2023年1月

年金保険の標準報酬月額に関する特例措置が終了します

 

◆特例措置の内容

新型コロナの影響により事業所が休業し、従業員の報酬が著しく下がった場合に、健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額の等級を、通常の随時改定(4か月目に改定)によらず、翌月から改定可能とする特例措置が講じられています。

この特例措置による等級の引下げは給付額等に影響することから、改定を受けるにあたっては従業員の書面による同意が必要となっています。

 

◆令和4年12月で特例措置が終了

11月29日、この特例措置を令和4年12月で終了する通達が出されました。終了後の標準報酬月額の改定および決定については、「健康保険法及び厚生年金保険法における標準報酬月額の定時決定及び随時改定の取扱いについて」(昭和36年1月26日付け厚生省保険局長通知)等に基づき取り扱われることとなります。

 

◆令和4年10~12月の間で特例措置による改定を受ける場合の手続方法

改定を受ける場合は、事業主が、「被保険者報酬月額変更届(特例改定用)」に申立書を添えて、急減月が生じた後、速やかに管轄の年金事務所へ提出します。

受付期間は、令和4年10月または同年11月を急減月とする届出が令和4年10月31日から令和5年1月末まで、また令和4年12月を急減月とする届出が令和4年12月26日から令和5年2月末までとされています。

なお、本特例措置の届出および申立書の内容が事実であることを確認できる書類については、事業所調査等により後日確認する場合があるので、届出日から2年間は保存を要します。

【厚生労働省「令和4年12月に新型コロナウイルス感染症の影響による休業に伴い報酬が急減した者等についての健康保険及び厚生年金保険の標準報酬月額の保険者算定の特例の延長並びに特例措置の終了について(令和4年11月29日年管管発1129第2号・年年発1129第1号)」】

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T221201T0030.pdf

【日本年金機構「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業で著しく報酬が下がった場合における、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額の特例改定の期間が延長されることになりました」】

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2022/202210/20221011.html

 

 

賃金引上げ等の実態に関する調査結果が公表されました

 

◆「賃金引上げ等の実態に関する調査」

厚生労働省は、令和4年「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果を公表しました。この調査は、全国の民間企業における賃金の改定額、改定率、改定方法などを明らかにすることを目的に、例年7月から8月にかけて行われています。調査の対象は、常用労働者100人以上を雇用する会社組織の民営企業で、令和4年は3,646社を抽出して調査を行い、2,020社から有効回答を得ています。

 

◆賃金を引き上げる企業が85.7%

令和4年中における賃金改定の実施状況をみると、1人平均賃金(注)を引き上げた・引き上げる企業の割合は85.7%(前年80.7%)となり、3年ぶりの増加となりました。産業別にみると、「学術研究、専門・技術サービス業」が95.7%、次いで「建設業」が95.4%と高くなっています。また、賃金の改定状況をみると、1人平均賃金の改定額は5,534円(前年4,694円)、1人平均賃金の改定率は1.9%(同1.6%)でした。

(注)1人平均賃金とは、所定内賃金(諸手当等を含むが、時間外・休日手当や深夜手当等の割増手当、慶弔手当等の特別手当を含まない)の1か月1人当たりの平均額をいいます。

 

◆業績を踏まえつつ、労働力の確保を

調査では、賃金改定の決定時に重視した要素として、「会社の業績」(40%)、次いで「労働力の確保・定着」(11.9%)が挙げられています。業界内・他企業の動向も踏まえつつ、賃上げ要請に対する自社の戦略を立てていくことが必要となるでしょう。

【厚生労働省「賃金引上げ等の実態に関する調査:結果の概要」】

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/22/index.html

 

 

「冬期型災害」に気をつけよう!冬の転倒災害対策

 

