令和7年11月

2026年1月から「下請法」は「取適法」になります

今年5月に「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」が可決・成立し、2026年1月1日から施行となります。

この改正により、「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)が抜本的に見直され、法律名が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称:中小受託取引適正化法、通称:「取適法」)に変更となります。

◆用語の変更

「下請」や「親事業者」という用語が上下関係を連想させることから、発注者と受注者の対等な関係づくりを促すことなどを目的として、以下の用語が変更となります。

・下請代金→製造委託等代金

・下請事業者→中小受託事業者

・親事業者→委託事業者

◆適用対象の拡大

従来の資本金基準に加え、「従業員数基準」(300人、100人)が追加され、規制および保護の対象が拡充されます。また、適用対象となる取引に、荷主から運送事業者への運送委託(特定運送委託)が追加されます。

◆禁止行為の追加

これまでは「買いたたき」規制が行われてきましたが、「協議に応じない一方的な代金決定」が禁止されます。

また、政府が2027年3月末までに約束手形や小切手の利用を廃止する方針であるため、「手形払」が禁止されるとともに、その他の支払手段(電子記録債権等)についても、支払期日までに代金相当額満額を得ることが困難なものが禁止されます。

その他の改正事項や詳しい改正内容については、下記の公正取引員会のリーフレットやガイドブックをご確認ください。

【公正取引員会リーフレット「2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!」】

https://www.jftc.go.jp/file/toriteki_leaflet.pdf

【公正取引員会 中小受託取引適正化法ガイドブック「「下請法」は「取適法」へ!」】

https://www.jftc.go.jp/file/toriteki002.pdf

 

健康保険の被扶養者認定は令和8年4月から労働契約内容で年間収入を判定

健康保険の被扶養者としての届出に係る者(以下「認定対象者」という。)の年間収入については、認定対象者の過去の収入、現時点の収入または将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入の見込みにより判定されていましたが、令和8年4月からは、就業調整対策の観点から、被扶養者認定の予見可能性を高めるため、次のとおり、労働契約段階で見込まれる収入を用いて被扶養者の認定を行うこととされました。

◆労働契約で定められた賃金(労働基準法第11条に規定される賃金をいい、諸手当および賞与も含まれる。)から見込まれる年間収入が130万円(認定対象者が60歳以上の者である場合または概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては、180万円。認定対象者(被保険者の配偶者を除く。)が19歳以上23歳未満である場合にあっては150万円)未満であり、かつ、他の収入が見込まれず、

(1) 認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合には、被保険者の年間収入の2分の1未満であると認められる場合

(2) 認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合には、被保険者からの援助に依る収入額より少ない場合

には、原則として、被扶養者に該当するものとして取り扱う。

◆労働契約の内容によって被扶養者の認定を行う場合は、労働基準法第15条の規定に基づき交付される「労働条件通知書」(以下「通知書」という。)等の労働契約の内容が分かる書類の添付および当該認定対象者に「給与収入のみである」旨の申立てを求めることにより確認する。具体的には、通知書等の賃金を確認し、年間収入が130万円未満(一定の場合は180万円または150万円未満)である場合には、原則として被扶養者として取り扱う。なお、労働契約の更新が行われた場合や労働条件に変更があった場合(以下「条件変更」という。)には、当該内容に基づき被扶養者に係る確認を実施することとし、条件変更の都度、当該内容が分かる書面等の提出を求める。

【厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」】

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T251006S0060.pdf

 

 

外国人労働者に人事・労務を説明する際に役立つ支援ツール

日本の法制度や雇用慣行は外国人労働者にとっては馴染みのないことも少なくありません。そのため、厚生労働省から、職場のルールを理由や背景も含めて説明し、理解を深めてもらうことを目的とした支援ツールが出されています。

◆『外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集』

採用、賃金、労働時間といった9つのテーマをあげ、雇用管理で実際に想定される場面ごとに、①外国人社員に説明する前に読んで理解しておくとよいポイント、②実際に外国人の方にそのまま話したり見せたりできるよう「やさしい日本語」による説明の例が紹介されています。例えば、採用後に労働者が提出する書類について、「日本では、あなたに代わって会社が税金や保険の計算をします。あなたのためにしますから、必要な情報を会社に教えてください。」とルビつきで示されています。

◆雇用管理に役立つ多言語用語集

人事・労務の場面でよく使用する労働関係、社会保険関係の用語約420語について、定義・例文を検索できる用語集です。やさしい日本語のほか、9言語(英語、韓国語、中国語(簡・繁)、タガログ語、ベトナム語、ネパール語、ポルトガル語、スペイン語、インドネシア語、カンボジア語、タイ語、ミャンマー語、モンゴル語)に対応しています。

就業規則などを外国人労働者に説明する際、理解が難しそうな用語などを検索して、翻訳を提示したり、外国人社員本人が、人事・労務用語の入社前の学習や辞書として活用したりすることが想定されています。

◆モデル就業規則ほか

厚生労働省のモデル就業規則は外国語版も出されています。そのほか、日本国内で働く外国人の方に向けた「労働条件ハンドブック」や外国人労働者の労災防止に役立つ教材、資料も整備されています。

【厚生労働省「外国人の方に人事・労務を説明する際にお困りではないですか?」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/tagengoyougosyu.html

【厚生労働省「外国人労働者の安全衛生管理」】

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000186714.html

 

インフルエン予防接種を福利厚生で行う際の留意点

◆インフルエンザが流行シーズンに突入

厚生労働省は3日、令和7年第39週の定点当たり報告数が1.00を上回り、インフルエンザが流行シーズンに入ったことを発表しました。例年より2カ月ほど流行入りが早いことや、昨年の報告数が統計史上最多となった原因として、ワクチン接種率の低下が指摘されていることから、早めの予防接種を推奨することが望ましいと考えられます。

◆インフルエンザワクチンについて

毎年の予防接種では、国内・国外の動向を鑑みて流行すると予測された型のワクチンが使用されます。今年度から、日本で使用されるワクチンが4価から3価へと変更されました。これは世界的に検出されていないウイルス株であるB/山形系統を除くとしたWHOの方針に基づいた決定です。インフルエンザワクチンの研究も進んでおり、昨年に製造販売が承認されたワクチンもあるので、専門家と相談して予防接種に使用するワクチンを選択しましょう。

◆留意点

予防接種の費用を会社で負担した場合、著しく高額ではなく、業務上必要であり、従業員全員を対象としている場合は福利厚生費として経理処理できます。

しかし、予防接種を強制することはできないことに注意が必要です。インフルエンザ予防接種は法的な強制力がなく、会社が接種を強制することはパワハラ問題に繋がりかねません。また、アレルギーや既往症等による副反応のリスクもあるため、推奨制度を作成する場合はパワハラ防止の周知を含めたトラブル対策を講じましょう。

コロナウイルス等の他の感染症も警戒する必要もありますが、マスクの着用や手洗いといった生活習慣による予防にも限界があります。感染による業務停滞を防ぐには、会社がインフルエンザ予防接種を推奨することも重要です。

【厚生労働省「インフルエンザに関する報道発表資料2025/2026シーズン」】

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou_00023.html