2023年3月

3月からの協会けんぽの保険料率と4月からの雇用保険料率

 

◆令和5年3月分からの健康保険料

令和5年3月分(任意継続被保険者にあっては同年4月分)の都道府県単位ごとの保険料率が全国健康保険協会のホームページに公表されました。令和4年度から引上げとなった都道府県は13、引下げとなった都道府県は33、現状維持は1県です。東京都は10.00%になります(令和4年度9.81%)。 なお、40歳から64歳までの方に加算される介護保険料率は、1.64%から1.82%に変更になります。 【協会けんぽ「令和5年度保険料額表(令和5年3月分から)」】 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3150/r05/r5ryougakuhyou3gatukara/

◆雇用保険料率(令和5年4月1日~令和6年3月31日まで)

○一般の事業の雇用保険料率 労働者負担と事業主負担あわせて15.5/1,000となります(令和5年3月までは13.5/1,000)。失業等給付・育児休業給付の保険料率が労働者負担・事業主負担ともに5/1,000から6/1,000に変更になったことで上がりました。事業主のみ負担となる雇用保険二事業の保険料率については変更はなく、3.5/1,000です。 ○農林水産・清酒製造の事業、建設の事業 農林水産・清酒製造の事業の雇用保険料率は労働者負担と事業主負担あわせて17.5/1,000となります(令和5年3月までは15.5/1,000)。 建設の事業は労働者負担と事業主負担あわせて18.5/1,000となります(令和5年3月までは16.5/1,000)。 失業等給付等の保険料率が、一般の事業と同じく、労働者負担・事業主負担ともに上がりました(6/1,000から7/1,000に変更)。雇用保険二事業の保険料率(事業主のみ負担)に変更はありません(農林水産3.5/1,000、建設4.5/1,000)。 【厚生労働省「令和5年度雇用保険料率のご案内」】 https://www.mhlw.go.jp/content/001050206.pdf

2022年の企業倒産状況~東京商工リサーチ調査

 

◆倒産件数が3年ぶりに増加

東京商工リサーチの調査結果によると、2022年の全国の企業倒産件数(負債総額1,000万円以上)は6,428件(前年比6.6%増)で、2019年以来、3年ぶりに前年を上回りました。また、負債総額は2兆3,314億4,300万円(同102.6%増)と、前年(1兆1,507億300万円)の約2倍増となり5年ぶりに前年を上回りました。 最も負債額が多い倒産は、6月に簡易再生手続をしたマレリホールディングス(株)で、全体の48.5%(1兆1,330億円)を占めました。また、負債額が1億円未満の倒産は4,661件で、全体の72.5%を占めました。

◆業種別では?

産業別の倒産件数は、飲食業等の「サービス業他」が2,075件(前年比3.3%増)で最も多く、2年ぶりに前年を上回りました。このほかに、建設業、製造業、情報通信業、農・林・漁・鉱業、卸売業、運輸業が前年を上回りました。特に運輸業は、燃料の高騰や人手不足の影響等により324件(同35.5%増)で、7年ぶりに300件を超えました。

◆コロナ関連の倒産状況

2022年の新型コロナウイルス関連の倒産件数(負債1,000万円以上)は、2,290件(同36.7%増)でした。また、2月8日時点での新型コロナウイルス関連の経営破綻件数はすでに100件を超え、2020年からの累計で5,197件に達しました。 業種別では、来店客の減少、休業要請などで打撃を受けた飲食業が最多で821件、工事計画の見直しなどの影響を受けた建設業が602件、次いで、アパレル関連、飲食料品卸売業、宿泊業などが上位を占めています。 2020年、2021年は持続化給付金や新型コロナウイルス関連の融資による支援もあり、倒産件数は低水準となりました。しかし、昨年はコロナ融資の返済が本格化し、さらに円安・物価高が重なりました。今の状況では倒産件数は増えることが懸念されますが、今後の政府の支援の動向が注目されます。 【東京商工リサーチ「2022年(令和4年)の全国企業倒産6,428件」】 https://www.tsr-net.co.jp/news/status/yearly/2022_2nd.html 【東京商工リサーチ「2月のコロナ破たん、8日時点ですでに100件超え 累計は5459件に」】 https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20230208_07.html

