2023年12月

「人事制度や雇用慣行を変える必要性がある」と感じている企業は61.5%~リクルート「企業の人材マネジメントに関する調査2023人事制度/人事課題編」より

 

デジタルテクノロジーの発展や、消費者ニーズの多様化、また予期せぬパンデミックの発生等で、ビジネスを取り巻く環境は、とてつもないスピードで変化しています。株式会社リクルートが人事制度や人材の活用をテーマとしたアンケート調査を人事担当者向けに実施し、その結果が公表されました。従業員規模30人以上の企業に勤める2,761人が集計対象となっています。

 

◆調査結果のポイント

○「事業戦略やビジネスモデルを変化させる必要性を感じている」…60.0%

○「3年前と比較して人事管理や人材活用の難易度が高まったと感じている」…34.6%

○「人事制度や雇用慣行を変える必要性を感じている」…61.5%

その理由として、①既存従業員のモチベーションを高めるため(57.7%)、②組織の多様性を高めるため(41.0%)、③採用市場で自社が必要とする人材の確保が難しいため(40.6%)と回答しています。

○「環境変化に応じて人事制度や雇用慣行の適応ができている」…42.8%

と回答した企業は、「従業員規模1,000人以上、グローバルでもビジネス展開、設立20年以内」の割合が5割以上でした。

 

◆現在、人事課題だと感じているもの

具体的に、企業の人事担当者が「現在、人事課題だと感じているもの」を聞いたところ、「次世代リーダーの育成(37.6%)」、「従業員のモチベーション維持・向上(35.0%)」、「管理職のマネジメントスキル向上(31.0%)」が上位に並びました。

ほかにも、「中途採用・キャリア採用の強化(26.9%)」、「若手社員の定着率向上(25.2%)」など、人材確保につながる項目が選択されることからも、深刻化する人手不足への課題が見えてきます。ビジネス環境にも、自社にも合った人事制度の見直し・検討・運用が期待されます。

【株式会社リクルート「企業の人材マネジメントに関する調査 2023~人事制度/人事課題編」】

https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20231101_hr_01.pdf

 

 

「50人の壁」とメンタルヘルス不調者の増加~帝国データバンクの調査結果から

 

◆「50人の壁」とは

「50人の壁」とは、社員数が50人を超えると発生する経営課題のことを指しています。マネジメントを行うために社長のほか複数の管理職が必要となり、人事制度も複雑化するので管理レベルも高まるタイミングです。また、社員数が増えることで、情報共有や意思疎通が難しくなるため、組織内のコミュニケーションの質が低下するともされています。

この50人の壁と符合するように、メンタルヘルス不調者の割合が高まってくるようです。

 

◆メンタルヘルス不調者がいる企業は社員数50人超で大きく増加

帝国データバンクが行った「健康経営への取り組みに対する企業の意識調査」では、過去1年間で「過重労働時間となる労働者」や「メンタルヘルスが不調となる労働者」がいるかどうかを尋ねたところ、次のような結果が出ています。この調査の有効回答企業数は1万1,039社ですので、わが国での一般的な傾向と考えられます。

<社員数とメンタルヘルス不調者がいる割合(%)>

・5人以下 …………… 5.0%

・6人~20人…………10.8%

・21人~ 50人………19.5%

・51人~ 100人 ……31.6%★

・101人~300人 ……45.5%

・301人~1,000人 …59.0%

・1,000人超 …………62.0%

(全体集計では、21.0%[5社に1社]が「いる」と回答)

このように、規模が大きな会社ほど割合が高まっており、50人を超えたところで全体での数値を超えている状況がわかります。

会社が大きく成長するほど、人事労務管理の重要性も高まってきます。メンタルヘルス不調を防止するためには、定期健康診断の確実な実施、職場の喫煙対策、労働時間管理や仕事の進め方の見直しなどによる労働密度の適正化などが重要ですので、今一度、自社の状況を見直してみましょう。

