2016年5月号

4月から「雇用・労働」「社会保険」はこう変わる!
 ◆雇用保険料率が引下げに

雇用保険料率(失業等給付)は、労働者負担・事業主負担とも1/1000ずつ引き下げられました。また、雇用保険二事業の保険料率も0.5/1000引き下げられました。これにより、一般の事業の雇用保険料率は11/1000(労働者負担4/1000+事業主負担7/1000)となります(平成27年度は13.5/1000)。

◆障害者に対する差別が禁止されます

すべての事業主を対象に、募集・採用、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、障害者に対する差別が禁止されました。また、障害者一人ひとりの状態や職場の状況などに応じて合理的配慮の提供が求められることとなりました(ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りではありません)。

◆女性の活躍推進に向けた計画の策定・届出が必要に

常時雇用する労働者の数が301人以上の一般事業主は、女性の活躍推進に向けた一般行動計画の策定・届出や情報公表等が義務付けられました。常時雇用する労働者の数が300人以下の一般事業主は、努力義務となっています。

◆介護(補償)給付の最高限度額および最低保障額が引上げに

労災保険法に基づく介護(補償)給付の最高限度額及び最低保障額が次のように変更となりました。
・最高限度額:介護を要する程度による区分に応じて→月額104,950円(+380円)、52,480円(+190円)
・最低保障額:介護を要する程度による区分に応じて→月額57,030円(+240円)、28,520円(+120円)。

◆健康保険の標準報酬月額が変更されました

健康保険の標準報酬月額の上限が、47等級(121万円)から50等級(標準報酬月額139万円。報酬月額1,355,000円以上)に引き上げられました。併せて、標準賞与額の年間上限が540万円から573万円に引き上げらました。

◆平成28年度の年金額は据え置き

平成28年度の老齢基礎年金は、昨年度から据え置き、満額月65,008円となります。平成28年度の国民年金保険料額は月16,260円(平成27年度15,590円)です。

「中高年齢者の転職・再就職調査」にみる転職者の意識
 ◆中高年齢者の転職・再就職調査

45~74 歳の中高年齢者を対象とした転職・再就職に関する実態、意識などについての調査(中高年齢者の転職・再就職調査)が行われ、その結果が独立行政法人労働政策研究・研修機構より公表されています。平成25年4月より65歳までの継続雇用が義務化されているところですが、離・転職する中高年齢者の実態が垣間見える内容になっています。

 ◆調査の概要

調査対象は6,000人(45歳~74歳までを男女別、年齢5歳区切りに各500人)で、有効回収率は89.3%でした(調査機関:株式会社インテージリサーチ)。男女とも、調査対象者の約6割が転職経験を持っており、転職経験者の平均転職回数は、男性が2.4回、女性が2.7回となっています。転職に際して利用した機関・サービスについての回答(複数回答)では、「縁故」約4割、「求人情報誌等」3割強、「ハローワーク」3割弱などとなっています。

◆転職者の希望等

転職先の選定理由については「仕事の内容に興味があった」や「能力・ 個性・ 資格を生かせる」等は男女でそれほど違いがありませんでしたが、男性に少なく、女性で目立って多いのは「通勤が便利」「労働時間、休日等の労働条件が良い」の項目でした。転職を希望しながら実際には転職しなかった人が挙げた理由(複数回答)は、男女ともに最も多いのは「新しい環境に不安だったから」(約4割)となっています。

◆雇用形態に関する希望、雇用率

今後の転職で希望する雇用形態は60歳未満の男性は約6割が「正社員」を希望している一方、男性の60歳以降では3~4割程度、女性全体では6割程度が「パート・アルバイト」を希望しています。また、「55~59歳」「60~64歳」での転職者の場合、就業率は30%強程度ですが、雇用率は「60~64歳」では転職経験のない人の3倍(31.8%)に達しています

 ◆60歳以上での転職の満足要因

60歳以上での転職では、自分の興味等に合った仕事を選ぶことが満足度を高めるようです。転職の満足度の規定要因としては、60歳未満では「賃金の低下」が主要因ですが、60歳以上では賃金の低下による影響は見られず、「自分の興味、能力、個性、資格等に合った仕事を選ぶ」ことが満足度を高める要因となっています。

 

「配偶者手当」はもう古い? 見直しを促す報告書まとまる
 ◆「103万円の壁、130万円の壁」が就労の妨げに?

