2024年1月

“つながらない権利”によって勤務時間外の連絡を拒否したいと思っている人の割合は72.6%~連合の調査結果から
 

テレワークや副業などの広まりから働き方が柔軟になった一方で、勤務時間とプライベート時間の区別がつけづらくなってきています。連合が実施した、勤務時間外の業務上の連絡に関する意識や実態、“つながらない権利”に関する意識調査から注目すべき点をご紹介します。

 

◆調査結果のポイント

○「勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくることがある」72.4%

その頻度は、「ほぼ毎日」(10.4%)、「週に 2~3 日」(14.3%)、「月に2~3日」(12.1%)、「月に 1 日以下」(17.9%)。業種別にみると、[建設業](82.7%)が最も高く、次いで[医療、福祉](79.6%)、[宿泊業、飲食サービス業](78.0%)となっています。

○「勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくるとストレスを感じる」62.2%

また、その連絡の内容を確認しないと、内容が気になってストレスを感じると回答した人の割合も、60.7%ありました。同様に、取引先からの連絡については、59%の人がストレスと感じているようです。

○「“働くこと”と“休むこと”の境界を明確にするために、勤務時間外の部下・同僚・上司からの連絡を制限する必要があると思う」66.7%

また、「取引先からの連絡を制限する必要がある」と回答した人の割合も67.7%ありました。

○「“つながらない権利”によって勤務時間外の連絡を拒否できるのであれば、そうしたいと思う」72.6%

一方で、「“つながらない権利”があっても、今の職場では拒否は難しいと思う」と回答した人は62.4%いて、業種で見ると、[建設業](74.1%)が最も高く、次いで[宿泊業、飲食サービス業](73.2%)[医療、福祉](72.8%)となりました。

 

◆“つながらない権利”の法制化

勤務時間外に仕事上のメールや電話への対応を拒否できる権利、いわゆる「つながらない権利」は、日本では法制化されていません。法制化されたとしても、業種によっては、特殊性や緊急性によって、権利を十分に行使できない可能性もあります。また、拒否することによる勤務評価やキャリア形成への悪影響を心配する労働者もいます。

権利を行使したい反面、行使することによる不安を強く感じる人は多いでしょう。今後日本でどのように法整備されるのか、注目です。

【日本労働組合総連合会「“つながらない権利”に関する調査2023」】

https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20231207.pdf?6597

 

 

介護離職、支援制度利用の現状と対策の必要性

 

◆介護離職に関するアンケート結果

東京商工リサーチが行った「介護離職に関するアンケート」の結果によると、2023年8月までの1年間に介護離職が発生した企業は10.1%あったそうです。離職してしまった従業員の属性は、正社員が65.3%を占めています。

一般的には、50歳代から親の介護を担う必要が高まる傾向にあります。つまり、働き盛りの中堅以上の従業員が、介護のために離職してしまう可能性が高まるということです。

 

◆制度の利用状況

一方、同調査では、介護休業または介護休暇の利用状況についての結果も示されています。介護離職した従業員の半数以上(54.5%)が、介護休業または介護休暇を利用していなかったことがわかりました。

仕事と介護の両立支援をマニュアルなどで明文化している企業は50.2%あったとのことですので、従業員への制度周知や会社による利用の働きかけの不足、従業員が周囲に遠慮してしまい休暇が取りにくいといった状況がうかがえます。

 

◆育児・介護休業法の改正予定

2024年の通常国会で、育児・介護休業法の改正が予定されています。

従業員への介護に関する情報提供や制度選択の意向確認の義務化などが検討されているほか、休業制度の利用を促すための研修や相談窓口の設置を求めることも議論されるようです。

 

「介護のことは従業員個人の問題」という意識だったり、介護に限らずそもそも休暇が取りにくかったりというのでは人を採用できる会社にはなれない、という時代になっているようです。今後の法改正の動向も見ながら、従業員の介護離職による損失を防ぐ方策をしっかりと考えていきたいですね。