【帝国データバンク「健康経営への取り組みに対する企業の意識調査」】

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p231011.pdf

 

退職代行サービスの利用率は2%~『エン転職』アンケートより

 

エン・ジャパン株式会社が運営する総合求人サイト『エン転職』上で、ユーザーを対象に「退職代行」について実施したアンケートの結果が公表されましたので、ご紹介します。

 

◆認知度

「退職代行」とは、労働者本人に代わって、代行業者や弁護士が会社に退職の意思を伝えるサービスです。「退職代行というサービスを知っていますか?」と伺うと、72%が「知っている」と回答しました。年代別でみると、40代以上の認知度が64%に対し、20代は83%と、19ポイントの差がありました。

 

◆利用率

「退職代行サービスを利用したことがありますか?」と伺うと、93%が「ない」と回答。利用経験のない方に理由を伺うと「退職意向は自分で会社に言うべきだと思うから」(44%)が最多でした。一方で、「ある」は全体の2%。利用の理由トップは「退職を言い出しにくかったから」(50%)で、特に20代の回答が目立ちました。30代、40代のトップは「すぐに退職したかったから」(30代:52%、40代以上:45%)でした。

 

◆退職代行を利用しない条件

退職代行サービスを利用したことがある方に「どのような環境や条件があれば、退職代行を利用しなかったと思いますか?」と伺うと、第1位は「上司が話しやすい」(60%)、次いで「職場の人間関係がよい」(56%)、「退職意向をきちんと認めてくれる風土がある」(42%)が続きました。

 

◆今後、退職代行を利用するか

「今後、退職代行を利用したいですか?」と伺うと、「今後、使いたいとは思わない」が31%に対して、「今後、状況によっては使うかもしれない」が42%となりました。

【エン・ジャパン株式会社「7,700人に聞いた「退職代行」実態調査~「エン転職」ユーザーアンケートより】

https://corp.en-japan.com/newsrelease/2023/34896.html

 

新規学卒就職者の離職状況~令和2年3月卒業者への厚労省調査などから

 

◆3年以内の離職率 新規高卒就職者37.0%、新規大卒就職者32.3%

人手不足の中、新卒入社の社員など若手の離職率は気になるところです。

厚生労働省は、令和2年3月卒業の新規学卒就職者の離職状況を取りまとめて公表しています。調査によれば、就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が37.0%(前年度比1.1ポイント上昇)、新規大学卒就職者が32.3%(同0.8ポイント上昇)となっています。

 

◆事業所規模別、産業別の離職率

また、事業所規模別でみると、1,000人以上で高卒者26.6%、大卒者26.1%と3割を切るのに対し、5人未満で高卒者60.7%、大卒者54.1%、5~29人で高卒者51.3%、大卒者49.6%など、規模別の差が大きいことがわかります。

産業別では、宿泊業、飲食サービス業(大卒51.4%)、生活関連サービス業、娯楽業(同48.0%)、教育、学習支援業(同46.0%)、医療、福祉(同38.8%)、小売業(同38.5%)などで離職率の高さが目立っています。

◆人材の流出を防ぐために

株式会社リクルートマネジメントソリューションズによる「新人・若手の早期離職に関する実態調査」によれば、入社3年目以下社員の退職理由は、「労働環境・条件がよくない」(25.0%)、「給与水準に満足できない」(18.4%)、「職場の人間関係がよくない、合わない」「上司と合わない」「希望する働き方ができない」(14.5%)が挙がっています。

企業にとってはすぐに対応が難しい課題もありますが、人手不足の中で各社様々な工夫を始めている現状を踏まえ、自社でも人材の流出を防ぐための施策を検討したいところです。

【厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します」】

https://www.mhlw.go.jp/content/11805001/001158687.pdf

【リクルートマネジメントソリューションズ「新人・若手の早期離職に関する実態調査」】

https://www.recruit-ms.co.jp/upd/newsrelease/2311071355_6509.pdf