

 

◆企業の採用活動は活発化している

人手不足の中で企業の採用活動が活発化しています。株式会社マイナビが実施した最近の「中途採用・転職活動の定点調査(2022年9月)」の結果でも、9月に中途採用活動を実施した企業は全体で39.8%、従業員規模別に見ると「51~300名」「301名以上」で約5割となり、ほぼすべての業種で採用活動実施率が前年同月比で増加しています。

 

◆人が採れない企業が2割

採用活動の活発化により、中小企業の新卒採用も厳しい状況となっているようです。日本商工会議所ならびに東京商工会議所が中小企業6,007社に実施した調査によれば、2021年度の新卒採用の状況について、募集した企業は51.0%で、そのうち「予定人数を採用できた」と回答した企業は45.6%にとどまり、約2割の企業が「募集したが、全く採用できなかった」(19.9%)と回答しています。

マイナビが2023年卒採用の内定状況と2024年卒採用の見通しなどをまとめた「2023年卒企業新卒内定状況調査」でも、24年卒採用は78.6%が実施する予定で、採用予定数を「増やす」とする企業も増加すると示されています。このような状況下で、今度も採用活動の激化は避けられないでしょう。

 

◆採用活動にも工夫が必要に

コロナによる影響でオンライン面接が普及するなど、採用を取り巻く状況も大きく変化しました。学生の採用活動における質問事項としてよく使われる「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)なども、コロナ禍でエピソードが少ない学生を困らせているという話も聞かれます。これまでの手法が必ずしもマッチしない状況の中で人材を獲得するためには、自社の採用手法に工夫を凝らし、他社と差別化していく取組みが必要になってくるでしょう。

【日本・東京商工会議所「人手不足の状況および新卒採用・インターンシップの実施状況に関する調査」】

https://www.jcci.or.jp/i/v2_20220928_chosakekka.pdf

【株式会社マイナビ「中途採用・転職活動の定点調査(2022年9月)」】

https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2022/11/202209_chuto_teiten.pdf

【株式会社マイナビ「2023年卒 企業新卒内定状況調査」】

https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2022/11/s-kigyonaitei-23-002.pdf