「女性活躍推進法」も施行され、女性の就業環境が大きく変わりつつあります。企業が支給するいわゆる「配偶者手当」(家族手当、扶養手当等名称は様々)も、税制、社会保障制度とともに女性パートタイマー等の就労を抑制しているとの指摘があり、2015 年11 月26 日に決定された「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策-成長と分配の好循環の形成に向けて-」で制度の在り方を検討することが明記されたことを受け、厚生労働省に女性の活躍促進に向けた配偶者手当のあり方に関する検討会が設置されました。

◆検討会報告書の結論

4月11日に公表された同検討会の報告書では、「社会の実情が大きく変化している中、税制・社会保障制度とともに就業調整の要因になっている」として、「配偶者手当(配偶者の収入要件がある配偶者手当)は配偶者の働き方に中立的な制度となるよう見直しを進めることが望まれる」と結論付けており、厚生労働省では、今後、「報告書を踏まえ、労使に対し、女性の活躍の更なる促進に向けた配偶者手当の在り方の検討を促していく」としています。

 ◆「配偶者手当」を支給している企業の割合は?

2014年 8月29日に公表された独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査結果によれば、常用労働者に対する手当では、「通勤手当など」(89.8%)、「役付手当など」(66.2%)に次いで「家族手当、扶養手当、育児支援手当など」(47.0%)が支給されています。同調査では配偶者手当の支給条件の有無は明らかにされていませんが、2001年に内閣府の行った委託調査によれば、「家族手当」を支給する企業が83.5%、うち61.5%が配偶者の収入を支給条件としており、その78.4%が税制上の配偶者控除が適用される103万円を基準としているとの結果でした。

 ◆まずは自社の賃金制度を確認

上記の検討会報告書では、従業員構成や家族構成の変化を受け、手当をめぐる従業員ニーズも変化していると考えられるとしています。賃金制度は、従業員のモチベーションにも影響することから、人材確保や生産性の向上といった企業が存続するための重要なファクターとも絡んでいます。若手や女性に活躍してほしいという企業では、そうした層にとって自社の賃金制度が魅力的な制度と言えるかをチェックしてみてはいかがでしょうか。

人材不足解消のために…
「若手・中堅向け再雇用制度」の導入を検討してみませんか?
 ◆メリットは「効率的な人材確保」

人材不足問題の解決策として、一度退職した社員を『出戻り』で再雇用する、「若手・中堅向け再雇用制度」(ジョブ・リターン制度)を導入する企業が増えています。この制度には、採用コストが少なく済む、人となりがわかっているため安心して採用できる、業務経験があるため即戦力として働いてもらえるなど、効率的に人材確保を行ううえで数多くのメリットがあります。もともとは結婚・出産・育児・介護等で離職せざるを得ない女性のための制度として導入していた企業が多かったのですが、近時の採用難を受けて、門戸を広げ、人材確保のための手法として導入するところが増えてきました。

 ◆再雇用制度の設計内容は多種多様

ひとくちに「再雇用制度」と言っても、対象社員(勤務年数や経験業務、退職後の年数に条件を付けるなど)、制度を利用できる退職理由(出産・育児・介護や配偶者の転勤などやむを得ないものに限るなど)等、その内容は企業によって様々です。戻ってほしいターゲット人材に合わせて制度を構築することが可能であることも、メリットの1つと言えるでしょう。

 ◆課題は「ポジション・給与面の処遇」

メリットも多い再雇用制度ですが、制度を構築・運用するうえでの注意点もあります。再雇用制度において特に問題となりやすいのは、再雇用した社員と退職せずに働き続けている社員との処遇です。どのようなポジションで迎えるのか、給与の設定をどうするのか、また将来的には、昇進昇格時に他社で働いていた期間をどのように評価するのかといった点の検討が欠かせません。納得感が得られなかったり不公平感が残ってしまったりすると、トラブルの原因ともなりますので、バランスに考慮した制度設計とすることが求められます。