令和7年12月

マイカー通勤手当の非課税限度額が令和7年分年末調整から引上げに?

◆令和7年分年末調整における改正事項

今年の年末調整について、国税庁ホームページでは、(1)「基礎控除」や「給与所得控除」の見直し、(2)「扶養親族等の所得要件」の改正、(3)「特定親族特別控除」の創設、が行われているとして、情報を提供しています。また、「通勤手当に係る非課税限度額の改正が行われる場合には、年末調整での対応が必要となることがあります」とあります。社会保険料の算定基礎にも影響する可能性がありますので、最新情報を確認しておきましょう。

◆政府が方針を決定

11月12日、政府が非課税限度額を引き上げる方針を固めたと報じられました。10㎞以上15㎞未満の場合に月額7,100円までから7,300円に、55㎞以上の場合に月額31,600円までから38,700円までに引き上げるとされています。

◆ベースは人事院勧告

国税庁ホームページによれば、改正は人事院勧告(令和7年8月7日)を受けたもので、勧告本文では、「民間の支給状況等を踏まえ、200円から7,100円までの幅で引上げ改定を行い、令和7年4月に遡及して実施する」とされています。なお、この実施は11月11日に閣議決定されています。

◆令和8年4月以降のさらなる改正も検討

令和8年4月以降のさらなる改正について、税制改正の議論を踏まえて決める方針とも報じられています。

人事院勧告には、「令和8年4月から、上限を『100㎞以上』とし、『60㎞以上』の部分について5㎞刻みで新たな距離区分を設ける」、「1か月当たり5,000円を上限とする駐車場等の利用に対する通勤手当を令和8年4月から新設する」とあります。

【NHK報道「政府 自動車通勤手当 非課税の限度額を引き上げる方針固める」】

【国税庁「年末調整がよくわかるページ(令和7年分)」】

https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index.htm

 

スポットワーク直前キャンセルをめぐる訴訟と厚生労働省のリーフレット

いわゆるスポットワークには企業による直前キャンセルの問題がありましたが、それが司法の場で争われることになりました。飲食店で働くはずだった大学生が、店側のキャンセルに対して賃金を求めて提訴したのです。

◆経 緯

川崎市の大学生の男性が提訴して請求した賃金額は1万4,000円でした。男性は5月にスポットワーク最大手のタイミーを通じて東京の飲食店で働く予定でしたが、その前日にスマホでキャンセルの通知を受け取りました。1年ほど前からスポットワークを開始し、毎回異なる飲食店で働いてきた男性にとってキャンセルは初めて。お金を貯めようとしていた男性は別の仕事を探したものの、自宅から通いやすいなどの仕事は見つかりませんでした。それ以降も別の仕事先で直前キャンセルが3件続いた男性は、提訴に踏み切りました。

◆双方の主張

男性の原告側は、「マッチング時点で労働契約が成立したとするのが実態に即して合理的だ」などと主張。タイミーが「労働契約は出勤時にQRコードを読み込むことにより締結される」としていることについて、原告側は意図的に休業手当を支払わずにでき、労働基準法に違反するとして、賃金の支払いを求めています。被告である飲食店の経営者は、マッチング時に労働契約が結ばれるという認識はなかったとしています。

◆厚生労働省のリーフレット

スポットワークをめぐっては、7月に厚生労働省が「別途特段の合意がなければ、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募した時点で労使双方の合意があったものとして労働契約が成立する」との留意点を示したリーフレットを出しました。これを受けて、主要なアプリ事業者は9月に規約を見直しました。

今後、スポットワークのビジネスモデルに影響が出るともいわれている裁判の行方が注目されます。

【厚生労働省「いわゆる「スポットワーク」の留意事項等」】

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59321.html

 

海外進出を考えたら利用したい外務省の支援策

法律や制度、商慣行が異なる海外におけるビジネスでは、現地の政治や経済、市場動向、外国企業に対する政策等の幅広い情報が必要です。また、思わぬトラブルに直面することがあり、政府レベルでの対応が必要な場合もあります。そのようなときに頼りにしたいのが外務省です。

日本企業の海外展開支援を強力に進めている外務省では、JETROやJICAとも連携し、企業の相談に対応しています。

◆日本企業支援窓口

外務省はほぼすべての在外公館に「日本企業支援窓口」を設置し、現地に駐在する日本企業支援担当官が個別企業からの相談・支援依頼などに積極的に対応しています。幅広いネットワークやODA等の各種ツールを活用し、日本企業をバックアップする体制を整えているのです。

例えば、「現地の法律・制度等が日本企業にとって不当に不利な状況になっている。」、「現地政府より不当な税の支払いを要求されている。」、「就労ビザ(査証)や許認可証の発給・ライセンスの更新等に時間を要している。」、「現地の規制や制度、治安に関する情報を教えてほしい。」、「現地の制度に精通した弁護士、会計士等専門家を紹介してほしい。」、「経済的威圧を受けている。」といった相談に対応してくれます(私企業間の紛争については政府機関として原則として介入できない点には留意が必要)。

◆在外公館における日本の弁護士によるアドバイス

一部の在外公館において、現地に進出する日本企業に対し、現地に精通する日本の弁護士による無料法律相談、および現地の法令、法制度等についての情報提供等を行っています。

◆その他の支援

・農林水産物・食品の輸出や食産業の海外展開を後押し支援

・インフラの海外展開の支援、外国公務員贈賄事案への相談対応 など

【外務省「日本企業支援」】

https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page22_000940.html#section1

 

離職予測分析とは

離職予測分析とは、従業員の離職可能性をデータに基づいて予測する分析手法です。勤怠データや人事評価などを活用し、統計分析やAIモデルによって離職リスクの高い従業員を早期に特定し、適切な対策を実施することを目的とします。近年、こうしたサービスが増加しています。

◆高品質なデータの重要性

その分析の成否は、データの質と量に大きく左右されます。例えば、勤怠データ収集では、出退勤時間だけではなく、残業時間の推移、遅刻・早退の頻度も必要です。これらのパターン変化は離職の前兆となることが多いからです。

従来残業を厭わなかった従業員が急に定時退社するようになったり、有休の申請が急増したりするなどは離職リスクの指標と考えられます。ただし、これらは組織文化や制度変更によっても生じるため、注意が必要です。

◆質的データの活用

定量的データと併せて質的データも重要です。従業員満足度調査やエンゲージメント調査により、仕事への満足度、上司との関係性、キャリア展望を測定します。退職者面談のデータは離職要因の理解に重要であり、在職中の面談データと併せた分析が必要です。

◆継続的なメンテナンスの必要性

精度の高い予測には、労働環境や従業員の価値観の変化に応じたデータ項目の新設、収集範囲の拡張、データ形式の標準化など、データ品質を保つための定期的なメンテナンスが必要です。他の人事制度同様、「一度作ったら終わり」ではありません。また、プライバシー保護や利用目的の制限についての配慮が不可欠です。

離職予測分析サービスを利用しない場合でも、こうしたデータの把握は制度運用における有益な視点となるでしょう。