【東京商工リサーチ「介護離職に関するアンケート」調査】

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198090_1527.html

 

 

価格交渉促進月間(令和5年9月)のフォローアップ調査結果(速報版)が公表されました

 

 中小企業庁では、毎年3月と9月の「価格交渉促進月間」に合わせ、受注企業が、実際にどの程度価格交渉・価格転嫁できたかを把握するための調査を実施しています。

去る11月28日に、2023年9月の価格交渉促進月間における中小企業・小規模事業者の価格転嫁・価格交渉に関する調査結果が公表されました。

 

◆全体的な傾向

価格転嫁・価格交渉ともに、「コストが上昇していないため、価格転嫁は不要である」旨の回答の割合が、約2倍に増加しました。

 

◆価格交渉

①「発注企業からの交渉申し入れをきっかけに交渉が行われた」企業の割合が約2倍に増加、②また、「コストが上昇し、交渉を希望したが、交渉が行われなかった」企業の割合は減少という結果となり、価格交渉しやすい雰囲気が徐々に醸成されつつあります。

 

◆価格転嫁

 ①コスト全体の転嫁率は、前回調査と比較して微減し、45.7%となったものの、②「全く転嫁できなかった」または「コストが上昇したのに減額された」企業の割合は減少という結果となり、価格転嫁の裾野は広がりつつあります。

 

◆今後のスケジュール(予定)

 2023年12月以降に調査結果(確報版)が公表されます。

また、2024年1月に発注企業ごとの価格交渉・価格転嫁の評価を記載したリストを公表し、評価が芳しくない企業に対する、所管大臣名による指導・助言が行われることとされています。

【経済産業省「中小企業の価格転嫁に関する調査結果(速報版) 価格交渉促進月間(2023年9月)フォローアップ調査」】

https://www.meti.go.jp/press/2023/11/20231128005/20231128005.html

 

 

賃金改定率が過去最高に~厚生労働省実態調査から

 

◆賃上げ実施企業、引上げ額、引上げ率ともに昨年より増加

厚生労働省の令和5年「賃金引上げ等の実態に関する調査」結果によると、1人当たりの平均賃金を引き上げた、または引き上げる企業の割合は89.1%(前年同比3.4ポイント増)、1人当たりの平均賃金の引上げ額は9,437円(同3,903円増)となりました。平均賃金の引上げ率は3.2%(同1.3ポイント増)で、平成11年以降で最も高い数値となりました。

同調査は、常用労働者100人以上を雇用する会社組織の民営企業を対象とし、3,620社を抽出して1,901社から有効回答を得たものです。

産業別にみると、平均賃金を引き上げた、または引き上げる企業の割合は、「建設業」が100.0%で最も高く、次いで「製造業」が97.7%、「電気・ガス・熱供給・水道業」が92.9%となっています。

平均賃金の引上げ額は、「鉱業、採石業、砂利採取業」が18,507円(引上げ率5.2%)で最も高く、次いで「情報通信業」が15,402円(同4.5%)、建設業12,752円(同3.8%)となっています。

 

◆すべての企業が業績好調による賃金引上げとは限らない

賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素の割合をみると、「企業の業績」が36.0%で最も多く、次いで「労働力の確保・定着」が16.1%、「雇用の維持」が11.6%となっています。

本調査結果の通り、近年、賃金引上げを実施する企業が増加しています。その理由として、物価上昇への対応や従業員のモチベーション向上、人材確保・定着などが挙げられます。しかし、賃金引上げを実施するすべての企業が業績好調による引上げとは限らず、業績は改善しないが従業員の生活を守り、人材流出を防ぐことを狙いとして実施する企業も多いと考えられます。賃金引上げを実施する際には、政府が掲げている賃金引上げに向けた各種支援策等を参考にしながら慎重に検討する必要があるでしょう。

【厚生労働省「令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」】

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/23/dl/10.pdf