◆冬は労働災害が多発する季節

冬期は、凍結による転倒、自動車のスリップや視界不良による交通事故、除雪・雪おろし作業に伴う墜落・転落・腰痛、暖房器具等による一酸化炭素中毒など、特有の労働災害(冬期型災害)の発生が懸念されます。特に転倒災害が多発するために、冬は労働災害が最も多く発生する季節といわれていますから、寒さが厳しくなる前に、対策を講じておきたいものです。

 

◆事業場で取り組む転倒災害対策

まずは、職場巡視等を行って、事業所内の危険箇所を把握・特定しましょう。

凍結が起こりやすいのは、駐車場、屋外通路、建物出入口です。このような箇所には、表示などを行って危険を「見える化」するとともに、たとえば雪や水分を拭き取るためのマットを設置するなど、対策を講じます。

特に危険なのは、「雪が踏み固められた箇所」です。降雪時には、雪が積もったままにならないようにする必要があります。把握しておいた危険箇所について、除雪や凍結防止対策(融雪剤や砂の散布等)を行うことで、転倒のリスクを減らすことが可能となります。必要な用具は早めに確保しておくとともに、除雪作業等を行う場合の墜落・転落、転倒、はさまれ・巻き込まれ災害等の危険性も事前に特定しておきましょう。

 

◆従業員の安全意識も大切

冬の転倒災害は、従業員の意識によっても回避することができます。水濡れをそのままにしておくことが凍結に、ひいては転倒事故につながりますから、4S(整理・整頓・清掃・清潔)を徹底し、水濡れはすぐに拭くように意識づけしておきましょう。また、滑りにくい靴を履く、時間に余裕を持った行動を心がけ小さな歩幅でゆっくりと歩く、転倒時の怪我を軽減するために両手はあけておくなど、「冬の歩き方」について注意喚起するのも有効です。

事業所全体の安全に対する意識を向上させることにより、冬の労災事故の防止に努めましょう。

 

賃金のデジタル払いを可能にする改正省令が公布され、同意書の様式例も公表されました

 

厚生労働省は令和4年11月28日、賃金のデジタル払い(資金移動業者の口座への賃金支払い)を可能とする「労働基準法施行規則の一部を改正する省令」を公布しました。

給与の振込先が拡大されるのは25年ぶりで、企業は、労使協定を締結したうえで労働者から同意を得れば、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への資金移動による賃金支払い(賃金のデジタル払い)ができるようになります。厚生労働省は同日、関係通達も発出し、労働者への説明事項などを記載した同意書の様式例も提示しました。施行は令和5年4月1日で、同日から資金移動業者の指定申請を受け付けます。

 

◆指定資金移動業者の破綻時には保証機関により労働者に口座残高の弁済が行われる

改正省令では資金移動業者の指定要件について厳しく定められており、賃金デジタル支払いはこれらの要件に係る措置が講じられた資金移動業者の口座に限り認められることとなっています。口座残高の上限を100万円とし、口座残高が100万円を超えた場合、その日のうちに100万円以下にする仕組みが必要です。また、指定資金移動業者の破綻時には、指定資金移動業者と保証委託契約等を結んだ保証機関により、労働者と保証機関との保証契約等に基づき、労働者に口座残高の弁済が行われることとなっているため、破綻したときの全額返済に向け、保証機関と契約しておく必要もあります。

 

◆労働者の同意を得る際の留意事項

企業が賃金のデジタル払いを実施するには、労働者の同意が必要です。同意を得る際は、資金移動を希望する賃金の範囲・金額や支払い開始希望時期、賃金移動業者の破綻時に弁済を受けるための代替銀行口座などを確認する必要があります。その際に用いられる様式例を通達の別紙で提示しています。

【厚生労働省「労働基準法施行規則の一部を改正する省令」】

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001017141.pdf

【厚生労働省「労働基準法施行規則の一部を改正する省令の公布について」】

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001017089.pdf

【厚生労働省「賃金の口座振込み等について」】

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001017090.pdf

【厚生労働省「資金移動業者口座への賃金支払に関する同意書」】

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001017091.pdf