中小企業の価格交渉・価格転嫁に関する最新の調査結果が公表されています

 

◆2022年9~10月の調査結果を公表

エネルギー価格や原材料費の高騰を受け、2021年9月より毎年9月と3月を「価格交渉促進月間」と設定し、所管庁では業界団体を通じた価格転嫁の要請等の実施とヒアリングを実施しています。 2月7日に経済産業省と中小企業庁が公表した最新の調査結果では、価格交渉・価格転嫁に消極的な企業の実名が初公表され、注目されています。

■直近6カ月間の価格交渉・価格転嫁の状況

中小企業庁の調査結果では、価格交渉について、約6割が「話し合いに応じてもらえた」と回答する一方、「全く交渉できていない」との回答も約1割存在します。 また、価格転嫁については、受注側中小企業のコスト上昇分に対して発注側企業がどれだけ転嫁に応じたかの割合を「価格転嫁率」として算出した結果が46.9%である一方、「全く価格転嫁できていない」との回答が約2割存在します。

■業種別価格交渉の状況

同調査結果では27業種を「価格交渉状況の業種別ランキング(価格交渉に応じた業種)」として順位付けしており、上位3業種は、1位が石油製品・石炭製品製造、2位が鉱業・採石業・砂利採取業、3位が卸売です。一方、下位3業種は、27位がトラック運送、26位が放送コンテンツ、25位が廃棄物処理です(ただし、廃棄物処理、放送コンテンツ業では「コストが上昇していないため、価格改定が不要」との回答割合が最も多い)。 経済産業省では、「今後、これらの結果を踏まえ、状況の良くない発注側の個別企業に対しては、下請中小企業振興法に基づく『指導・助言』の実施を検討するとともに、業種別の自主行動計画やガイドラインの拡大」に取り組むとしています。 【中小企業庁「価格交渉促進月間の実施とフォローアップ調査結果」】 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/follow-up/index.html

カスハラの放置は企業の責任を問われます

 

  昨年12月に公表された連合の調査結果によると、カスタマー・ハラスメントで一番多いのは「暴言」(55.3%)、次いで「説教など、権威的な態度」(46.7%)だそうです(「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」)。この調査は、18歳~65歳の被雇用者・フリーランスで、直近3年間で自身もしくは同じ職場の人がカスタマー・ハラスメントを受けたことがある人1,000名に質問を行ったものです。  

◆カスハラは増えている

人手不足によるサービスの変化・低下やコロナ禍を背景に、カスタマー・ハラスメントの発生件数が増えています。直近5年間で「発生件数が増えた」との回答が36.9%あったそうです。 カスハラが発生したきっかけとして、勘違いや嫌がらせ、商品・サービスへの不満もありますが、「制度上の不備」との回答が16.3%あったそうです。制度の不備とは、「不備な制度の放置」でもありますので、会社の責任という面が強いと思われます。

◆カスハラ放置の影響

どのようなきっかけのカスハラでも、それを放置していると会社の安全配慮義務違反を問われることにつながります。会社は、従業員の心身の安全を守る必要がありますが、この調査によると、カスハラ対応マニュアルの作成や研修を行っている会社は半数以下のようです。 カスハラにより、従業員のストレスが高まり心身に不調が発生し業務が行えなくなる、満足な対応が行えない会社の状況を見た他の従業員が辞めてしまう、そうした情報が広まり人材の採用ができない、といった悪循環が生まれます。 カスハラを放置しない、発生した場合のサポートを行うことについて、現場任せにせず、カスハラを容認しない方針を会社として対外的に発表する、社内規則を整備する、マニュアルを整備するといった対策について、会社は十分に検討して実施する必要があります。 【連合「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」】 https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20221216.pdf